二人目の勇者の手がかり
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「手紙に書いてあるのは、それだけか?」
「そうだな。王都に出向けば、相応の褒賞を与えると書かれている」
「褒美が貰えるのか。じゃあ、行ってみるか」
「覇王丸さん!?」
一瞬で態度を急変させた俺を、ライカが信じられないものを見るような目で凝視する。
「本気ですか? ほ、褒賞と言っても、交換条件を出されるかもしれませんよ?」
「褒美は貰うけど、命令はきかない」
「王様相手にそんな理屈は……」
ライカは何としても俺を思いとどまらせたいようだ。
「そんなに心配するな」
「覇王丸さんの性格だと、きっと問題を起こします。捕まっちゃいますよ?」
「そっちの心配かよ」
だが、ある意味、俺のことを正しく理解しているとも言える。
そんなライカの不安などは露ほども知らない様子で、ボルゾイは勅書に書かれている最後の一文を読み上げた。
「ふむ。既にアルバレンティア王国には、剣聖と呼ばれる勇者がいるらしいな。その勇者が、覇王丸のことを二人目の勇者だと主張しているらしい」
「……何だと?」
『キタっ! これは無視できない情報ですね』
俺だけではなく、山田も即座に食いついてきた。
俺と同じように、地球からこちらの世界に渡った勇者は、全部で十人。
最初、俺と山田は、殆どの勇者が生まれ変わりを利用した「転生」でこちらの世界に渡ったと思い込んでいたが、つい最近、そうではないことが判明した。
山田の上司の「中間報告」によると、俺がオターネストを大混乱に陥れた一週間前の時点で、俺よりも勇者として人類に貢献している者が、最低でも二人はいるのだ。
転生したばかりの赤ん坊にそんなことできるはずがないので、その二人の勇者は、俺と同じように生きたまま「転移」によって世界を渡ったことになる。
『世界情勢のニュースを見ても、勇者の「ゆ」の字も出てこなかったんですが、ついに情報を掴みましたね。他の勇者と協力できるなら、絶対に協力した方がいいです』
会うだけでも会ってみましょう、と。
山田は完全に乗り気だ。
(行くなら、ライカを説得しないといけないな)
『そんなもの、適当に甘い言葉を囁いておけばいいんですよ』
(さっきはイチャイチャするなって言ったくせに……)
というか、わりと最低な発言だと思う。
俺はほんの少しだけ悩んだ結果、正直に打ち明けることにした。
「ライカ。俺は勇者のことが気になるから、王都に行ってみたい」
「……」
「決して褒美が欲しくて行くわけではない」
「……」
「ただ、貰える物があれば、それは貰う」
『なんで、わざわざ信用を下げる発言をするんですか!』
そんなの、それが正直な気持ちだからに決まっている。
ライカは仏頂面のまま黙って話を聞いていたが、やがて、諦めたようにため息をついた。
「分かりました。覇王丸さんがそう決めたのなら、私から言うことはないです」
「反対じゃないのか?」
「反対でしたけど、最終的に決めるのは覇王丸さんですから。覇王丸さんが決定したことに、我が儘で異を唱えるつもりはありません」
「ふーん」
思っていたよりも、俺のことを立ててくれているようだ。
「勿論、私もお供していいんですよね?」
「まあ、約束だからな」
一応、確認のためにボルゾイを一瞥すると、ボルゾイも「分かっている」とばかりに頷いてみせた。
「よし、決まりだ。明日、出発しよう」
「早すぎます! 着替えとか、食べ物とか、いろいろと用意することがありますから!」
せめて数日は待ってください、と。
ライカに異を唱えられたので、出発は三日後に延期になった。
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