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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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王都に向けて出発

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 出発の日、山賊小屋の前には、ボルゾイとおっさんの他、集落の要人が見送りに来てくれた。


 その他の住人とは、既に挨拶を澄ませてある。


 とはいえ、今生の別れではない。


 今回の旅だって、王都に行ってもう一人の勇者に会うという用事を済ませたら、すぐに帰途につくかもしれないのだ。


 それは集落の住人たちも同じ感覚だったらしく、涙の別れにはならず、皆、笑顔で送り出してくれた。


「父上、行ってまいります」


「うむ。見聞を広めてくるといい」


 ライカとボルゾイが、固く抱擁を交わす。


 傍目には感動的なシーンだが、俺は冷めた目でそれを見ていた。


(あの二人、昨日の夜も同じことをやっていたからな……)


『昨夜はリハーサルみたいなものですよ』


 山田がすかさずフォローを入れてくるが、一昨日の夜も同じことをしていたので、そんな言い訳は通用しない。


「覇王丸、娘のことをよろしく頼む」


「任せろ」


 俺は自信たっぷりに頷き、既に御者席に座っているハウンドを指差した。


「あいつが生きている限り、ライカの安全は保障する」


「俺は完全に盾なのか。……俺、どちらかと言うと、敵の攻撃を避けるタイプなんだけど」


「ライカに怪我をさせたら許さないからな」


 俺がわりと本気で念を押すと、ハウンドは「へいへい」と観念したように頷いた。


「それと、覇王丸。これを持って行くといい」


 そう言ってボルゾイが差し出したのは、掌サイズの麻袋だった。


 受け取ると、見た目よりもかなり重く、ジャリっという小銭特有の音がした。


「これは金か?」


「うむ。人間の町に行く以上、何かと必要になるだろう。我々は基本的に、集落だけですべて自給自足ができているから、たまに回復薬を買うくらいしか使い道がないのだ。遠慮せずに、持って行くといい」


「そうか。じゃ、ありがたく貰っておく。余ったら、回復薬を買って帰るよ」


「そうだな。そうしてくれ」


 最後に、俺とボルゾイは握手をして、そのままライカと同じように抱擁を交わした。


「それと……。おっさんも、馬車、ありがとうな」


 ボルゾイの隣でライカと別れの挨拶を交わしていたおっさんに声を掛けると、俺から素直に感謝されるとは思っていなかったのか、おっさんは面食らった顔をした。


「どうしたんだ? らしくないことを……」


「何だよ。俺だって、礼ぐらいちゃんと言うぞ」


 実際、馬車があるのと無いのとでは、行程が天と地ほども異なる。


 紛争地帯を大きく迂回しながら王都に向かった場合、徒歩なら十日以上かかる道のりを、馬車ならその半分で辿り着くのだ。


「馬車のおかげで、かなり楽ができそうだからな。ありがとう」


「いいってことよ。我ながら自信作なんだ。存分に使ってくれ」


 おっさんは照れ臭そうに鼻の頭を掻いた。


「俺も、もう少し若かったら、一緒についていきたいところなんだけどな……」


「男ばかりで馬車の中がむさ苦しくなるから、遠慮しておくよ」


「……お前って、本当に俺に対する気遣いが無さ過ぎるよな?」


 頼むから社交辞令を覚えてくれよ、と。


 情けない顔をするおっさんを尻目に、俺はライカと馬車の荷台に乗り込んだ。


「もう、出発していいのか?」


「いいぞ」


 御者席のハウンドに声をかけると、程なくして馬車はゆっくりと進みはじめる。


「無事に戻ってこいよ!」


 おっさんが最後まで心配そうに、両手を振りながら声を張り上げる。


 その隣では、ボルゾイや、集落の皆が手を振っている。


「父上、皆、行ってきます!」


 負けずに声を張り上げるライカの横で、俺も皆に手を振った。


 やはり、旅は笑顔で始まって、笑顔で終わる方がいい。


 こうして、俺たちはアルバレンティア王国の王都に向かって出発した。


 王都の名前はエードラムというらしい。

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