表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片倉荘  作者: Satch
12/22

第11話:デート(岡田さん編)

今日は葉子さんの諜報部員でもある岡田さんとのデートだ、

一挙手一投足の情報が葉子さんに流れると思って間違いない。


だから滅多な事できないぞ、って滅多な事って何?


「大谷くーん、おまたせー」


後ろの方から岡田さんの大きな声が聞こえてきた。


「別に待ってな…」


「どうしたの?」


岡田さんは事もあろうかランドセルを背負っていた…。

しかもここ駅前なんですけど、周りはみんな引いてるように見えるのは気のせいか?


「それは?」


「え? あぁ、これにお弁当作って入れてきた」


無い胸を反らせて自慢げな顔をしているけど…。


「お弁当は判るけど、なぜランドセルなんだ?」


「ちょうど良かったから?」


「はぁ」


ちょうど良かったからって言われてもね、しかも疑問系だし。


「とにかくそれは却下だ」


「えー!?」


えーって…考えれば分かるだろうに…。


「大谷君、こういうの好きかと思って」


「…俺がいつそんなこと言った?」


「え? でも、小学生の女の子とお風呂入ってるって…」


「葉子さん…」


頭痛くなってきた、確かに入ったけど、それを岡田さんに話さなくてもいいのに。


「しょうがないかー」


岡田さんはランドセルを下ろすと、中からバスケットを取り出した。


「バスケットに入ってんじゃん!」


「えへへー」


バスケットを俺に持たせると、駅のコインロッカーにランドセルを仕舞いに行った。


服装は小学生みたいだが、どんな服装しても小学生体型だからどうしようもない。

ここは目を瞑ろう。


デートも大分慣れてきたので、手を繋ぐくらいでは動揺しなくなってきた。


「!?」


自然と岡田さんの手を取ると、一瞬ビクッっとなった。


「あ、ごめん! 嫌だった?」


「ううん、嫌じゃないよ」


顔を真っ赤にした岡田さんは、満面の笑みで答えた。


「そう?」


「うん」


「じゃあ、行こうか?」


「うん、行こう!」


岡田さんは元気いっぱいに拳を天に向かって突き出したけど、どこに行くか決めてなかった。


「ってどこ行くか決めてないけどどうする?」


「大谷君が行きたいのなら、どこでも…」


頬を染めて俯き加減で意味深な発言をするな!


「ゆ、遊園地でいいかな?」


「…う、うん」


なんか少し怒っている感じがするけど、気のせいかな?

それと遊園地ってあきらさんと行ったあの遊園地しか知らないけど、まぁいいか。



「ここってDEAD OR DEATHが有名だけど、私ああいうのダメなんだぁ」


良かった! あれはしばらく乗りたくなかったから!


「大谷君は?」


「俺? 俺は別に大丈夫だけど、今日は気分じゃないから」


「乗りたかったら私待ってるからいいよ?」


このいじらしさは葉子さんにも見習って欲しいね。


「いや、本当に今日は岡田さんとデートだし、1人で乗っても詰まらないからね」


「ありがとう! あっぱり大谷君は優しいね」


岡田さんはうれしそうに俺の腕に自分の腕を絡めてきた。

あきらさんに死ぬほど乗らされたからなんだけど、そんなこと言えないのでちょっと後ろめたい。


腕を絡めても胸の感触は全然無いな、いや感触を楽しもうと思った訳じゃないよ?


船に乗って見ていくアトラクションや、汽車に乗って見ていくアトラクションなど、

絶叫系以外のアトラクションで、ゆったりとデートを楽しんでいた。


「次、あの観覧車乗ろうよ」


岡田さんは遊園地の中央に位置する観覧車を指差して言った。


「いいよ、乗ろうか」


ほとんど待ち時間も無く乗ることができた。


「大谷君…」


「ど、どうしたの?」


天辺付近に近づいた時、岡田さんは潤んだ目で俺を見つめてくる。

すると不意に俺の胸に抱きついてきた。


「ちょ! 岡田さん、落ち着いて!」


「…めなの」


「え?」


何か言ったけど、小さい声だったので何と言ったのか聞き取れなかった。


「私、高い所ダメなの!」


「えー!? じゃあ何で観覧車乗ろうって言ったの?」


「ロマンチックかなと思って」


「……」


しょうがないので、しばらくそのままにさせてあげた。

降りる所に近づいても抱きついているので、引き剥がすのに苦労したけど、何とか離れてくれた。


「あ〜あ、高所恐怖症治ってると思ったのになー」


それたぶん治らないから!


「そしたらね大谷君にね観覧車で迫られるの」


「……」


「翔子怖くないか? こっちへおいでよって優しく言って抱き寄せるの」


「……」


「そしたら私は、みんなに見られちゃうよって言いながら、抱き寄せられて…」


「……」


「目と目があった私たちは、そっと近づいてキッスをするの、キャー!」


「……」


えーと…どこからツッコめば?


「とりあえず、キッスって恥ずかしいからヤメレ」


岡田さんの頭にチョップを炸裂する。


「痛ー!」


岡田さんは両手で頭を押さえてしゃがみこんでるけど、スカートでしゃがむからパンツ見えてるよ…。


「岡田さん、スカート…」


「え?」


「だから見えてる」


「キャ! 翔君のエッチ!」


あれ? なんか違和感があったけどなんだろ?


「えへへー、翔君って呼んじゃった」


違和感はそれかー!


「まぁどう呼んでもらってもいいけどさ」


「じゃあ、私のことは翔ちゃんって」


「却下だ、俺も翔だから変な感じだ」


「あははは、そうだったね、じゃあねー」


岡田さんは腕を組んで考え込んでしまった。確かに名前がカブってると呼び方って難しいよな。


「じゃあ、ハニー」「却下」


「翔子たん」「それはなんかヤバイ香りがする」


「しーちゃん」「恥ずい」


「しーたん」「恥ずい」


「うーん」「……」


「翔子ちゃん」「まぁそれぐらいならいいかな」


とは言っても人前では恥ずかしくて呼べないだろうけどね。




「そろそろ時間もあれだし、帰ろう」


「えー? まだいいでしょ?」


袖を掴んでの上目使いはやめてくれ、岡田さんは可愛い部類に含まれるので、それなりの破壊力があるから。


「で、でも、そろそろ暗くなるし、また今度にしよう」


「え! また今度があるの?」


「いや…あるかも知れないし、無いかも知れない」


「ハッキリしないなぁ、でもしょうがないか、翔君の周りには魅力的な人が多いもんね」


確かに個性的…いや魅力的な人はいっぱいいるけど…。付き合うとかだとちょっと違うかな。



「あの辺寄ってかない?」


待ち合わせた時と同じ駅に到着して、岡田さんが指差した場所は、煌びやかなホテル街だった。


「寄ってかない」


「意気地なし」


「いやいやいや、そんな関係じゃないから!」


「体から始まる恋っていうのも」


「あり得ないから!」


世間的にはあり得ないとは言い切れないけど、俺の場合はあり得ないと言い切れる自信がある。


「冗談だよ、私だって好きになってもらってからがいいもん」


「冗談に聞こえなかったけど、そのほうがいいよ」


「そだね、じゃバイバイ!」


岡田さんは胸の前で小さく手を振ると小走りに走り去った。


やっと強制的なデートイベントが終わると思うと、開放的な気分になって足取りも軽い。



「ただいまー」


「おかえりー、みんな集まってるよ」


やっぱり最初に顔を出したのは蘭ちゃんだった。


「へ? 集まってるってなんで?」


「?」


訳が分からずに食堂に入って行くと、全員勢揃いしていた。


「ど、どうしたんですか?」


とりあえず葉子さんに声をかけてみた。なんとなくおさって感じだから?


「誰がおさよ!」


何で分かったんだぁ!


「それでみんなとのデートを終えて、どうだったのよ?」


「あ、あの…」


「菜摘さんは論外だから黙ってなさい」


「……」


酷い! 菜摘さんは一応、葉子さんより年上なんだけど…。


「どうだったと聞かれても困るよ、それにみんなとデートする趣旨がまだ分かってないんだけど?」


「そ、それは、えーと…そうよ!

急に女の子たちに囲まれて翔君も慣れるのに大変だろうから、それぞれを早く理解してもらうためによ」


その、いかにも今考えました的なところを、ツッコんだらいけないんだろうな。


「…それに、あれよ、彼女選びになるかも知れないから」


何かブツブツ言っているけど、全然聞き取れない。


「え? なんですか?」


「な、なんでもないわよ! で、どうだったのよ」


顔を真っ赤にして命令してるのが可笑しいけど、命がなくなるので言わない。


「そうですねー、普段では見れないところとか見れて楽しかったですよ」


普段では見れないところって言った瞬間に、あきらさんに睨まれました。怖かったです。


「誰とのデートが一番楽しかったのぉ?」


京子さん、その爆弾は投下しないでください! 答えによっては命の灯が…。


「そ、それは…」


「それは?」


周囲の空気が止まったように感じたけど、気のせいかな?


「みんな、それぞれの良さがあったので、1人だけ選ぶなんて出来ないです」


「翔君…」

「翔…」

「おにいちゃん…」


「え? 俺なんか悪いこと言いました?」


訳が分からなかったので、京子さんに視線を向ける。


「優等生な答えね」


そう言われても、それが本当の答えだからどうしようも無いけど…。


「まぁ、翔だからな」


「そうね、翔君だし、しょうがないわね」


え? 何? なんで蔑みの目で見られてるの? 誰か教えてー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ