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第二十五話 欲しがりの悪魔

 薄闇に燭台が揺れ、石畳の廊下には微かに人のうめき声のようなものが響くような気がした。

 コツコツ、と地下への石の階段を降りながらペッパーは舌打ちする。

 グノルシア教団の実質的指導者である聖女ネスに呼び出されたこんな深夜に不気味な地下室へと赴くことになったからだ。

 階段を降り終えジメジメした廊下を少し歩くとそびえるような大きな扉が橙色の灯りに照らされる。

 ペッパーは悪態をつきながら扉の取っ手へと手を伸ばした。


「……クソッ なんだってんだあのクソ聖女がよお」


 教団の隠れ家である屋敷のこの地下室に近づく者は教団内でもほとんどいない。

 聖女から許可外の侵入を厳禁されていること以外に密かに聖女による恐ろしい実験が行われているという噂があるからだ。


 ペッパーが力を込めるとゴゴ、とくぐもった音を立てその重い扉が開いた。

 薄闇に数点の灯りしかないようで中の様子ははっきりとは窺えないが入った瞬間に生臭い血の匂いがむわっと匂ってくる。

 ……そして聞き逃しそうになるほど絶え絶えになった弱々しい小さなうめき声が耳に入ってきた

 ペッパーはイライラしながら部屋の薄闇を見渡し声を張り上げた。


「聖女さまーー⁈ オイラァ来ましたぜ? いったいどこにいるんですかい? こんな深夜にどんな用事でしょうねえ?」


 ペッパーは顔を顰めながら鼻に手を当て居るはずの聖女を呼ぶ。

 流石の大犯罪者ペッパーをしてもこの地下室はただならぬ雰囲気であり一刻も早く出て行きたかった。


 すると密室であるはずの地下室に生暖かい微風が流れたかと思うと壁の燭台の全てに灯りがともり、その光を増す。

 否応にも部屋全体の様子が照らされペッパーは更にその顔を顰めた。

 不意に部屋の端から女の声が聞こえペッパーはそちらを向く。


「待たせたわねえ、ペッパーくん。どうかしら? この部屋は? お気に召したかしら?」


 薄闇に照らされたアシンメトリーの瞳がニヤッと笑い嘲るようにペッパーを見つめる。

 部屋の薄明かりに照り返る聖女ネスのその赤みのかかるブロンドの髪とその容貌は造られたように美しいが、どこか退廃的ですらある。

 ペッパーは肩をすくめながら聖女ネスにため息をついた。


「……やれやれ 冗談じゃねえですぜ、聖女さんよお こんな深夜に地下室に呼び出してこんなもん見せつけるなんてやっぱりアンタおかしいぜ…… オイラが言うんだから間違いねぇ」


 石畳の床には血溜まりが出来ており、肉片らしきものが辺りに散らばっている。

 灯りがつくと確認できる様々な器具は明らかに拷問器具であり、奥に聳える木箱からうめき声が聞こえる。

 血煙が香る部屋の奥でネスはペッパーに笑いかける。


「あらあら、随分な言い様ねえ。あなたなら気に入ってくれるかと思ったのだけど」


 眉を顰めてペッパーは部屋の拷問器具を見回した。


「オイラはイカれてるが快楽殺人者って訳じゃねーんですぜ? 聖女の姉御よお。アンタみてーにな。全く冗談じゃねーーっての」


 クスクス、と笑いながらネスは血まみれの木箱を指さした。


「ふふふ、随分とご機嫌ねえ。怒っちゃいやよ♡ これからあなたに渡すものがあるのよ。明日はこれを持っていくといいわ。きっと役に立つわよ」


 明日は病院を襲撃する予定日でそこに恐らく木箱に詰まっている死体を持っていけ、と言うのだ。

 聖女の正気を疑いながらペッパーは肩をすくめて抗議する。


「渡す、だって? 持っていけって? ……それこそ冗談じゃねーや! おい、分かってんだろ⁈ 明日は病院襲撃であの黒騎士野郎をボコってマリアを誘拐する日だ。こんな死体を持っていって遊んでいる暇はねーぜ‼︎」


 相変わらず全てを嘲るような笑みでネスは怯まずにペッパーに微笑みかける。


「あらあら、アンタ達だけであのアグレアイオスと騎士団に勝てると思って? 無理よ、絶対にね」


 コイツは自分でテロを企画しておきながら今さら何を言っているのか……

 その馬鹿にした言い草にペッパーは激昂する。


「おい、ふざけんなよ聖女! 今さら何言ってやがる‼︎ お前が練った襲撃計画だろーが! 失敗するってのか⁈」


 ペッパーの剣幕など意に解する事なくネスは笑みを浮かべたまま話を続ける。


「落ち着きなさいよ、ペッパーくん。だからこいつを持っていけってのよ。それで勝てるわ」


 渋面を作りながらもペッパーは頑なに遺体の持ち込みを勧める聖女の話に耳を傾ける気になる。

 たしかに一度戦ってみたからこそわかる。

 他の街のショボい自警団とは一線を画し、アグレアイオス自身も騎士団も精強無比である。

 正攻法では勝負にならない。


「……そいつは何なんだい? はっきり言って邪魔なんだが? 聖女さまよお」


 ニヤリ、と形が整ったその顔に黒い笑みを浮かべながらネスはペッパーを見つめ返す。


「これはね。悪魔よ。フフ…… そうねえ、『欲しがりの悪魔』とでも名付けましょうか。横領しようとした教徒たちを50人ほどこの部屋でありとあらゆる拷問で痛めつけて肉団子にしてあげたの。もう元が本当に何人だったかわからないわね♡ 私の術式と実験を兼ねた拷問によってコレは悪魔へと生まれ変わるはずよ。明日はコイツに暴れてもらいなさい。きっと黒鬼くんの天敵になってくれるわ♡」


 その話を聞いてペッパーは肝が冷える思いがした。

 50人ほどの元教徒が棺桶ほどの大きさの木箱に詰まっているというのだ。

 中身は想像したくもない。

 自然と出た渇いた笑いと共にペッパーは呆れたようにネスを見つめる。


「……まったく趣味が悪いしイカれてるぜアンタは」


 笑いながらネスは懐から取り出した小さな縦笛をペッパーに手渡した。


「……ウフフ 褒め言葉ねえ。さあこの笛を持っていきなさい。目覚めれば辺り構わず襲いまくるでしょうが、この笛をもった者のいうことなら聞くわ」


 ペッパーは口の端を曲げながら笛を受け取る。

 コイツがそこまで言うなら役には立つのだろう。


「フン! 負けそうになったら使わせてもらうぜ」


「フフ♡ 期待してるわよペッパーくん」





 ◇





 聖女ネスとの前日のやり取りを思い出しながらペッパーは忌々しさに顔を顰める。

 ペッパーは院長の喉に刃を突きつけるが騎士達は慎重にその包囲を狭めペッパー含む残った教徒たちを追い詰めてくる。

 床には射殺された教徒たちの遺体が居並び、煙と血の匂いでむせ返るようだ。

 呆気なく崩壊した自軍の不甲斐なさにペッパーは舌打ちし、顔を斜めに斬られた傷から滴る血を押さえ生き残った教徒2人に号令をかけた。


「さあ! はやく開けねえか! 騎士どもは待ってくれねえぞ!」


 怯えながらも教徒2人は棺桶へと手をかける。


「わ、わかりました……」


「あ、開けましたよ、ペッパーさん! いったいなんなんです? これは……」


 軋む音を立て棺桶が開かれるが中にある闇には何も見えず教徒たちが渕を覗き込む。

 その瞬間だった……


「ギ…… ギギギィィ! ガァァァァァァァァァァァ‼︎」


 哀れな2名の教徒の上半身を一瞬で食いちぎり丸呑みにすると雄叫びと共に勢いよく飛び出た怪物は悍ましいその姿を露わにする。

 体長約15メートル、胴回りの直径は30センチを超えるだろうか。

 灰色のそのヘビのような怪物には人間の手足が無数についており四つの目が爛々と獲物を探し、鋭い牙が赤い口元から確認できる。

 ノシ、ノシ、と人間の手足で移動する悍ましいその蛇のような怪物はたった今射殺された転がる教徒の遺体を齧ると赤く濁った目で騎士たちをじっと見つめる。

 魔都防衛騎士たちは悍ましさにたじろぎながらその歩みを止めた。


「……な、なんだこいつは!」


「気持ちの悪い怪物め……!」


 異世界ジェラザードには魔物や魔獣といった珍妙な生物が生息しているが、ここまでの悍ましい怪物など滅多にお目にかかれない。

 ペッパーはたじろぐ騎士たちを見てニヤリと笑みを浮かべ懐から怪物を制御するという笛を取り出し院長を腕に掴んだままそのヘビの背へと飛び乗った。


「ギャハハハハハハハ‼︎ ビビってやがんのかぁ? クソども! いいかぁ⁈ こいつはクソ意地悪いイカれた聖女が作った『欲しがりの悪魔』だ‼︎ この怪物がお前らを殺し尽くすぜぇ‼︎」


 馬鹿にした様子のペッパーに激昂しながら騎士の1人が小銃を構え前へと突っ込む。


「黙れ‼︎ ペッパー! 腐れ外道め‼︎」


 部隊の小隊長が慌ててその若い騎士を制止しようとするがもう遅かった。


「迂闊に突っ込むな‼︎ 慎重に攻めて敵の適性を探るのだ‼︎」


「グッ! グァァァァ‼︎」


 弾丸のように飛び出たヘビの赤い舌が瞬く間にその無謀な若い騎士の胸を貫いたかと思うと地へと倒れ込む。


「おい! 大丈夫か⁉︎」


「む、胸に穴が空いてやがる……」


「クソッ! 化け物め!」


 駆け寄る仲間たちの介抱虚しく若い騎士は一瞬で息を引き取ったようだ。

 ペッパーは嘲る笑いを響かせると腕元の院長の首筋にさらに力を込める。


「クククク! さぁ! クソども! なに呆気に取られてやがる! どんどんいくぜぇぇぇ‼︎」


 勇敢な騎士たちは各々の武器を構えヘビの悪魔を迎え撃とうとする。


「くっ……! さぁこい!」


「テロリストめっ! 我々は引かんぞ‼︎」


 彼らの覚悟さえ嘲笑いながらペッパーと悪魔は騎士たちへと突進を始める。


「ヒャッハハハハハ‼︎ バカめ‼︎ お前らは蛇に睨まれたカエルなんだよぉ! 食われちまいな!」


「グッ! ガストリス万歳っ‼︎」


 悪魔が騎士たちの1人の目前に迫ったその時だった。

 突然、床から生えた岩の壁が悪魔の進路を阻みそのままぶつかると壁の一部が倒壊し轟音を立てる。

 ヘビ型の悪魔が床へと転がりその突進は止まった。


「待て…… 調子に乗るなよ、爆弾魔」


 ヘビが転倒した瞬間に飛び降りたペッパーが院長を抱えたまま室内に散乱した一つの机の上に着地する。

 もちろん、ヘビの前に立ちはだかっていたのは黒い外套を翻したアグレアイオスであった。

 ペッパーは歪んだ笑みで机の上からアグレアイオスを見下ろした。


「クククク……! 出てきやがったな! 黒鬼野郎……! コイツはあの根性のねじ曲がったイカれ聖女が丹精こめて作ったクソ悪魔だぁ! 今度こそ死ぬぜ? フヒヒヒヒ‼︎」


「……試してみるがいい その倒れた騎士を介抱してお前達は下がっていろ」


「総長……! すみません!」


 部下たちに退避を命じアグレアイオスは悪魔と呼ばれる怪物と向き合う。

 ペッパーは笛をひと吹きするとヘビへ命令する。


「フヒャァァァ‼︎ さぁいけ‼︎ 欲しがりの悪魔ぁ! その黒鬼をぶっ殺せ‼︎」


「ブオオオオオオオオオオオ‼︎」


「欲しがりの悪魔」はアグレアイオスに向かって突進を始める。

 が、しかし次の瞬間今度は床から生えた鋭い無数の岩の刃に全身を貫かれ串刺しになるとその動きを静止した。


「……ゴッ‼︎ ゴオオオオオオオ‼︎」


 地を操るアグレアイオスの術式は絶対防御を兼ねた恐ろしい刃でもある。

 正攻法では彼に近づくことさえ出来ないだろう。


 外套を翻しアグレアイオスは院長を抱えたペッパーを振り返る。


「さあ次はお前だ、爆弾魔」


 しかし、余裕の笑みでペッパーは嘲笑う。


「クハハハハ‼︎ まだまだあめぇぜ! 黒鬼野郎っ‼︎」


「……何っ⁉︎」


 それは微かな風の流れを感じたアグレアイオスの勘とも言うべきものであった。

 アグレアイオスが前転しながら飛び退いた後の床に何らかの液体が飛び交いジュワ、と溶ける。

 見るとすでに岩の刃から逃れたヘビの怪物がチロチロと赤い舌を伸ばして次の獲物と認めたアグレアイオスを見つめていた。

 床を溶かした悪魔の唾液は一瞬で鉄をも溶かす酸性の毒である。

 岩の刃で貫かれたはずの傷も既に再生し始めている。

 予想以上の戦闘能力にペッパーは院長を腕に抱えたまま更に高笑いを始めた。


「ヒャッハハハハハ‼︎ さあ今度こそそいつを殺せ!」


 ヘビは悍ましい唸り声を上げるとあたり構わず疾走し病院のものを薙ぎ倒しながらアグレアイオスを追い回す。

 その並外れた脚力で壁さえ走り抜けながら慌てることなくアグレアイオスは両の掌に魔力を溜め始めた。

 そして方向転換すると両の掌を迫りくる悪魔へと向け無詠唱の攻撃魔法を展開する。


「やむを得ん…… 龍牙火炎砲メガフレイム


 赤い閃光が迸ったかと思うと悪魔の身体の上半分があっという間に吹き飛んだ。

 炎の魔力を凝縮し、レーザーのように撃ち出す世界でも屈指の火力を誇る炎系の究極魔法である。

 これでも無詠唱であり、患者の退避が済んでいない病院内であるため、かなり炎の威力を絞って魔法を放っている。

 アグレアイオスは炎と地の魔力を操り、武人としてこの世界でも無双の実力者と称えられる。

 盗賊の間ではアグレアイオスを見たら全力で逃げろと囁かれているほどだ。


 冷や汗を流しながらもペッパーはかつて聖女に埋め込まれた魔眼でたった今悪魔を肉片にしたアグレアイオスの魔力の値を測定する。


(魔力値28,000…… 流石だな、黒鬼野郎……!)


 恐ろしいまでの火力を発するアグレアイオスにペッパーは歪んだ笑みを浮かべながらそれでも虚勢を張った。


「クククククククク……‼︎ やるじゃあねえか黒鬼野郎…… 戦いにくいだろう? 病院内は?」


 アグレアイオスは外套を翻しゆっくりとペッパーに振り返る。


「呆れるほど下劣な品性だな、爆弾魔。今、捕縛してやる」


 院長を腕に抱えながらペッパーは笛をひと吹きすると狂気の笑いを発する。


「フヒヒヒヒヒヒヒャア‼︎ 来れるもんならこォォォォォォい‼︎」


 アグレアイオスがペッパーに飛び掛かろうとした瞬間、部下の声が耳へと入る。


「総長‼︎ 後ろです‼︎」


 咄嗟にその場から飛び退き横転するとアグレアイオスは肉片にしたはずの悪魔の方を振り返る。

 シュウシュウ、と白い煙を発しながら「欲しがりの悪魔」はその身体を再生しまるで笑みを浮かべるように先程まで黒騎士が立っていた床の辺りに唾液を飛ばしていた。

 アグレアイオスは無表情で悪魔を冷静に観察する。


「……まだ生きているのか いったいなんだこいつは」


 そして腰の剣を抜刀すると刃に魔力を溜め疾風のように悪魔へと駆け寄り、目にも止まらぬ斬撃を無数に繰り出した。


「ギャアアアアアアアアアアアアアア‼︎」


 悪魔の腕が二、三本吹き飛び悲鳴が上がる。

 構わずアグレアイオスは更に縦の一閃を繰り出した。


「くたばれ」


 アグレアイオスの剣は彼の振りと魔力に耐えるほどの業物である。

 しかし、次の一撃が悪魔の皮膚に当たった瞬間にバキリ、といっそ心地の良い音を立てて真っ二つにへし折れる。


「……何⁈」


 アグレアイオスは緊急に飛び退き、カウンターで飛んでくる悪魔の舌と突進をかわす。


「キシャオオオオオ‼︎」


 高所に飛び退き、アグレアイオスは折れた刃と今の悪魔の攻撃を分析する。

 アグレアイオスの折れた剣は触れてみると異常なまでに脆くなっていた。


「概念系の攻撃か…… 恐らく『触れた箇所の何かを奪う』攻撃。斬りつけた瞬間に私の剣の切れ味と強度を奪ったな…… だから二撃目以降の斬撃が通らず折れた」


 一瞬で悪魔の特性を分析するアグレアイオスにペッパーは内心で驚きながら皮肉の賛辞を送る。


「……ヒヒッ!お前も十分怪物だよ……! ったく! クソがよ‼︎」


 青い鱗の鰐の魔族であるシェルドンが腕の中のカリンを降ろすと堪らずアグレアイオスへと声をかける。


「総長‼︎ オラもそっちへいくだ‼︎」


 アグレアイオスは片手の掌を振ってその申し出を制し、配下へと方針を指示する。


「構わん! シェルドン、お前はカリン殿から離れるな。他の者も病人と医療従事者の退避が済み次第ここから離脱せよ」


「総長……」


 心配そうに戦況を見つめる配下の騎士たちにアグレアイオスは声を張り指示を飛ばす。


「院長の喉元に刃が突きつけられている以上、下手な真似は出来ん。そしてあの悍ましい化け物の相手は私がするしかないだろう」


 ペッパーは離れた高所から院長の首を押さえながら余裕の笑みを浮かべる。


「ケケッ‼︎ 大した自信だなぁ! 黒鬼野郎‼︎ 言っとくがお前はこの化け物に絶対に勝てんぜ⁉︎」


 そしてペッパーが笛を鳴らすと悪魔は再び怒り始めたようにアグレアイオスへと視線を向ける。


「ぐるゥゥゥゥぅぅ……‼︎」


 戦況を黙って見つめていた老いた院長はペッパーに掴まれたまま声を絞り出す。


「君、もうやめたまえ…… こんな恐ろしい真似は…… グッ!」


 ペッパーは院長の頬を殴りつけ舌打ちし、罵声を飛ばした。


「うっせえよ! 院長さんよぉ! オイラが喋ってんだろうが! 年寄りってのはこれだからいけねえ」


 その非道にアグレアイオスは怒りを殺しながらペッパーを睨みつける。


「やめよ! ペッパー……! 貴様を捕らえた後の事は覚悟しておけ」


 ペッパーは一度死刑判決を受けた男である。

 アグレアイオスの背筋を凍らせるような圧を受けながらも狂笑を上げ尚も怯む様子を見せない。


「ヒャハハハハハハハハ‼︎ こぇぇぇぇぇ‼︎ いいぜいいぜ! そうこなくっちゃよぉ! さぁ続けようぜ! 殺し合いを‼︎」


 そして「欲しがりの悪魔」が唸り声をあげながら高所のアグレアイオスへと躍りかかった。

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