ちょっとした訓練風景
おさらい
シシハ:タンポポみたいなライオン獣人。
ママト:シシハのママ。普段はハチミツパンケーキの雰囲気だけど急にマッチョになる。
ヘビー:ヘビ獣人。女医なのにマッチョ。
☀︎森☀︎
ヒャッハー、シシハだよッ!
森で特別授業だよッ!
ヘビー:「まずはその辺を見ろ」
シシハ:「はい」
ヘビー:「トレント、バット、キノコ、毒グモ、イノシシ、マムシ、そして猛毒スライム。いずれも隙あらば命を刈り取るアサシン共だ」
シシハ:「おー」
なるほどコイツらでレベルを上げるってわけね。
ヘビー:「サバンナより遥かに危険だ。子供たちは早急にレベルを上げなければならない」
シシハ:「……」ごくり
ヘビー:「まずはスライムを探すぞ」
シシハ:「はい」
木の葉をガサガサかきわけて、奥へ奥へと進んでいく。
シシハ:「痛っ」
ヘビー:「ほい」
何者かに刺されて意識がぐにゃりとしても、ヘビー先生が注射をブスリ、すると意識は元通り。
ヘビー:「いたぞ、茂みの向こう、湿った倒木の側」
スライム:「プルプル、プルプル」
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スライム:Lv224
HP30万
MP20万
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よし、レベルはアタシと同等。勝てるぞッ!
シシハ:「ヒャッハーいくぜー!」
ヘビー:「待て、あわてるな。まずは下拵えだ。スライムボディに【ドラコサイン】を書きまーす」ブスブス
スライム:「ぷりゅぅ?」
☆
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☆ ☆
シシハ:「んえっ!!」
ちょっと先生、何やってんの!!
それ、ゴブリンドラグーンの……
ヘビー:「大丈夫。人間国では違法だけど、ここは無法地帯だ。さあ死にたくなければ竜化しろ」シャー
スライム:「ぷ、ぷりゅぅぅぅ…ゥゥゥ…グオオオオォォォッ!!」
ドドドドドドドド!!!!!
大地がゆれて
ボコボコ
スライムから泡がたち
ドバァァァァァッ!!!!!
ズビシャー!
>>>スライムが弾けて、竜の首がどんどん生えてくる。
8本首だ!
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スライムドラグーン:Lv1000
HP:6000万
MP:4000万
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スライム:「「「「「「ギャシャー!」」」」」」
シシハ:「いぃぃやぁぁぁぁぁ無理無理無理!!」
ヘビー:「あ、こら、逃げるな」
なにあの八岐大蛇みたいなの、勝てるわけないじゃん!
>>>シシハは逃げ出した。
>>>しかし回り込まれた。
ヘビー:「こらー。せっかくのレベルアップチャンスだ。腕を千切る勢いで殴ってしまえー!」
シシハ:「ちょっと冗談じゃないわよ」
ヘビー:「大丈夫、ゴブリンよりはだいぶ弱い。見掛け倒しだ。それっ!」ガシッ、ポイっ
シシハ:「ぎにゃぁぁぁ!」
投げられたッ!
ドラゴンの口が迫る〜
もうヤケクソー!
ライオンパンチー、おらおらー。
ドゴォ <59059>
ドゴォ <59059>
ドゴォ <59059>
シシハ:「あ、あわわ、痺れるぅ。毒だよこれ絶対毒だよ」
スライム:「ギシャシャー」
ヘビー:「大丈夫、マソエリクサーだ」ぶすっ
シシハ:「あへぇ〜」
ヘビー:「そのスライムは『壊死毒』のかたまりだ。触れて筋細胞が死んだ後にマソを打ち込むと、筋肉増えるぞー」
シシハ:「うおおおお、なんだかパワーが溢れるよぅ!」
スライム:「ギシャァァァァア!♒️」どーん
水瓶座! 水鉄砲だ!
ヘビー:「おらおらひるむなー」
シシハ:「ふええ」
ブレスを避けて、顔面を殴って、また避けて、殴って、毒が回ると注射をされる。
最初はとても苦しいの。
自分はどうしてこんな事してるのかと、前が見えなくなるの。
ヘビー:「シシハ、前!」
でもね、しばらく慣れたらね、心がしびれて痛くなくなるの。
シシハ:「……」ブンブン
あたしは無。あたしは虚無だ。
無心でスライムを蹴り続ける作業なの。
そして日が沈み、アタシば見事、スライムを殴り倒したのでした。
ヤケクソパンチ1000発でした。
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☀︎教会☀︎
ヤギーの左手からブルーライトが飛び出し、スクリーンへと森の様子を投影する。
ヤギー:「みなさーん。森の奥には危険なモンスターがいっぱいいます」
子供たち:「おおー」「すげー」「ドラゴンじゃん」「タンポポの奴いつのまに」
ヤギー:「まだ森に入ってはいけません。サインをマスターしてから殴り込みましょう。いいですね」
子供たち:「「「はーい」」」
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☆自宅・庭☆
石造りの新築の広い庭だよ。
なにせ村にはばかでかい穴と無駄に広いスペースが広がってるからね。スペースならいくらでもあるんだ。
夜風がすっかり冷えてる。
シシハ:「ただいまー。あ゛ーつかれたー」
ママト:「おかえりなさ〜い。大変だったでしょ」
シシハ:「あ゛ー、うん。そうなの。こーんなおっきなスライムと戦って、【マソエリクサー】の注射を100回もされたんだよ」
ママト:「あらあらそうなの〜。えらいわ〜」ナデナデ
わぁい、ナデナデだ。
シシハ:「うん! 元気100倍だよ」ブンブン
ママト:「元気そうね〜。それじゃあ追加のトレーニングよ♪」
シシハ:「うん。……え゛?」
なんですと!
ママト:「まずは基本姿勢。きをつけー」
シシハ:「うわぁぁぁ」
ママト:「手足をちょっとだけ広げて〜」
シシハ:「あー」
ママト:「リラックスして〜、拳を握って〜」
シシハ:「はい」
ママト:「筋肉に力を入れる。ふんぬっ!」ムキムキムキムキ
シシハ:「ファッ!?」
エプロンが弾けたよ、ママ!?
ママの手足が岩石みたいになっちゃった。
肩も胸も、すごいゴリゴリ!
ママト:「いくよ、右手を引いて〜」
シシハ:「あい」
ママト:「腹筋をねじって〜」
シシハ:「あい」
ママト:「獅子流星拳、せいっ!」ぶおっ
シシハ:「うわ」ぴゅーん
風圧ッ! 飛ばされたッ!
夜空が舞ってるよッ!
シシハ:「きゃぁぁぁぁぁ」
ママト:「オラァ、空くらい歩いて戻りないッ!」ガオー
ヒッ!
こわい!
ママが豹変した!
ママト:「うふふふふ〜」ガルルルル
シシハ:「うわぁー」
ライオンのごとく飛んできて、首の裏を噛まれて、みょーん。
うわー。
空を飛び〜、フワフワ雲の上へ。ズボッ!
ママト:「さあここなら思う存分戦闘できるわ〜♪」
シシハ:「ちょっとママ、目が本気すぎるよ」
ママト:「手加減はするから〜、見て覚えるの〜。えい♪」
シシハ:「ぐぼほぉー」
>>>シシハは腹を押さえてピクピクしている。
ママト:「ママの動きを真似するのよ〜、間違えたら痛いの〜、えいえい」
シシハ:「ちょっと待ってーうわ」
パンチをパンチで受け止めてー
キックをキックで受け止めてー
アタシは無、アタシは虚無だ。
無意識にパンチを相殺していくの。
無心なら痛くなーい……ボキッ
シシハ:「ぎゃー!!」
ママト:「シシハちゃーん!!?」
いでぇぇぇ、骨折ー
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☪️サバサバタウン・北の病院☪️
かさかさじめじめ森の道、立ちはだかる病院が白の存在感を放ちまくってる。
ママト:「こんにちはー」
シシハ:「ふえー」
ヘビー:「おや、左肩がだらん……複雑骨折かい」
ママト:「そうなのよ〜。トレーニングで失敗しちゃったの〜」
シシハ:「むー」
ヘビー:「へいへい。いつも大変だな。ちょいと待ってなー」
奥の手術室へ移動。
ライトグリーンの清潔そうな壁に、ガチャガチャした器具があるの。
ヘビー:「大菱形骨から上腕骨、肩関節周辺までバラバラになってる。パンチを受け損ねたな」
シシハ:「……そうよ」
ヘビー:「んじゃ、麻酔いくよー」⛎
指のマソを光らせて、いつもの蛇使いのサイン。
ヘビー:「手動マソ制御だよー、痛くないよー」ガブ
シシハ:「いだっ」
ほえー、キバから麻酔ー、肩がじんじんするー。
じんじんが、首と顔に広がる〜。
あー
脳がぽやぽやするー。
…
スヤァ
(夢)
うーん、ここは?
ハチミツ色の病院で、ヘビー先生に診察してもらってる?
ヘビー:「これは蛇使い座のシンボルだよ」⛎
シシハ:「ふーん……あれ、授業で習ってないよ」
ヘビー:「これはね、邪道なんだ。星見教会では正式に認められてないやつ」
シシハ:「ほえー、なんかかっこいい。」
ヘビー:「娘がいたんだ」
シシハ:「娘?」
ヘビー:「ああ。13歳のカワイイ奴さ。今はお空にいる」
シシハ:「ふーん」
ヘビー:「見つかったら怒られるからな。ヤギーには言うなよ」
シシハ:「はーい」
(夢、終わり)
…
…
……
うーん。まぶしい。光がしみる。
ママト:「そうなのよ最近娘がガジガジするのよ。ほら」ポロリ
ヘビー:「あー、歯形だね。くっきりしてやがる」
あー、手術おわった?
ママト:「そうなの〜、反抗期なの〜」
ヘビー:「そうなのかー」
ママト:「ガジガジしてブーブーするの〜」
ヘビー:「お前にとっちゃご褒美みたいなもんだろ」
ママト:「そうそう。うふふふふ〜♪」
ヘビー:「ところで、せっかくだから検診しよっか」
ママト:「はい。お願いします」
ヘビー:「おかな見せてー」
ママト:「はーい」腹筋!
ヘビー:「割れてるッ! 余剰マソが全て筋肉になってやがる」
ママト:「そうなんですよ〜、最近身体が軽くて軽くてもうね〜」
ヘビー:「ちょっと失礼」
なんと、ママの胸やお尻をわしづかみにしたッ……
ヘビー:「硬った、カッチカチだなおい」
ママト:「いやんえっち〜」
ヘビー:「しっぽまでオリハルコン超え。完全なる細マッチョだぞ」ぐりぐり
むー、なんかムカついてきた!
もう見てられないよ! ガバッと起きるの!!
シシハ:「ちょっとそこのヘビ女! アタシのママに何してくれてんのさ!」ぺちぺち
ヘビー:「おーおー元気そうだな。これなら安静にしなくても大丈夫!」
変態女医の頭に乗ってブンブンゆさぶるけど、ビクともしない。
不動のマッチョすぎる。岩みたいだよ。
ママト:「きゃーシシハちゃ〜ん。ママのために怒ってくれたんだ〜、うれし〜ありがと〜」すりすり
シシハ:「はなせ!」じたばた
ちくしょう。今度は変態ママにつかまった!
ぐぬぬ変態の巣窟め。
勘違いするなよ。アタシはただイライラしてるだけなんだからね。
ふーんだ。
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☪️自宅・ベッドの中☪️
ママト:「シシハちゃーん、今日はごめんね〜」
シシハ:「ぶー」
ママト:「痛かったのね。でも大丈夫よ。強くなったわよ。わかるの。ヨシヨシ」
シシハ:「ぶーぶー」
むー。まだイライラする。
スライムとママにやられた分、当たりちらしたい。
シシハ:「ママー、おっぱい」
ママト:「こんな時間に?」
シシハ:「うん」
ママト:「はい」
シシハ:「あぐ」
がじがじ
ママト:「痛い、ちょっと痛いわ」
シシハ:「あ、うん。ごめんなさい」
ママの辛い顔を見たら、胸が痛むの。
誰かから殴られた傷がうずくの。
ママト:「……もういいの?」
シシハ:「うん」
ママト:「そう。おやすみ」
シシハ:「おやすみー」
とりあえず、寝ないと。
筋肉がジンジンするよ。
明日は筋肉痛だね。
すやぁ
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☀️サバンナ・コールサックへの道☀️
聖剣がブレるとバイソンの群れが天高く舞い上がる。日は半分ほど出て細長い影が生じる。
勇者:「見えてきたぞ、アレだ、あの黒い森が【コールサック】地帯だ」
聖女:「懐かしいですね。ダークドライアドのビームサーベルは強敵でしたね」
勇者:「ああ。そしてようやく一週間ぶり、村があるんだ。楽しみだなラサキ!」
ラサキ:「あうー?」
と、ぺたぺた歩くのだった。
遅くなりましたー。