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片倉荘  作者: Satch
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第20話:天然

「改めまして、お姉様、皆さん、今日から末永くよろしくお願いしま…いたっ!」


ペコリと可愛らしくお辞儀して、最後はテーブルに頭ぶつけてるし。


「よろしくーって、末永く!?」


「翔君、この娘天然かも」


葉子さん、本人を前にしてその発言は…。


「て、天然じゃないですよー」


おでこをさすりながら反論する楓ちゃん。


「人には良く天然だね、って言われるんですけど、天然じゃないです」


うん、天然の人は自分のこと天然って言わないからね!







「翔さんせんぱい?」


うん、それ変だよね? さん付いてるのに先輩ってさ。


「ん? ああ、楓ちゃんどうしたの?」


ひょこっと楓ちゃんがドアのところに顔出した。


「ちょっと部屋の整理手伝ってもらいたいんですけど?」


「うん、いいよ」


即答して楓ちゃんの部屋に行くと、すでに女の子らしい部屋が作られていた。


「このタンスなんですけど、もう少しこっちにズラしたくて」


「うん? ああ、それぐらいなら動かせそうだ」


「すみません」


「持つとこないからここの引き出し開けるね」


返事を貰う前に開けたのがいけなかった、そこには色とりどりの下着が…。


「ひゃわわ!」


慌てて引き出しを閉める楓ちゃん。


「ゴメン! そこが1番持ちやすかったから…」


「は、はい…」


楓ちゃんは頬を染めて恥ずかしそうに俯いている。


「そうだよね、やっぱ恥ずかしいよね…」


別の引き出しを開けてやってみるも、上手く力が出せない。


「翔さんせんぱい、恥ずかしいけど開けていいですよ」


「え? そう? な、なるべく見ないようにするよ」


「翔さんせんぱいになら見られてもいいっていうか、むしろ見て欲しいかな…なんて」


楓ちゃんは1人で何やらごにょごにょ言ってどこかに旅立っているので、

先にタンス動かしちゃおう。


「楓ちゃん?」


「…」


まだどこかに旅立ってますね。


「おーい、楓」


と呼び捨てにして頭をガシガシと撫ぜてみる。


「ひゃわわ! ご、ごめんなさい!」


思ったとおりの反応が帰ってきてホッとする。


「タンス、この辺でいい?」


楓ちゃんは10cmほどズラしたタンスを確認して


「はい! ありがとうございます!」


と元気に返事をした。


「じゃあ、部屋戻るね」


「あ、ああのあの」


何故かおどおどと呼び止める楓ちゃん。


「うん?」


「も、もう1度、あ、頭を撫ぜてもらえませんか?」


「ああ、そんなこと…」


って頭撫ぜたの分かってたんかい!


「…」


楓ちゃんは少し顎を下げて、頭をこちらに向けて目をつぶっている。

これで顎が上がってたら、キス前のような感じじゃね?


「じ、じゃあ、撫ぜるよ?」


なんか意識すると緊張する。


「…は、はい」


その緊張が楓ちゃんにも移ったみたいだ。


そっと手を伸ばし頭に触れようとした時、突き刺さるような視線を感じた。


「翔君…何してるのかなー?」


「…っ!? な、なにもシテナイデスヨ、ヨウコサン、hahaha」


「翔、そういうことは鍵閉めてやらないと」


「あきらさんに色々するときにはそうします」


「い、いい色々ってなんだ!?」


あきらさんの顔は見る見る真っ赤に染まっていく。


「あきら動揺しすぎ…っていうか何を想像して赤くなってるのよ」


「んな!? 何も、そ、想像などしていない!」


「どうだか」


「せ、先輩方、私が翔さんせんぱいに頼んだんです」


あきらさんが反論しようとしたとき楓ちゃんが割って入ってきた。


「…何をよ?」


「タ、タンスをズラしてくださいって…」


思わずズッコケそうになったよ。今の争点はそこじゃないから!


「あんたねぇ」


楓ちゃんの肩がビクッっと動く。


「か、可愛い後輩をあんたと呼ぶのはどうかと…」


「ずいぶん肩持つのね、それに<可愛い>後輩ねぇ」


「そ、そこに他意はないです」


「ふーん…」


ジト目で睨む葉子さんから冷気でも出ているかのように、部屋の中がひんやりとしてきた。


ドアの前には葉子さんと、少し涙目で葉子さんを睨むあきらさんがいる。

ここを突破する道があるのか? そこで俺の頭に閃くものがあった。


「な、なによ!」


自分の前に移動した俺をみて、言葉とは裏腹に目が泳ぐ葉子さん。


そっと頭を撫ぜ撫ぜしてみる。


「…っ!?」


驚きの表情で俺を見たけど、構わずに頭を撫ぜる。

そのうちうっとりとした表情で、気持ちよさそうに目を瞑りだした。

まるで猫が頭を撫ぜられて、気持ちよさそうにしているように。


その隙を突いて脱出に成功! そのまま脱兎の如く自分の部屋に向かって逃げる。


「あ! こら! もう少しだったのに…」


後ろで葉子さんが叫んでいたが、何がもう少しなのか怖くて聞けなかった。


当然その後すぐに捕まって、葉子さんとあきらさんからも粛清されたけど。

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