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4話 炎の騎士さん、スカウトされる

 アルデバランら合格者たちはおばさんの言った通りに胸を張って冒険者ギルドへと帰ってきた。

 今回の合格者7人は冒険者ギルドの中央受付に集められる。

 中には当然ボロボロの奴もいる。白い髪の少女がその最たる例だ。


「さて、これから皆さんには冒険者としての身分証として、冒険者カードをお渡しします」


 おばさんが白いカードを手に持ち、合格者に配っていった。しかし、アルデバランの元にカードは配られない。


「あの……俺は?」

「あなたはこれよ」


 アルデバランが渡されたのは金のカード。いつの間にか撮られた顔写真と、その横に大きく「S」と記されていた。


「Sランク冒険者の特権ね。みんなも、これを目指して頑張りなさい」


 アルデバランは冒険者カードを見てため息をつく。こんな子供騙しなもので喜べるものかと、カードを投げ捨てたくなる気持ちをグッと堪える。

 金の冒険者カードを見てか、冒険者ギルドの酒場がざわつき始めたのを感じ取った。


「ふふ、今この王国にはSランク冒険者なんて4人しかいないからねぇ。いや、あなたで5人目だったわね」

「狭き門なんだな」


 正直言って、あの程度の魔物を瞬殺するくらいだったら第99部隊の誰だってできる。アルデバランとしては嬉しいというより、恥ずかしいという感情の方が表に出てきていた。


「さぁ、これにてあなたたちは正式に冒険者。それぞれのランクに見合ったクエストを受けてがっぽり稼いで、王国を守ってやりなさい!」

「「「うぉおおお!!!」」」


 騒がしい奴らは勝手に盛り上がっている。その間にもう解散だと判断したアルデバランは早速クエストボードを見にいった。


「へぇ……これが噂のクエストボードか」


 騎士には直接依頼が来るが、冒険者は自分で依頼を受けるシステム。張り出された大量の依頼に、アルデバランは目がくらくらしてきた。

 適当に左上から見てみる。


≪ゴブリン討伐 ・山奥のゴブリンたちを5体討伐して体内の核を採集してくること。報酬5000G。推奨ランクC以上≫

≪マグマドラゴン討伐 ・火山地帯の溶岩池にいるドラゴンの討伐。報酬80000G。推奨ランクA以上≫


 ご丁寧なことに推奨ランクまで書かれていて冒険者の安全にも配慮してくれている。

 強制的に仕事が来て、ケツを蹴られて働かされる騎士とはえらい違いだな。とアルデバランは微笑しながら思った。

 アルデバランがクエストボードに食いついていると、同期の白い少女がトコトコと歩いてボード前まで来て、即決で紙を持っていった。

 何を持っていったんだ、と確認すると、さっき読んだマグマドラゴン討伐のクエスト。


「推奨ランクA……だったよな?」


 つい呟いてしまう。あの少女は冒険者ランクEに奇跡的になれたレベル。どう考えても死ぬ。

 何か言うべきか迷ったが、クエストを受けるためには紙を受付に持っていく必要がある。どうせそこで止められるだろうと、アルデバランは余計なお節介をかけないようにした。

 とりあえず今日は適当なものを選ぼうと、≪ワイルドウルフ5頭討伐 7000G。推奨ランクC〜B以上≫を手に取った。

 ワイルドウルフなら騎士時代に何頭も狩っている。言うなればお得意様だった。

 依頼書を持って受付に向かう。受付には綺麗なお姉さんがいた。良かった、キツいおばさんじゃないぞ、とアルデバランは胸を撫で下ろした。

 もう白い少女の姿はなかった。断られて、家に逃げ帰ったか? とアルデバランは推測する。


「すんません。これお願いします」

「はい。冒険者カードの提示をお願いします」

「はい、これで」


 アルデバランが金色の冒険者カードを見せる。すると受付のお姉さんは名前を確認して……


「アルデバランさんですね。パーティメンバーの方が奥の待合室でお待ちです」


 は? とアルデバランは思った。

 パーティ……というのは冒険者によく見られるものである。騎士の部隊と近いもの、というのがアルデバランの認識。大体4〜5人で集まって、共同でクエストを受ける、あのパーティのことだろう。もっとも、アルデバランとしてはどのパーティにも所属していないはずだが。


「何かの間違いでは?」

「いえ。先ほど確かに『アルデバランが来たら呼んで』という方がいましたよ」

「断っといてくれ。それじゃ」

「こ、困ります! そのままにしておけませんし、何より女の子をそのまま放置されるんですか!?」


 その言葉を聞いて、アルデバランにビビッと来た。

 女の子が……自分をパーティメンバーと言い張る? 何それ神展開じゃん!


「ま、まぁ話くらいは聞こうか」


 男と、男並みにゴリゴリな女ばかりの騎士団に生きていたアルデバランにとって女性との絡みというのは憧れのものだった。

 アルデバランも、年頃の男の子である。ぶっちゃけ、モテたい。

 下心満載で奥の待合室まで歩いていった。


「あ、どうも〜、アルデバランです」

「よく来たわね。アルデバラン!」

「……ほへ?」


 そこにいたのは、さっきの白い少女! 未だにボロボロのまま。それなのに何故かソファーに偉そうに腰掛けていた。


「率直に伝えるわ。あなた……私のパーティに入りなさい」

「は、はぁぁぁぁぁ!?」


 これが……元、炎の騎士アルデバランと、後に星軍(せいぐん)の乙女と呼ばれるスピカとの、奇妙な出会いであった。

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