表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/29

Data.13 選べる『全力』は1つ

 観客たちの歓声を思う存分味わった後、俺は控室にワープした。

 控室はコロシアムに出場する選手をどこかに行かないように閉じ込めておく部屋だ。

 狭いし、あんまり長居したくないな。


 と、思っていたら唐突にメニュー画面が開いた。

 そこには『ルーキーコロシアム優勝おめでとうございます!』の文字。

 そして、『以下の三つから優勝賞品をお選びください!』とも書かれていた。


 どうやらこれを選ぶまでは帰れないシステムのようだ。

 優勝できるなんて思ってなかった人は大いに悩むだろうなぁ……。


「俺の場合はもう決まってるけど!」


 貰うのは【黒き進化のメダル】!

 これしかない!


『本当によろしいですか?』


「はい」


『あとで変更はできませんがよろしいですか?』


「はい」


『クレームなども受け付けておりませんが……』


 くどい!

 まあ、マジで運営にクレーム入れる人もいるんだろうなぁ。

 無心で「はい」を連打だ。


『黒き進化のメダルに決定いたしました! メダルはメダルボックスにお送りします! またのイベントへの参加、お待ちしております!』


「ふぅ……長かった」


 俺はまたワープし、多くのプレイヤーであふれたメインロビーに戻ってきた。

 これにてコロシアムでのお役目は完了だ。

 さて、メニューを開いてメダルの進化を……。


「あれ? あの人、さっきのルーキーコロシアムで優勝した人じゃない?」

「ほんとだ! クロガネのメダルを持った大型ルーキーだ!」

「うちのギルドに入ってくれないかなぁ……」

「ちょっと話しかけてみる?」


 おいおい、すっかり俺も有名人か。

 ギルドとかそういう鬱陶しい人間関係はごめんだ!


「クールな男は孤独に去るぜ……」


『クールという割には逃げる姿が小動物みたいだにょん』


「だって、人に追われるって結構怖いじゃん? あ、来た来た……逃げろ!」




 ● ● ● ● ● ● ●




「はぁはぁ……結構みんな本気で追ってくるんだなぁ……」


『そりゃクロガネのメダルを持った大型ルーキーだにょん。みんなギルドの戦力を増強したくて必死だにょん!』


「ゲーム内でまでベタベタなれ合いたい気持ちはわからないな」


『むしろゲーム内くらいでしかなれ合うことがないのかもしれないにょん』


「まあ、それが普通の時代か」


 街に逃げ場がなくなった俺は、フィールドに飛び出し加護の森まで来ていた。

 流石にここまでは追ってこないだろう。

 やっと本題に入れる。


「チャリン、メダルの進化はいつも通りメニュー画面でいいか?」


『そうだにょん! 進化メダルを手に入れたことでメダル生成のページに『全力進化』が増えてるはずだにょん!』


「全力進化……?」


 聞きなれない言葉だったが、ページを開いたら理解できた。


◆全力進化

 正統進化 = ストレイト・フル

 攻撃進化 = アタック・フル

 防御進化 = ディフェンス・フル

 機動進化 = アクティブ・フル

 邪道進化 = アナザー・フル


 ずらっと並んだ五つの進化。

 そして、最後にくっついている『フル』の文字。

 これが全力進化……!


「で、どうすればいいんだ……? 全力進化と呼ばれてる理由はわかったけど」


『五つの中から一つの進化を選ぶんだにょん! 全力進化は元の武器から大きく運用方法が変わってしまうこともあるにょん! よ~く考えて選ぶにょん!』


 選べる『全力』は一つ……か。

 正直に言うと……どれも気になる!


 攻撃・防御・機動の特化型……。

 そもそもゲームにおいて何かに特化するというのは基本だ。

 一つのことを極めないと、すべてにおいて中途半端な器用貧乏になってしまう。

 特に戦闘があるゲームで攻撃特化が腐ることはまずない。


 攻撃進化が安パイに思えるが、正統進化も見逃せない。

 今のコレクトソードの使用感を残せるのは大きい。

 こいつと出会ってまだそんなに日数も経っていないし、やっと剣を振るのにも慣れてきたところだ。

 あまり別物になってしまうのも悲しい気もする。


 そんな思いとは裏腹に、邪道進化でギャンブルに出たい気持ちもある。

 武器の王道『剣』に対する邪道とは何なのか……気になる!

 でも、選ぶのが一番怖い。

 その武器が本来持っている能力と違う力を得るということは、まさに器用貧乏を生みやすい状況だ。


 どうする、どうする……?

 俺の答えは……!


「これだ!」


 目を見開き、画面にタッチ。

 よし、操作ミスはない!

 これが俺の答えだ!


 初めてコレクトソードを手にした時のように、周囲の景色が暗転する。

 メダルスロットからメダルが飛び出し、俺の目の前を浮遊する。

 そして、メダルは光に包まれそのデザインを変えていく……!

 一本だった白銀の剣が、交差する二本になる!


『おめでとうございます! 【コレクトソード】は【コレクトソード・ジェミニ】に正統進化しました!』


 俺が選んだのは『正統進化』!

 やっぱり相棒として愛着が湧いてきたコレクトソードを大きく変化させるのは気が引けた。

 とはいえ、まさか剣が二本になるなんて思わなかった!

 一刀流と二刀流では動きがまったく違うが……。

 とにかく、効果を細かくチェックしていこう!


◆コレクトソード・ジェミニ

 特性:双子座の剣

 このメダルは『カストル』と『ポルクス』の2つのウェポンを内包する。

 ステータス、特殊効果ともに同一。

 ダメージ処理、効果処理は個別に行う。


 クロガネ/ウェポン

 属性:剣/斬撃/刺突/全力進化

 基礎攻撃力:100


 =特殊効果=


 ①メダルコレクト

 コレクトソードが受けた(スキル)メダルの効果を吸収し、元になったメダルを複製する。

 複製したメダルは『ソードスロット』にセットされる。

 『ソードスロット』にメダルが存在する時、この効果は発動しない。


 ②コレクトバースト

 『ソードスロット』にメダルが存在する時のみ発動可能。

 『ソードスロット』にセットされたメダルの効果を発動する。

 その際、基礎攻撃力2倍、斬撃属性を加える。

 この効果の発動後、『ソードスロット』にセットされたメダルと同じメダルを所持していない場合、『ソードスロット』にセットされたメダルを入手する。

 同じメダルを所持している場合、『ソードスロット』にセットされたメダル消滅はする。


「基礎攻撃力も上がってるし、コレクトバーストの威力倍増効果も強化されてる。何より二本になったことで同時に二つのスキルを吸収できるようになった!」


 あと、二本の剣のデザインは同じように見えて少し違う。

 左手に持つ『カストル』には赤いライン。

 右手に持つ『ポルクス』には青いライン。

 見慣れればすぐに見分けることが出来そうだ。


 特性に書かれてることは、要するに二つの剣は別として扱うということだ。

 どっちかが攻撃を受けすぎてボロボロになっても、それがもう一本に連動することはない。


 特殊効果も同じだ。

 『カストル』と『ポルクス』、それぞれ個別にメダルコレクトやコレクトバーストを発動できる。


「これはまさに正統じゃないか? 単純に強くなってる!」


『でも、その分扱いも難しくなってるにょん! 二刀流にはとにかく戦って慣れるにょん!』


「よーし! とりあえず森や草原で狩りをして、慣れてきたらいよいよ……」


『新天地だにょん!』


 PKが横行する環境。

 新たなメダルが待つ恐ろしくも魅力的な世界。

 俺も一歩踏み出す時が来た!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白いと思ったらブックマーク・評価・感想などなど頂けると励みになります!
ツギクルバナー
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ