表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
86/1664

王国からの勅書

毎日1000文字くらいを目標に続きを書いています。

なので、隔日で1000~2000文字くらいの更新になります。

 その日の夕方、ボルゾイの屋敷に来客があった。


 やって来たのは、集落の要人でもある森人の一人だ。


 ここ数日、獣人の集落では、森人の姿を見かける機会がめっきり減っている。


 それは、彼らが魔王軍に占領されていた生まれ故郷の掃除や修繕をするため、連日のように足を運んでいるからだ。


 森人の集落を前哨基地にしていた魔王軍は、撤退の際、集落を破壊こそしなかったものの、大量のゴミを残していった。


 備蓄していた食料や金品も消費、略奪され、集落全体が空き巣の被害に遭ったような有様だったのだ。


 ちなみに、俺も最初の二日間は力仕事を手伝いに足を運んだ。


「覇王丸殿、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」


 森人は俺を見るなり、両手で握手を求めてきた。


「お前、相変わらず堅苦しい喋り方なんだな」


「ははは。なかなか直りそうにありません」


 俺に指摘されて、森人はおどけるように笑った。多分、直すつもりは無いのだろう。


「それで用事って? 俺が聞いてもいい話なのか?」


「そうですね。むしろ覇王丸殿に関係のある話です」


 森人が言うには、今日、森人の集落に勅使を名乗る人間がやって来て、俺宛の手紙を置いていったらしい。


「こちらが、その手紙になります」


 そう言って、蝋封の施された封筒を差し出してくる。


「これは……アルバレンティア王国の勅書だな」


 蝋印の模様を見たボルゾイが、気難しげに顔をしかめた。


「私も本物を見るのは初めてだ。少々、面倒なことになったかもしれんな」


(そんなに面倒なのか?)


『勅というのは、国で一番偉い人の命令のことです』


「ということは、王様か」


 あまりピンとこないが、ご大層な代物らしい。


 開封して手紙を取り出すと、うねうねとした文字が書き連ねてあった。


「そういえば、俺、読み書きはできないんだった」


「そうなのかね?」


 ボルゾイは意外そうな顔をしたが、すぐに受け取った手紙の文面に目を走らせた。


「――――そうだな。いろいろと前口上が述べられているが、簡単に言うと、覇王丸のことを勇者だと認めるので、アルバレンティア王国軍に加わり、魔王軍と戦うように書かれている。まずは王都に挨拶に来るように、とのことだ」


「そんなの一方的です!」


 隣で聞いていたライカが、怒りの声を上げた。


「ふむ……。オターネストで起きたことが、事こまかに王国にも伝わっているようだが?」


「ライカを助けるついでに、オターネストの市長も助けたんだ。ハウンドが帰りがけに人間の町に送り届けたはずだ」


 情報が伝わっているということは、元市長は無事に報告することができたのだろう。


 ……生きていればよいのだが。


「なるほど」


 ボルゾイは納得した様子で、手紙に目を戻した。


「覇王丸さん、どうするんですか?」


 ライカが、俺の服の袖を引っ張りながら、心配そうに尋ねてくる。


「行かないよ。面倒くさいし、命令されるのは好きじゃない」


「ですよね!」


 俺が安心させるために頭を撫でてやると、ライカは嬉しそうに目を細めた。


 そのまま、獣の耳をさわさわと触っても、くすぐったそうにするだけで、最近は怒られることもない。


『イチャイチャするの、やめてもらえませんかねぇ?』


 ただ、ライカが何も言わなくなった代わりに、山田が口を出してくるようになった。


(別にイチャイチャはしていない)


『それを決めるのは覇王丸さんじゃなくて、僕なんですよねぇ』


(うざいな……。分かったよ。離せばいいんだろ)


 俺は心の中で悪態をつきながら、ライカの獣耳から手を離した。

評価、ブックマーク、感想などをいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ