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片倉荘  作者: Satch
3/22

第3話:初めての就寝

第1話と2話のサブタイトルを変更しました。

(第?話:xxxx←コレ)

内容に変更はありません。

午後も7時になり、お腹もグーグー鳴り出した頃、

あきらさんがいきなりドアを開けて顔を出してきた。


「…っ! あの…あきらさんノックぐらいしてくださいよ!」


「何故だ? 急に開けられて困ることでもしていたのか?」


なにやら意味深な表情で口角を少しだけ上げている。


「そ、そんなことはしてないですけど…」


「じゃあ別に構わないだろ?」


まったく表情を変えずに何を言ってるんだろうか? この人は…


「構わな…くは無いですよ! 出来ればノックしてください!」


「できるだけ善処しよう」


なんか返事が軽いんだよな、本当に善処する気あるのかな?


「それより何か用ですか?」


「ああ、そうだった夕食の時間なので呼びに来た」


「あ、それはわざわざすみません」


「なんか他人行儀だな、その敬語はどうにかならんのか?」


「それは…そのうち無くなると思います」


「そうか? それならいいが、それより行こうか?」


そう言うと、おもむろに俺の手を取って立たせると、そのまま手を繋いで歩き出した。


「あの…手を離してもらえませんか?」


「いいじゃないか、別に減るもんじゃなし」


何コレ? 普通立場逆じゃない?

確かに減りはしないけどさ、同世代の女の子と手を繋いだことがないから、

すごい恥ずかしいんですが…


「は、恥ずかしいです…」


「なんだ! 手を繋いだこともないのか?」


そう言っているわりには、あきらさんも顔真っ赤じゃないか!

でも口に出しては言えません…


「私も初めてだ」


「初めてなのかよ!」


この人は、本当に訳が分からない、1番しっかりしてそうなのに…


俺が連れられて来たのは、最初に皆と挨拶した、あの食堂のような部屋だった。

2つあるテーブルは横にくっつけて並べてあった。


1番端には、京子さんが座り、その隣に蘭ちゃんが座っていて、

向かい側、京子さんの前に菜摘さんが座り、蘭ちゃんの前に葉子さんが座っていた。


「あ! お兄ちゃんココ座って!」


蘭ちゃんが満面の笑顔で、自分の隣の椅子を軽く叩くと、

あきらさんは俺の手を離して、葉子さんの隣に座った。


「ああ、蘭ちゃんありがとう」


蘭ちゃんは顔を真っ赤にして、えへへって感じで笑った。


「ちょっとあきら! あんた今、私の下僕と手を繋いでなかった?」


「繋いでたけど、それがどうした?」


えぇ! と騒ぎ出す一同。


「もしかして、私の下僕のことが好きなの?」


「いや、よく分からない、しかし嫌いではないな」


「そう…」


何故か弱気になる葉子さんが気になったけど、やっぱり突っ込まずには居られない。


「葉子さん、俺葉子さんの下僕じゃないから!」


「ふん」


葉子さんはツンとそっぽを向いてしまった。

そのタイミングを見計らい、京子さんが場を改める。


「では、みなさん、いただきましょう、いただきます!」


「「いただきます!」」


料理は全て京子さんが作ってくれているらしい。

っていうか、手伝えよ女子達!


なんて言ったら命の灯が消えるので、言わないけどさ。

まぁ俺も手伝って無いから人のこと言えないか。



夕食も楽しく終えて、今はみんなで談笑中。

菜摘さんが蘭ちゃんとは逆サイドの俺の隣に座っている。


っていつの間に!? まったく気配を感じなかったけど?


「ちょっと菜摘さん、いつの間に、私の下僕の隣に移動したのよ!」


「だ、だって翔君が遠かったから…」


頬を赤らめて俯いた状態で、チラチラ俺を見ているのが可愛らしい。


「遠かったって程離れてないでしょ?」


「だってもっと近くで翔君の顔見たかったんだもん!」


だもんって…京子さんを抜かすと最年長なんだから…


「菜摘さんもなの…」


なにやら葉子さんが呟いたようだったが、俺の耳には届かなかった。


そんなことを話している時、蘭ちゃんが爆弾を投下した。


「おにいちゃん、一緒にお風呂入ろう!」


「「なっ!」」


蘭ちゃんと京子さん以外、全員ハモったよ、美しい!

って違う、違う、美しい言ってる場合じゃなかった!


「だめだから!」


「えー! いいじゃん、入ろうよー」


「蘭ちゃんやめなさい、翔君も今日は疲れているからね」


京子さんが助け舟を出してくれた。


「はぁい」


素直に返事をする蘭ちゃんは可愛いね。


「じゃあ、明日ね!」


そうでもなかった!


「ということで、私と入りましょう」


娘に続いて、京子さんも爆弾投下しやがった。


「「それは、もっとだめだから!」」


「あらぁ、いろいろしてあげたかったのにぃ」


一瞬頭にピンク色の映像が浮かびそうになったが、慌てて振り払った。



そんなこんなでやっと風呂に入れたが、俺に平穏は2度と訪れないのではないだろうか?

途中蘭ちゃんが裸で乱入してきたが、すぐに葉子さんたちに捕獲されて連行されていった。


風呂を出ると、何かと疲れたので、ベッドに入ってうとうとしていると、

静かにドアが開く音がして目を開ける。


「ん? 誰?」


またあきらさんかと思ったけど、そこに居たのは、パジャマ姿で枕を持った、蘭ちゃんだった。


「おにいちゃん一緒に寝よう…」


「え? だ、ダメだよ」


「どうして?」


「どうしてって…」


「ダメ…?」


涙目でそう言われると、こっちも断れなくなるんだけど…

まぁ、10歳だし、そんなに気にすることもないかな。


「い、いいよ」


するとぱぁっと嬉しそうな笑顔になり、俺の枕の横に自分の枕を置いて布団に入ってきた。

え? さっきの涙目はどこに?


「おにいちゃんのお父さんってどんな人?」


「どんなって、普通の農家の親父だよ」


「優しい?」


「どうかな? 俺には厳しいけどね」


「そんなんだ」


この娘も父親が居なくて寂しかったのかな。

京子さんの話だと随分前に別れたってことだから。


そんなことを考えていたら、蘭ちゃんはスゥスゥと寝息を立てて寝ていた。


「早!」


俺も蘭ちゃんの寝息を子守唄に眠りについた。



翌朝、葉子さんの怒鳴り声で目が覚めた。


「ちょっとあんたなにしてんのよ!」


「なにって寝てたんだよ」


ベッドで上半身だけ起こした俺が抗議の目を向ける。


「違うわよ! 何で蘭ちゃんがここに居るのよ!」


まだベッドの中で眠っている蘭ちゃんを指差す。

ってこの葉子さんの声で起きないなんて…。


「一緒に寝てあげただけだよ」


「寝てあげたって…な、何も無かったんでしょうね?」


「は? 何があるっていうんだよ」


俺の頭はいまいち目覚めて居ないので、葉子さんが何を必死になっているのか分かってない。


「そ、それはあれよ…その…」


顔を赤く染めて、なにやらブツブツ言っている。


「それより何か用ですか?」


「用ってほどでもないわよ!」


なんで怒ってらっしゃるんですかね?


「ふん」と言って、勢いよくドアを閉めて行ってしまった。


ドアの閉まる音に、ビクッと身体を震わせて、蘭ちゃんが目を覚ました。


「て、敵襲?」


敵って誰よ? ある意味当たってるけどな!


「驚かせちゃって、ごめんな」


「ううん」


蘭ちゃんは「うーん」と伸びをしてベッドを降り、自分の枕を手に持った。


「おにいちゃん、また今度一緒に寝てもいい?」


「ああ、いいよ」


蘭ちゃんは満面の笑みで飛び跳ねるように部屋を出て行った。


この家は一軒家だが、3人まで使える洗面所がある。

俺は顔を洗うため、洗面用具を持って洗面所に向かう。


洗面所には、菜摘さんが歯を磨いていたが、パジャマで左肩が露出し、右足は膝までズボンが上がっていて、

髪の毛はあちこちにハネ上がっていた。


なにこの絵に描いたようなお寝坊さんみたいな格好は…


「おはようございまーす」


「おばぼう…」


おそらくおはようと言ったのだろうが、歯ブラシを咥えたままなので、よく聞き取れなかった。

しかも前方を向いたまま動いてないし。


自分も歯を磨きつつ、しばらく菜摘さんを観察しているが、時折思い出したように、手が動いているところを見ると、

これ絶対寝ぼけてるよね? っていうか寝てるよね?


顔を洗い終えた俺は菜摘さんで遊んでみる。


「菜摘さーん」


耳元で優しく呼びかけてみるが反応なし。


「おい! 菜摘!」


少し語調を強くして言ってみるが反応が無いので、怒鳴ってみる。


「菜摘!」


「びや!」


悲鳴だか何だか分からない叫び声を上げて尻餅をついてから、

まわりをキョロキョロしていた菜摘さんは俺を認識する。


「しょ、翔君ひどいですよぉ!」


立ち上がってプリプリと怒ってらっしゃいますが、口の周りに歯磨き粉が付いてますよ?


「あー…えーと…ごめんなさい」


笑いを噛み殺して、とにかく謝っておこう。


「それよりも、菜摘さん、前ボタン…」


菜摘さんはパジャマの上着のボタンが上から3つ外れていて、ピンクのブラと谷間が見え隠れしていた。


「え?」


と言って、自分を見下ろしてから俺を見る、そしてまた自分を見下ろして、俺を見たところで固まる。


「キ、キャアァアアアアア!」


それから俺は、駆けつけた葉子さんとあきらさんに、事情を説明するが、なぜか怒られました。

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