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駆け引き

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です

「お前、何者だよ?」


 答えが返ってこないと知りつつも、俺は単刀直入に質問した。


 獣人の男はフード付きの外套に身を包んでいるため、外見だけでは軍の兵士であるかどうか分からない。


 ただ、軍の兵士であれば「話があるからついて来い」などという回りくどいやり方はしないような気がする。


「内密の話だ。その質問には、向こうに着いてから答える」


 はたして、獣人の男は俺の質問には答えず、逆に「ついて来るのか、来ないのか」と、俺に回答を迫ってきた。


『どうするんですか?』


(どうするもこうするもないだろ)


 仲間を人質に取られている以上、こちらに選択の余地は無い。


 ただ――――


 何もかも思惑通りに進むと思ったら、それは大間違いだ。


「一つ、条件がある」


「何だ?」


「一緒に行くのは俺だけだ。その条件が飲めないのであれば、こっちにも考えがある」


「ほう?」


 獣人の男は、興味深げに口角をつり上げた。


「どうするというんだ? いくら暗いとはいえ、こんな人目につく場所で大立ち回りでもするつもりか?」


「そんなことをしたら、俺まで捕まるだろ」


 喧嘩両成敗になっては、人間であることを隠している俺にとって、かなり分が悪い。


「そうじゃなくて。大声で助けを呼ぶ」


「は?」


「お前に仲間を連れ去られたって大騒ぎをする。こんな人目につく場所だから、すぐに兵士がやって来るだろうな?」


「む……」


 俺の言葉に、獣人の男がたじろぐのが分かった。


(勘が当たったかな?)


『勘ですか?』


(軍の関係者ではなさそうだなって思ったんだよ)


 軽くカマをかけてみたのだが、どうやら予感的中のようだ。


 しかも、目に見えて動揺してくれたおかげで、関係者ではないどころか、兵士を呼ばれたら逆に困る立場だということまで、なんとなく透けて見えた。


「お前、演技が下手くそだな」


「くっ……」


「で、どうするんだ? ついて行くのは俺だけでいいのか?」


 本当は、兵士がやって来たら困るのは俺たちも同じなのだが――――相手が冷静さを欠いている以上、ここは押しの一手だ。


「オルツ、兵士を呼んできてくれ。こいつを取り押さえて、誘拐犯として引き渡そう」


 俺は後ろを振り返り、犬や猫を追い払うようにしっしっと手を振った。


 勿論、兵士を呼んで来いというジェスチャーではない。


 兵士を呼びに行くふりをして、この場から離れろという意味の合図だ。


「ふむ、そうだな。了解した」


「ま、待て!」


 俺のジェスチャーを正しく理解した(と思われる)オルツが、ライカの手を引いてこの場を離れようとしたところで、獣人の男は白旗を上げた。

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