中間報告(天使視点)
きりのよいところまで毎日投稿できるように頑張ります。
デバイスを操作して、最新のニュースをチェックする。
予想通り。たった一日で、オターネスト周辺の世界情勢には変化があった。
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『オターネストで大規模火災発生。鬼人の目撃情報も』
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『魔王軍に占領されたオターネストにおいて、大規模な火災が発生した。
火災が発生した場所は、港湾地区及び旧市庁舎を中心とする都市の東西南北の合計五ヶ所。
同時多発的に発生したため、魔王軍はオターネストの住人による大規模な脱走計画が実行されたものと見て、調査を進めている。ただし、火災の発生に前後して、オターネストの住民が暴動や脱走を企てたという事実は確認されていない。
なお、真偽不明ではあるが、この日、一部の魔王軍の兵士が鬼人を目撃したという情報がある。火災との関連性については不明』
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『東部戦線異状アリ』
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『港湾都市オターネストの奪還を掲げる人類軍と、それを迎え撃つ魔王軍により、長期に渡り繰り広げられていたアルバレンティア王国の東部戦線に大きな動きがあった。
これまでは、数で勝る人類軍が押しては、個の力で勝る魔王軍が盛り返すという一進一退の攻防を繰り広げていたのだが、本日未明、魔王軍がアルテール川まで戦線を引き下げ、防御に徹するような部隊配置をしていることが明らかになったのである。
人類軍は、現場の指揮官が更迭された可能性や、回復薬の備蓄が底を尽いた可能性を視野に入れつつ、攻勢を強める構えを見せている』
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『まだまだ若い者には負けん! ベテラン老剣士の快進撃☆キラッ』
→ 記事の詳細を読む。
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(……まあ、最後の記事はいいか)
相変わらず、感受性のメーターが悪い方向に振り切れている観測者がいるようだ。
(それはともかく……。魔王軍は早速戦線を後退させたのか)
正直、かなり迅速な対応だと言える。
恐らく、今までのような回復薬ありきの無茶な戦術を取れなくなったことが、最前線にも伝えられているのだろう。
(サルーキは失脚しなかったのか……?)
最新のニュースで報じられていない以上、その可能性はある。
ただ、昨日、オターネストで起きた数々の不祥事について、誰も責任を取らないということは、普通に考えてあり得ない。
そして、誰が責任を取るのかと言えば、やはりそこは総責任者であるサルーキ以外にはいないはずだ。
(まして、一対一でコテンパンに負けているからなぁ)
見るも無残に変形した顔面や、いつの間にか姿を消している自称鬼人の大男、そして、地下牢で監禁されていた牢番の証言などを総合的に判断すれば、サルーキが覇王丸に敗北したことは、誰の目にも明らかなはずだ。
少なくとも、求心力の低下は免れない。
(思ったよりも軍隊として統制が取れているのか、それとも水面下でごたごたした権力闘争が繰り広げられているのか……。まだ、何とも言えないな)
オターネスト担当の観測者が、まだ事態を正確に把握していないだけという線もある。
いずれにしても、明日、明後日になれば、情勢は更に変化するだろう。
(いやー、楽しみだなあ。覇王丸さんの守護天使になって良かった)
性格には難があるけれど。
乱暴だけど。ガサツだけど。やることなすこと無茶苦茶だけど。
その実、なかなか正義感もあるし、良い奴なのだ。
(喧嘩するほど仲が良いともいうし。お互いに遠慮が無いのはむしろ良いことだよな。向こうもきっと、何だかんだ僕のことを真面目で頼りになる相棒だと思ってくれているに違いない)
ふふふ……。
僕は上機嫌のまま、ついでにメールチェックをした。
受信ボックスには新着が一件。
上司から「中間報告」というタイトルのメールが届いていた。
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