おともだち
遅くなりましたぁ。
▲サバサバタウン2・中央の結界▲
サバサバタウンの上空には、森の木の葉がざわめいています。
樹齢1000年はある大樹が葉を広げ、一面の緑となって、風にざわついております。
その緑のさざ波から『氷山の一角』がチラリと顔を出しております。
近づいてよく見てみましょう。
それは結界。ピラミッド型の青白い結界です。
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▲♎️▲
魔の大穴【コールサック】にフタをし続けているのです。有刺鉄線に囲まれて、かれこれ10年はずっと青白く周囲一帯を照らしているのです。
ピシッ
小さなヒビが生じます。大丈夫でしょうか。
おや、森の闇から誰かが来ます。
キリオ:「よし、まだ見つかってないな?」
チイト:「おう。右みてー、左みてー、よし大丈夫」
キリオ:「そして後を見たらぁー、よし誰もいない」
チイト:「っしゃー、今日こそ大いなる目的を果たす時。いざ行けー!」
悪ガキ2人の登場です。
風になり、有刺鉄線を抜けて、結界の根本で止まり、見上げます。
キリオ:「よーし、まだバレてない。よしよしよし!」
チイト:「うおおおお、すっげーワクワクする」
キリオ:「ああ。ウルトラスーパーデラックスマスター、えーと」
チイト:「ちげーよ。ギャラクシーサインアルティメットワクワクドラゴンだぞ」
キリオ:「すげー」
チイト:「すげーだろ」
風のいたずら小僧、脱線中であります。
キリオ:「すげーすげー。バナナアイスアルティメットメロンパンワクワク……あれ?」
チイト:「そんな事はどうでもいい」
キリオ:「どうでもいいのー!」
チイト:「そうだ。このキラキラ三角のやつに、よじ登るぞ」
キリオ:「そうだったー」
チイト:「行くぞー」
さあ青い斜面に手を伸ばし、未知なる世界へレッツゴー……と思ったら
ヤギー:「待ちなさい」ガシッ
背後の闇からヌッと、白ヤギの威圧感です。
キリオ:「げぇー」
チイト:「うわー」
ヤギー:「またイタズラですか。メー。そうですね……『好奇心は猫をも殺す』。今日はこの言葉を叩き込んであげましょう」メー
キリオ:「待って待ってまだ何もしてないそうこれはギリギリセーフ、3秒ルール」
チイト:「あ、UFOだー。マッチョ星人が地上を侵略しに来たぞー。タイヘンダー」
ヤギー:「子供たちが失敗するのはいわば自然の摂理。そして道を誤っては説教されるのもまた摂理。さあ、穏やかに受け入れるのですメー」ずるずる
キリオ:「ぎゃーぎゃー」ずるずる
チイト:「ぎゃーぎゃー」ずるずる
ワクワクは一転、絶望へ。
光から闇へと引きずられて退場しましたとさ。
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☀︎東の教会☀︎
早朝、椅子に生徒が並んでいる。
シシハ:「あれ、どうしたの。元気ないね」
キリオ:「べつにー」ぶすっ
チイト:「何もなかったー」ぶすっ
シシハ:「ふーん」
目の下に隈がある。眠れないほどの何かがあったんだね。
シシハ:「うーん」
目を閉じて、耳神経に意識をやる。
教会の壁の向こう、木々の先、木の根を歩く3人。楽しそう、きっと親子……
クロコ:「どうしたの?」
シシハ:「うわぁ!」ガタン
あービックリしたー。左に突然カラスの羽が出現したと思ったら、サバンナの常識人ことクロコちゃんでした。
クロコ:「あっはっは、なにようわぁって」ベシベシ
シシハ:「もう。耳が集中してたんだから。森に気配があったの」げしげし
クロコ:「そうなんだー」バサッ
黒いカラスの羽と筆みたいなライオン尻尾をバトルさせる。ディシディシ
クロコ:「それってモンスター?」
シシハ:「人だよ。赤い髪のお兄さん、青い髪のシスターさん、紫の女の子」
クロコ:「ええー、耳で色までわかるのー」
シシハ:「そーなんだよ。もう最近めちゃくちゃ大変だったんだよ……」
ぽわわーん♪(回想スタート)
脳裏に修行風景、スライムの猛攻。
青い沼が空いっぱいに広がって、七色のドラゴンヘッドからのブレス。
緑のブレスが神経異常。目も見えない耳も聞こえない指先まで動かない。
ヘビー:「気合いだッ、気合いで動かせーッ!」
シシハ:「うおおおおお!」
(回想終了)
シシハ:「ってな事があってね」
クロコ:「ええー、大変だね」
シシハ:「そりゃ、もう、全身バキバキなの。うあーん」
クロコ:「おいでー、よちよち」ファサ
シシハ:「むふー、いいにおい、羽フサフサ、くんくん、くんくん……」
クロコ:「もう、甘えん坊ちゃんね。ママとお呼び」
シシハ:「らめぇ、ママはママだけなのぉ」
クロコ:「チッ」
うおい、舌打ち。常識人じゃなかったの?
まぁいいや。
クロコちゃん、ママと違ってモチモチ肌なの。
シシハ:「くんくん、あれ、これアルラウネの香り?」
クロコ:「あっ、やっぱり分かるー? ほらこれだよ」
シシハ:「黄いろの粉……うげ、花粉じゃん」
クロコ:「昨日ね、授業で採取したの。意識を刈り取った後にゆっくり集めるの」
シシハ:「そうなんだー。そっちもえげつない事するね」
クロコ:「大丈夫よ。この世は弱肉強食だから、何も問題ないじゃない」
シシハ:「ちょっ、常識人〜、戻って来い」ブンブン
クロコ:「あうあうあうあー」ガクガク
と、ここで気づいたよ。ヤギー先生おそい。
みんなの私語は音量を増し、ざわざわ反響しだした。
耳の筋肉をうねらせて、探るよ。
(クロコちゃんの肩を掴みながら)
クロコ:「どうしたの?」
シシハ:「ちょっとちょっと、先生、裏の森で喋ってる! ちょっと引っ張って来るの。待ってて」
クロコ:「え、待って今日は違──」
行くよー。
床のマソを蹴って、高速移動だ、ブゥン!
数秒後、マッチョな女医が戸を開ける。バァーン!
ヘビー:「やっほーお前ら、ヤギーは急用でいない。私が臨時講師だー」
みんな:「「「えええーーーーー」」」
ヘビー:「オラァ、制服脱げ、筋トレの時間じゃー……あら、シシハがいない」
♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎♑︎
☀︎森・毒沼のほとり☀︎
勇者&聖女 vs 毒龍ヒドラ
ヒドラ:「ギッシャー! ガルガルル!!」
ヒドラの首が、広い沼から我先に、勇者を食べんと飛来するッ!!
勇者:「うおおおお!!!」ズシャ「くそっ、数が多くてキリがない」
勇者:「天秤の神様【スピカイヤー】さん、聖剣の輝きをくださいな」♎️「【レッドガストン】」
聖女:「神聖なる山羊神【アイギヌス】様、この矮小なる私めに偉大なる御力の一端を」♑️「【セイントミラージュ】」
勇者の紅剣が火の風を放ち、聖女の杖は分身を10体作る。
勇者:「せぇぇいッ!」
即効性の致死毒のドラゴンヘッドをかいくぐり、剣を振り抜き一閃、首を一本ずつ丁寧に落とし、沼の本体との距離を詰めていく。
聖女:「【筋力増強】十連打!」♊️
歌うようなサインが、勇者の腕に染み、バルクを増強させる。
やがて勇者の紅剣が一直線、ドラゴンハートを突き刺し上方へ切り裂き、血が紫に舞う。
ヒドラ:「ギャアアアアア……くう」ドサリ
♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎
>>>ヒドラをやっつけた!!
✨経験値✨
レベル二乗→36万
雑魚補正 →0.1倍
小物殺し →0.5倍
人数分配 →0.5倍
トータルEXP:9000
(ちょろっ)
♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎♎︎
勇者:「ふう。今ので、何匹だっけ?」
聖女:「15匹ですよ」
勇者:「そっか。あーめんどくせー」
聖女:「目的地まであと8kmですよ」
勇者:「うへー、地味に長いなー」
と、歩いていく……
聖女:「あら、ラサキちゃーん?」
娘が見当たらないッ!?
聖女:「ラサキちゃーん」
勇者:「おーい、ラサキー、返事しろー」
声は枝の隙間に吸われていく。
おや、木の根の上、盾が不自然に浮いている。
ラサキ:「うわうわうわー、無理、キモい。なにあのドラゴン、生理的に無理」がたがたがた
聖女:「ラサキちゃーん」ガバッ
ラサキ:「ギャアアアアア!!?」
勇者:「コラっ、勝手にいなくなっちゃダメッ」ぴち
ラサキ:「う、うええええん、うわあああん」
勇者:「お、おい、泣くなッ、もう7歳だろ。そもそもお前が──」
ラサキ:「ギィィヤァァァァァ! ギャーギャーギャー」
勇者:「ええー」
渾身の泣き声ッ!
効果はバツグンだぞッ!!
聖女:「あららんらん。らんららんらん♪」
ラサキ:「ぶえー、びえー、んぎゃー」
勇者:「はあ、やれやれ。魔王は倒しても娘には勝てないよ」
ラサキ、泣き虫であった。すると、
ヤギー:「やあやあよくぞ遠路はるばるおいでくださいました。メー」
雑草をかき分ける音とともに、ヤギー先生が現れた。
聖女:「まあヤギーさん、お出迎えご苦労様でした」
ヤギー:「ありがとうございます。聖女アオハ様。本日も絵画のような美しさで」
聖女:「まあやだお世辞は要らないわー」うふうふ
ぺちゃくちゃ ぺちゃくちゃ
勇者:「お、おお…」
ラサキ:「うわうわ、すごい勢いだね」
勇者:「ああ。割り入るスキがねえ」
ラサキ:「無理。入れない」
勇者、コミュ障であった。
ラサキもコミュ障気味である。
聖女:「子供のイタズラだったのですね。よかったぁ、昨日から心配でしたのよ」
ヤギー:「大変失礼いたしました。よく言って聞かせますので」
と、ここで、
シシハ:「おーい、先生ー、授業始まってるよー」
私、参上!
木の枝からジャンプだよ!
シシハ:「とうっ!」
くるくる シュタッ!
ヤギー:「シシハさん、今日は臨時講師の日のはずですが」
シシハ:「え゛っ ! ?」
ヤギー:「やらかしましたな。ママトさんに言って今夜の修行を倍にしてもらいましょう。もしもし……」♒️
シシハ:「ひええええ!!」
しれっと水瓶座を描いて通話してるよ。うわ。
ラサキ:「あー」
シシハ:「ん?」
ラサキ:「あー、うー、えっと、うー、あー」
えっと、なにこれ。
紫おかっぱ、マント。でかい盾もってる。
それが、友達になりたそうにこっちを見ている。
シシハ:「シシハだよ」
ラサキ:「あう、えと、あの、うー、……ラサキです」
シシハ:「ラサキちゃんだね。よろしく」握手
ラサキ:「あう。よ、よろ……しく」握手
幼女特有のモチモチ感!
にぎにぎして堪能よう。
にぎにぎ。モチモチ。
勇者:「あ、ああー、ラサキに友達ができたー!!」
聖女:「わー、おめでとー。娘をよろしくねシシハちゃん♪」
んえ? おおげさだなぁ。
シシハ:「はい。よろしく頼まれましたー」
ラサキ:「ほえー!」キラキラ
こうして流れで友達ができましたとさ。
そして、後の大冒険のプロローグだったのさ。
文章がかなり安定してきました。