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6話 炎の騎士さん、クエストに行く

 様々な木が風で揺れる森の中、アルデバランとスピカは火山に向けて歩を進めていた。


「なぁ、やっぱりクエスト変えないか?」

「断るわ」

「何でだよ」

「これが一番難しそうなクエストだったんだもの、私たちでやるべきよ」


 さすがはお姫様。責任感がお強いことで。とは決して口に出さないアルデバラン。

 だが、戦うのは誰であろうか。そう、アルデバランである。


「なぁスピカ。お前の冒険者ランクを言ってみろ」

「そ、それは……ランクなんて飾りよ!」


 スピカは「ふん!」と憤ってそのままズンズンと進んでしまった。この森には魔物が現れる。逸れたら(スピカの)命はないなと思ったアルデバランは早足で追いかけた。


 スピカとアルデバランは5メートルくらいの間隔をあけて歩いている。この現象を何と名付けようか。ソーシャルディスタンスとでも言おうか。我ながらなかなかいいネーミングセンス、流行しそうだなと自画自賛するアルデバラン。


 いつのまにか険しい山道を歩くこととなった。

 火山に向かっているのだから当然と言えば当然なのだが、暑い。

 それでもスピカは懸命に進む。その様を後ろから見つめていたアルデバランは素直に感心した。


「……頑張るねぇ」


 誰にも聞こえないようボソッと呟いた。


「……ん?」

「どうしたの?」

「いや、何でもない」


 アルデバランは見た。ちょうどさっきまで通っていた道の隣の道を歩く銀色の集団を。あれは見間違えようがない。この前まで自分が所属していた、騎士団だ。それも戦闘を歩くあの大男は……デネブ。つまり第99隊か。


「チッ、嫌なもんを見たぜ」

「何かいたの?」

「ん? あぁ、騎士だよ」

「騎士……」


 それを聞いた瞬間、スピカは早足になった。


「お、おい! どうした!」

「先にマグマドラゴンを倒されちゃうかも! 急ぐわよ!」

「マジかよ……」


 たしかに騎士団がマグマドラゴンを倒しに来た可能性はある。依頼を受けて、いざ戦場に来たら冒険者と被っていたというのはよくある話だった。


「でもだからって急ぐことかね」

「ほら早く! 取られちゃうわよ!」


 別にいいけど。と思ったアルデバランだったが、よくよく考えてみたらそれは獲物をあのデネブに取られることになる。

 逆に考えてみれば、騎士団の獲物を冒険者である自分が倒すことができるのだ。これは騎士にとってなかなかの屈辱。

 実際、冒険者を下に見ている騎士も多い。


「よし、急ぐか」

「きゅ、急にやる気になったわね……まぁいいけど」


 スピカとぐんぐん山道を登っていくアルデバラン。

 順調に進んでいたが、ついに最初の難関を迎えた。


「止まれ! スピカ」

「えっ?」


 突然大声になったアルデバランに驚くスピカ。

 スピカが足を止めたところで、地面がモコモコと蠢き始めた。


「何々!? 何なの!?」

「コイツは……サンドスネークだな」


 ドラゴン……とまでは言わなくとも、かなりでかい蛇だ。しかも潜って攻撃してくるからどこにいるかもわからない。非常にタチの悪い敵である。


「ど、どうすれば……」

「サンドスネークには弱点がある」

「弱点って?」

「こうするんだ!」


 アルデバランはスピカを抱きしめ、手のひらを地面に向けた。そして……


「"炎風波(えんぷうは)"」

「ひゃん!」


 炎を手のひらから放出し、ターボにして空へと浮かび上がった。空を飛ぶのは初体験だろうスピカが可愛い悲鳴をあげた。


「空を飛べば、サンドスネークが襲ってきても反応できる」

「無茶苦茶じゃない!」

「違う。合理的と言え」


 モコモコモコッ! と地面が盛り返してきた。そろそろ来るという合図だ。

 ドゴォッ! という大音量とともにサンドスネークが頭を出してきた。アルデバランたちを探してなのか目がせわしなく動いている。


「残念だったな。"焔華(えんげ)"」


 アルデバランはスピカを抱きしめている方とは逆の手で炎を巻いて放出。サンドスネークを燃やし尽くした。

 そしてそのままターボを緩め、着地する。


「ふぅ。こんなもんかな」

「アルデバラン……何者なの?」

「……ただのしがない元騎士だよ」


 アルデバランは自嘲気味に笑った。

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