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発想が完全に悪役

きりのよいところまで毎日投稿できるように頑張ります

 俺はオズを窓際に連れて行き、作戦の詳細を説明した。


「――――まあ、そんな感じで頼む。何度も言うけど、俺はお前を信用していない。少しでも遅いと感じたら、裏切ったと見做してサルーキを殺すからな」


 最後に念を押して、俺はオズの背中を叩く。


 オズは半ば自棄になった様子で壊れた窓枠に足を掛けて――――そこから跳躍した。


 俺の後ろで、ライカが驚いたような声を上げる。


 だが、オズの体は重力に従うことなく空中に停滞したかと思うと、次の瞬間、放たれた矢のような速度で港の方向に飛んで行った。


「たしかに飛翔魔法だな」


「びっくりしました……」


 ライカが俺の隣に並び、どんどん遠ざかるオズの姿を目で追いかけている。


 あっという間に、オズは最初の目標の上空に到達した。


 俺がオズに指示した内容は二つ。


 一つは、オターネストの東西南北で、無人の木造家屋に火をつけること。


 もう一つは、家屋に火をつけて回る前に、港に停泊している船の帆を燃やすことだ。


「あ。覇王丸さん、あれを見てください」


 突然、ライカが豆粒ほどの大きさになったオズを指差した。


「あそこです。何か光みたいなものが」


「どれだ?」


 ライカが指し示す方向に目を凝らすが、何も見えない。


「ゆっくりと船に落ちていきます。火種……ではないかと思うんですけど」


「ああ。あれは火種だな」


 ハウンドが後ろから近づいてきて、ライカの言葉を肯定した。


「炎の魔法の、初歩の初歩だ。言葉の通り、火種になる。料理とか、焚火とか、何かと便利な魔法だから、集落にも使える奴が何人かいるはずだ。さすがに、ああいう遠隔操作ができる奴はいないだろうけどな」


 ハウンドが説明を終えると同時に、船の帆からもくもくと煙が立ち上りはじめた。


「おお。本当だ。お前ら、目が良いんだな」


 俺も視力は良い方だが、二人はそれを上回るらしい。さすがは獣人と言うべきだろうか。


「でも、どうして最初に船の帆に火をつけさせたんですか?」


「目立つし、でも、すぐには火を消せないだろ?」


 要するに、非常事態が起きたことを魔王軍に知らせる狼煙のようなものだ。


 それに、船を燃やすことができれば、魔王軍の大幅な戦力ダウンにも繋がる。


 オズにとっても、そこは越えられない一線だったらしく、初めは頑なに拒んでいたのだが、最終的には一隻だけでよいという妥協案を飲んで、折れてくれた。


(これで、もう後には引けなくなったはずだ)


 港の上空にオズの姿は既になく、代わりに黒煙が風にたなびいている。


 俺としては、オズが直前で思い止まり、サルーキを見捨てる決断をしてしまうのが怖かったのだが、もう、その心配はないだろう。


 一度、罪を犯してしまえば、後はもうドミノ倒しだ。


 果たして、数分後にはオターネストのあちこちから、煙が立ち上りはじめた。


(やっぱり、もたついたら殺すと脅しておいて正解だったな)


『発想が完全に悪役なんですけど』


(気にするな)


 俺は山田を適当にあしらって、ハウンドを振り返った。


「階段にいる見張りの兵士に、火を消しに行くように伝えてくれ」


「は? 俺が言うのかよ?」


「お前以外に誰がいるんだよ」


 俺たちの中では、まだ内通者だと思われている(はずの)ハウンドしか適役がいない。


「急げ。この部屋に報告に来られたら面倒だぞ。階段にいる奴は怒鳴られてビビっているはずだから、サルーキが怒っているとか適当なことを言えば、簡単に追い払えるはずだ」


「くそっ。失敗しても知らねぇからな!」


 ハウンドは悪態をつきながらも、言われるままに、小走りで執務室を出て行った。

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