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第二話 名護さんとアラサー先生


 まさか、狐の窓で僕の姿が見えるようになるなんて、普通なら幽霊として過ごしてたら誰にも見つからなくて絶望していたら怨霊として覚醒、みたいな主人公パターンもあるだろうに。

 本当に見えているのか、そうだ、声は聞こえるのか。



「名護さん、きこえてる?」


「ええ、とても」



 文学的な返しをしてくる、いつも通りの名護さんだけど、狐の窓越しなら見えるし話もできるらしい。

 しかし奇行を見たばかりだから、この澄ました態度に違和感を感じるな。



「花田、祐樹(ゆうき)君は、確かにここに在るんだね?」


「まあ、幽霊になっているけど」



 会話が途切れる。

 図書室の受付で並んでいる時もいつもそうだったが今回はもう少し間を持たせないと。



「えっと、できればみんなにも伝えてほしいかなーなんて」


「無理」


「……まさか、恥ずかしくて話しかけられないとか?」



 そっぽ向かないで。

 話しかけられない気持ちは教室の隅っこ族だった僕にも分かるが、それでも誰にも見えない幽霊のクラスメイトで同じ図書委員をしている仲間なんだから勇気を出してほしいけど。

 それでも、幸い時間はあるし。


 それに僕が死んだショックで暗いクラスメイトを見ているのは辛いけど、僕が居ることを知って幽霊になれるから死んでも問題ないと思われても困るし。



「とりあえず、僕も昼と深夜は探索していたいから話せるタイミングを作らない?」


「そうね、いつでも狐の窓はし続けられないもの」



 皆に話せなくても、狐の窓越しに僕と話しているのを見せてくれたらそれで僕をクラスメイトに認知させられるではないか、というのも思いついたけど、幽霊の僕はクラスメイトにどういう影響を与えるかわからないし、それは流れに任せるか。



「まあ、基本的に部屋に戻ってきたタイミングにはこの部屋に来れるようにしようと思う」


「それでいいわ」


「逆に、居てほしくないタイミングとかある?」



 考えている顔をしていたが、すぐにやけ顔になって僕を見た。



「へんたい」


「うっ、さすがにそういうタイミングは外すよ」


「わかってる、冗談よ」



 心臓に悪いことを、トイレや風呂、誰が好き好んで人の恥ずかしいことを見に行かなくちゃならない。

 まあ幽霊だし見つからない生活が長くなれば、そういう欲も生まれるかもしれないけど、こう見つかるのが分かっているのに無謀なことはできないよ。



「名護さんは疲れただろうし今日はもう休んだら?」


「そうさせてもらうわ」


「おやすみ」


「ええ、おやすみ」



 そういって、狐の窓を止めたから僕もまた誰からも見えない存在になった。

 幽霊としてできることはほとんどないけど、城の探索をして秘密を探ることはできる、王族の思惑とかも堂々と盗み聞きできるし。


 ただ、いまいち不安が残る。


 自分のことというより、名護さんの様子を見に来た時に狐の窓をしていた。

 確かに僕が幽霊になっている可能性だけを考えていたらそういう探し方をする事もあるかもしれない。


 だけど、おかしくないか?


 冷静に考えても僕が幽霊になっている可能性にたどり着くのはおかしい「本当に居た」と言われたから確信はしていなかったようだけど。

 とにかく、ヤバい予感がある。


 狐の窓で覗かれる前に逃げれるように顔だけ壁から出して盗み聞いてみるか。



「流石にもうどっか行ったかな?」



 最後の確認か狐の窓を覗くようだ。

 少し部屋の外で待って、もう一度聞き耳を立てる。



「ふふふ、ふふふふふふふ」



 怖い笑い声をあげているんだけど。

 思惑か何かを聞ければいいんだけど。



「まさか祐樹君が居るとはね、まあ、見つけるのは大変だけど部屋に戻ってきたタイミングで探せば居てくれるとは言ってたし」



 めちゃくちゃ喋るな、独り言が多いタイプか、好都合だからいいんだけど。



「しかし良かった、今のところ見えるのは私だけ、私だけの祐樹君か、くふふふふ、見えることを他の誰かに伝えるわけがないじゃない」



 あ、ふーん、そういう好意は森優子だけでもう十分だよ。

 というか、さっきもそうだけど衝撃の事実を聞いてしまったな、なんでこんなに具体的な独り言をいうのかね、誰かが聞いてるかもしれないだろ。

 僕が言える事じゃないけど。


 しかし、恥ずかしいからみんなに狐の窓を教えられないとかじゃなくて、僕を知っているのは自分だけでいいという独占欲なのか。


 皆が僕が居ることを知らないのも不都合じゃないと合理化したのがバカみたいじゃないか。


 さっきから精神的に疲れる事ばかりだ。


 クラスメイトの様子を見終わって、あとは先生を見てこの世界の人達の様子を見てという感じかな。

 幸いにも幽霊は肉体の疲労も眠気もないようだし。


 ということで早速隣の部屋のアラサー先生、南方南(みなかたみなみ)先生の様子を見に行こう。



「おじゃましまーす」



 幽霊だから聞こえないだろうけど。

 というよりまだ気絶している様子だ。


 色々とアラサーとかの自虐しつつも余裕がない先生だったけど、生徒と同じ視点で話をしてくれる人気のある先生だ。

 僕の家庭の事情、本当の家族が居ないことについても気遣って声をかけてくれる、少し荒んでいたころは鬱陶しくも思ってたけど、まあいい人だ。


 しかし、何もないから通り過ぎて王様とかを見に行ってみようかな。



「うぅ、花田君」



 寝言にしてもはっきり呼びすぎだな。

 僕は幽霊ですが居るから心配しなくてもいいのに、なんて思いを込めて手を取ってみた。


 幽霊だから通り抜けたわけだけど。



『あれ? 花田君が居る? 夢なの?』



 先生が頭に直接話しかけてきた。

 これは、夢枕に立つってやつかな? まあ好都合だし利用させてもらうか。



「まあ、幽霊になっているけど皆を見守ってますよ」


『幽霊に、守れなくてごめんね』


「いえ、先生にはよくしてもらってましたし、それに死んだのは、あの兵士の所為です、気にしないで」



 いろいろ言いたいことがあるようだけど、責任という言葉も出かけては、僕に両親が居ない事や、かける言葉が見つからない様子だ。



「責任はともかく、僕が死んだように治安のいい世界とは言えないでしょう、だから、僕の分までみんなを守ってください、お願いします」


『言われなくても、当然です』


「それならよかった、僕は幽霊だからできることはありませんけど、陰ながら応援させてもらいます」



 意識が覚醒してきたようで、声が返せなくなったようだ、僕の声も姿も分からなくなっただろう。

 目が覚めたようだ。



「花田君、先生、頑張りますからね。」



 ぜひそうしてほしい。


 しかし思わぬ収穫が、夢枕に立つ、これがありなら他にもできることは色々ありそうだ。


 例えばカメラに映るとか。

 場合によってはポルターガイストや憑依などの霊障も起こせそうだ。


 でも今は何もわからないし情報でも集めているか。

 さっきから思わぬ話が聞けてばかり、異世界のいい情報でも集まればいいけれど。


暇な時に書くので投稿は不定期になっています。

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