殴り込み
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元々、頑丈な造りではない木製の扉は、俺の前蹴りによって簡単に壊れた。
(よかった。うまく蹴れた)
薄い所を蹴って足が貫通してしまったら、この上もなくカッコ悪い姿を晒すところだったが、イメージした通りに蹴り飛ばすことができた。
扉がなくなって風穴の開いた店内から、ランプの灯りが差し込んでくる。
俺は中にいるはずの獣人が表に出てくる前に、ずかずかと店内に足を踏み入れた。
「な、覇王丸!?」
真っ先に聞こえてきたのは、聞き覚えのある声だった。
ハウンドだ。
店内には、案内役の男が言っていたとおり、十人ほどの獣人の姿があった。呑気にも晩飯を食べながら、俺の到着を待っていたようだ。
「ああん?」
よく見れば、ハウンドも食事中のようだった。人質のくせに、手足を拘束されていない。
「状況が飲み込めないんだけど」
「いや、それが……」
「まあ、どうでもいいや」
しどろもどろになりながらも懸命に事情を説明しようとするハウンドの言葉を遮って、俺は肩に担いだ獣人の男を床にぽいっと投げ捨てた。
「とりあえず、暴れる」
「は?」
「話は暴れてから聞く」
「はあ!?」
おいおいちょっと待て、と。
慌てて立ち上がりかけたハウンドを、隣に座っていた獣人の男が手で制した。
(……あいつがボスだな)
明らかに周囲の獣人とは雰囲気が異なる……というか、屋内なのに一人だけフードを目深に被り、素顔を隠している。口元の造形を見る限りでは、犬か狼の獣人のようだ。
「入口を塞げ。騒ぎを聞き付けて、兵士が来たら面倒なことになる」
「はい!」
一瞬、俺が命令されたのかと思ったが、そんなわけがなかった。
ボスらしき男の発言を受けて、近くに座っていた獣人が数人、即座に立ち上がり、俺が蹴り飛ばした扉を拾い上げると、入口に立て掛けるようにして蓋をした。
(てきぱきした動きだな)
まるで軍の兵士のように、動きの一つ一つに無駄が無い。チンピラ同然だった案内役の男と比べると、動きの質が違いすぎて、とても同じ集団の仲間とは思えなかった。
『玉石混淆ですね』
(寄せ集めの集団なんて、そんなものかもな)
よくよく考えれば、軍隊にだって新兵はいるのだ。悪党の集団にチンピラがいて、そいつが案内役の使い走りを任されたとしても、何ら不思議ではない。
それよりも――――
俺としては、統率の取れた動きをする二人に、出口を塞がれて、背後に立たれることの方が問題だ。不意打ちでもされたら、堪ったものではない。
「おい。扉を押さえるだけなら一人で十分だろ。二人でそこに立つんじゃねーよ」
「……」
「何だ? 耳が遠いのか? それなら、耳元で喋ってやろうか?」
当然のように無視をされたので、俺は二人に歩み寄り、目線を逸らしていた右側の男に手を伸ばした。
「っ!」
男は、俺の動きがあまりにも無造作だったので、逆に虚を衝かれたようだ。
咄嗟に避けようとする男の頭を鷲掴みにすると、俺は周囲に音が聞こえるくらい大きく息を吸い込んだ。
「っ!」
耳元で大声を出されると思った男が、俺の手を振りほどくのではなく、両耳に手を当てて、聴覚を遮断したところで、
「馬鹿だな、お前」
間髪いれずに、俺は自分の頭をハンマーのように振り下ろした。
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