第12話:夏の予定
ゴールデンウィークやら旅行やらで更新する暇がありませんでした。
来週あたりにもう1話更新する予定です。(書き終われば)
「なぁ、翔? 夏はやっぱ海だよな?」
「…まぁ、そうかな」
忘れているかも知れないので言っておくけど、久しぶりに登場したコイツは、
なぜか親友の杉崎健太郎。平凡を絵に描いたような男だ。
「だから平凡言うな! それよりさ、海に行って女の子の水着を鑑賞しながら、夏を満喫しようぜ!」
「それ本音と建前が全部出ちゃってるからね!」
「海で女の子の水着鑑賞しないで何すんだよ!」
「……」
欲望丸出しのヤツと行ったら、同類だと思われかねないな。
「そうじゃなくて、相田さんと如月(葉子)さんを誘ってくれよ」
「なんで俺が? お前に貸しを作った覚えはないぞ」
「大ありだよ、自分だけおいしい環境にいやがってよ!」
「く、苦しい! 首を絞めるな!」
逆ギレ気味な親友がなぜか可愛そうに思えてきた…
「ちょっと、あんたらさっきから丸聞こえなんだけど?」
葉子さんがジト目で俺たちを睨んでいたので、健太郎のやつは俺の首から手を離すと、目を伏せて縮こまってるし。
俺の席でしかも結構大きい声でしゃべってたから、そりゃ聞こえるよね。
「私たちは、翔君が誘ってくれるなら行くわよ、ね? あきら」
「え? うんまぁ、そこのゴミ虫の目的はアレだけどな」
そう言うとあきらさんは、汚い物でも見る目で健太郎を見てる。
「翔、ゴミ虫って言われてるぞ?」
「お前だよ! 健太郎!」
「なんでだよ! ひどいよ! それより頼むよ、翔」
健太郎は、そう小声で言うと、手を合わせて懇願してきた。まあ、たまにはいいか。
「じゃあ、葉子さん、あきらさん、夏休みに海へ行きましょう」
「わかったわ」
「わかった」
「よっしゃー!」
「ちょ…声大きいから!」
葉子さんに睨まれた蛙、じゃない健太郎は口を手で押さえたまま、どこかに走っていった。
なんでやつはいつもどこかに走り去って行くんだ?
「翔君、私も行く!」
「岡田さん、どこで聞いてたの?」
「ひどーい! 葉子ちゃんの横に座ってたのに!」
「え? あ、ごめん…見えなかった」
岡田さんは葉子さんの影にすっぽり収まるくらい小さいので見落としてた。
「そうなると当然、菜摘さんや蘭ちゃんなんかも誘わないと悪いよな」
「そうね、翔君が誘いなさいよ」
「は、はい」
独り言を言ったつもりだったのに、葉子さんは地獄耳で聞き取ったらしい。
「翔君? 少しお話しが必要かしら?」
「い、いえ、とんでもない」
また心を読まれた! 俺ってそんなに顔に出易いのだろうか?
…
あきらさんと葉子さんはどこかに寄って行くらしく、下校は菜摘さんと2人だった。
「そうだ、菜摘さん、夏休みに海に行きましょう」
「え!? そんな2人きりで海なんて…」
頬を赤く染めて遠い目をしてますけどね。
「違いますよ! みんなでですよ」
「え? なーんだ…」
菜摘さん、本屋の件があったのに、まだ懲りてないのだろうか?
…
そして片倉家では、蘭ちゃんに声をかける。
「蘭ちゃん、夏休みに海に行こう」
「え? 2人だけで?」
「……」
「おにいちゃんどうしたの?」
「いや、少し前の出来事のデジャブが起こってたから」
「? やっぱりみんなでだよね?」
「そうそう」
そこでふと京子さんも誘ったほうがいいのだろうかと思ったので、蘭ちゃんに聞いてみた。
「それと京子さんは行くかな?」
「ママはどうだろ? 日焼けはお肌の敵って言ってるから、行かないかもね」
「行かないわ」
「うわ!」
「キャ!」
「いつの間に後ろにいたんですか!?」
「え…さっきからずっといたけど?」
「全然気付かなかった…」
「娘が男に誘われてるから気になってね」
「男って…」
「ま、蘭のことお任せするわね、色々と」
色々ってなんだ? ってツッこんだら地雷踏むんだろうな。
「わ、わかりました」
…
ということで(どういうこと?)、みんなで水着を買いにデパートに来ています。
別に今持っている水着でいいじゃんというのは、男だけで女性陣はそうもいかないらしい。
葉子さん、あきらさん、菜摘さんが、ああだこうだ言いながら水着を選んでる。
蘭ちゃんと岡田さんは子供用水着を見ながら、ああだこうだ言っている。
「岡田さんはそっちじゃないでしょ?」
「えぇ! 大人用だと脱げちゃうもん」
「それほど小さいのか…」
男性用水着も置いてあるけど、健太郎のやつは誘われてないから、なんか俺1人だけ場違いじゃない?
「翔君、これどう思う?」
葉子さんが少し派手めのビキニを着て立っていた。
「…良いと思いますよ」
試着する度に見せられるのは嬉しい…じゃなく、女性の水着ってどれが良いのかよく分からないから困る。
「翔、これどう?」
あきらさんは大人しめのワンピースの水着を着ていた。
「あきらさんっぽくて良いと思いますよ」
「翔くーん、見て見てー」
今度は菜摘さんが手招きしてるし…っていうか俺の意見って参考にしてるのかな?
ただ聞いてるだけで、結局最後は自分で決めるんでしょ?
「!?」
「ど、どうかな?」
最初に目が行ったのは、頬を染めてもじもじと恥ずかしそうにしている菜摘さんの顔、ではなく。
たわわに実った自己主張をしている二つの丘、簡単にいうとおっぱ…胸だった。
「な、菜摘さん! その水着小さくないですか!?」
「えぇ!? サイズ的には一番大きいカップの水着だけど?」
「…そうなんだ」
「おにいちゃん」「翔君」
「「さいてー」」
岡田さんと蘭ちゃんが綺麗にハモってるね、って言ってる場合じゃなかった。
「え!? な、何が!?」
「さっきから菜摘ちゃんの胸ばっかじーーっと見てさ!」
菜摘さんの胸に釘付けになっていたのを、しっかりと見られてた。
「そ、それは、おと、男としてはしょうがないんだよ!」
「翔君、動揺しすぎ…」
葉子さんが冷めた目でこっちを見てるけど、男はしょうがないんだよぉぉ。
「そ、そんなことより、蘭ちゃんと岡田さんは試着しないの?」
「やだぁ! 私達の水着もやらしい目で見るんでしょ?」
「見ないから!」
「どうせ私達なんて菜摘ちゃんと比べたらエベレストと平地、って誰が平地よ!」
岡田さんいつになく興奮してるな、1人ツッコミまでして…。
「お、岡田さん落ち着いて」
「おにいちゃん、私と岡田さんはもう決まってるからいいの」
「え? でも何も買ってないよね?」
「うん、それは見てのお楽しみね」
なにか嫌な予感がするけど、まあそこは深く掘り下げないでおこう…。
「すみませーん、これより大きいカップのはありませんか?」
菜摘さんが声をかけると、女性店員が音もなく現れた。忍者?
「申し訳ございません、当店ではそちらの商品が最大サイズとなっております」
「そうですか…」
「もしご必要でございましたら、アメリカの店舗からお取り寄せ致しますが?」
「じゃあ、お願いしようかな」
「かしこまりました」
へぇ、この店、アメリカにも店舗持ってるんだ。意外だな。
「私はコレに決めたわ」
意外にも葉子さんが真っ先に決めたようだ。
「私は最初からコレに決めてた」
あきらさんは事前にリサーチ済みだったようだ、あきらさんらしいな。
「あぁ…わたしだけまた来ないと、1人で来れるかな」
と俺の顔を見ながら小声で言ってるし…。
「分かりました、その時は付き合いますよ」
別に後ろめたいことはないのに、つい小声で答えると、菜摘さんは「うん」と頷いて嬉しそうに満面の笑みを漏らした。