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1話 炎の騎士さん、クビになる

「アルデバランよ、貴様はクビだ」

「……はい?」


 あまりに唐突なクビの宣告に、現実を受け止めることができない少年。

 2メートルは超えるかという大男の前で跪く彼の名はアルデバラン。王国最強の騎士部隊、第99部隊の主力である。


「な、なぜ俺がクビなのでしょうか……」


 アルデバランとしては実力にだけは自信があった。炎の騎士と呼ばれ、王国を迫り来る魔の手から護っていたはず。

 それが突然のクビ宣告である。納得のいく理由が欲しいのは当然だろう。


「なぜ……だと? それはもちろん……」


 ゴクリと、生唾を飲むアルデバラン。眼前の大男、そしてアルデバランの上司にあたるデネブは迫力だけなら王国1なのだ。


「貴様からは覇気を感じないからだ」

「……は、覇気でございますか?」


 一瞬耳を疑ったアルデバランであったが、間違いなくデネブは覇気がないと言った。

 混乱するアルデバランを他所に、デネブは言葉を紡ぐ。


「ワシの部隊は少数精鋭にして最強無敵。それゆえに強さ以外でも完璧でなければならぬ。わかるな?」

「は、はぁ」


 正直に言って「はぁ」というより、「はぁ?」という感じなのだが、そんなことを言ったらぶん殴られると、アルデバランは言葉を飲んだ。


「貴様は客観的に見て覇気がない。やる気が感じられない。向上心が見当たらない。なんでまだ生きている」

「そこまで言いますか……」

「黙らっしゃい!」


 デネブが叫んだ瞬間、彼から暴風が吹いてきた。アルデバランは完全に気圧される。


「貴様、ワシに意見したな?」

「い、いえ! そのようなことは……」

「反省の余地があればクビは見送ろうと思ったが、ワシに意見するとはよほどここから去りたいらしいな。とっとと出てゆけ!」

「あ……はい」


 こうして騎士、アルデバランの物語は幕を閉じた。


 __________________



「……いや閉じれねぇよ!」


 当然騎士舎も追い出されたため、アルデバランは住むところを失った。幸いにも1年くらいは何とかなるお金は持っていたため、古い部屋を借りてそこを拠点とした。


「くそ……なんだよあのパワハラ上司は!」


 ここ最近、王国では働き方改革という名の下に労働者の保護が手厚くなってきた。が、人々の模範たる騎士団の長がアレである。この国からパワハラがなくなるのはまだまだ先が長そうだ。


「まず考え方が古い! 何だよ覇気って。そりゃ……人よりやる気はないかもしれないけど、それなりにやってたじゃんかよ」


 ぶつぶつと呟きながら寝る前の歯磨きをするために洗面台へ向かう。騎士舎の洗面台と比べたら古臭いが、贅沢は言ってられない。

 鏡に映った自分は、確かに覇気は感じ取れなかった。

 特にこれといった手入れをしていない黒髪に乏しい表情筋。唯一やる気が感じられるのは赤い瞳くらいだろうか。


「はぁ、これからどうしよう……」


 鏡に写った自分に問いかける。といっても、アルデバランに残された答えは1つしかなかった。

 そう、冒険者になることである。

 もう17歳の彼に、今さら就職などできるはずもない。今まで剣と魔法のみを学んでここまで来たのだ。


「よし……明日は冒険者ギルドに行く。そして冒険者になって、日銭を稼ぐ生活を送るんだ。もう誰も信じないぞ。俺は一人で世界を救ってやる!」


 アルデバランはぶつぶつと怨念を込めながら呟いてベッドにダイブ。それから数十秒で眠りについたのであった。

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