オース海峡と剣の岬
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この世界には、二つの大陸がある。
アルバレンティア王国がある小さな方の大陸は、オット大陸。
竜の巣がある大きな方の大陸は、トレンタ大陸だ。
現状、魔王軍はトレンタ大陸のほぼ全域――――竜の巣の周辺と一部の辺境を除いた大半を支配下に置いており、侵攻の魔の手をオット大陸に伸ばそうとしている。
「魔王軍がオット大陸に侵攻する、その最前線になっているのが、オターネストや大森林の西にある剣の岬だ。その沖合にある海峡を挟み、二つの大陸は最も接近している」
国王は、地理的な知識の乏しい俺にも理解できるように、詳細に説明してくれた。
海峡の名前はオース海峡。別名「竜の口」。
潮の流れと風の影響により、海戦では常に沖合にいる側が不利になるらしい。
「現在は周辺諸国からの友軍も含めた海上戦力を剣の岬に集中させることで、魔王軍の侵攻を食い止めている。搦め手でオターネストを奪われた際はどうなることかと思ったが、大森林の勇者殿の活躍もあり、現在は再び膠着状態に戻っている」
「もし、その海峡を船で渡ったら、トレンタ大陸に着くまでどれくらいかかる?」
「二日もかかるまい」
「そんなにか。たしかに最短距離だな」
つまり、オース海峡を攻略してしまえば、二日足らずでトレンタ大陸に上陸し、そこからは陸路(空路)で移動できるということだ。
陸路ならば、途中で適宜休憩を挟むことができるので、ワタシやオレサマの体力を調整しつつ、短期間で竜の巣に辿り着くことができる。
『しかも、竜に乗って移動した方が、船で移動するよりも速いですよね』
(竜はかなり高いところを飛ぶから、途中で魔王軍に見つかるリスクも低いしな)
正に、一石二鳥の黄金ルートだ。
「いいじゃないか。竜の巣……じゃなくて竜の口を攻略しようぜ」
最初、竜の顎を剣で貫くと言われた時は、何のことかさっぱり分からなかったが、剣の岬を出発して、竜の口を横断することを意味していたらしい。
「気軽に言ってくれるが、そう簡単なことではないぞ。なにしろ、正面突破での攻略は、あの魔王軍もできずにいるのだからな」
俺がノリノリになってオース海峡の攻略を提案すると、すぐさま国王が釘を刺してきた。
国王の説明によると、現状、オース海峡を攻略するには、人類側にはクリアしなければならない問題が二つあるらしい。
一つは、純粋な戦力の問題。
現在、剣の岬に集結している海上戦力だけでは、魔王軍の侵攻を食い止めることはできても、逆に攻勢を仕掛けて、防衛網を突破することは難しいのだという。
「それは、地形的な理由で攻撃する側が不利になるからか?」
「その通りだ。だからといって、今以上に剣の岬に戦力を集中させれば、その分、他の場所の護りが手薄になってしまう。我が国としては、過去に一度、オターネストを敵に奪われているだけに、そこは特に慎重にならざるを得ない。他の国もそれは同じはずだ」
たしかに、自国の護りを疎かにしてまで、友軍を派兵しようとする国は存在しないだろう。どの国も、自国の安全が第一のはずだ。
「更に言えば、スエービルランス王国の存在が、問題に拍車をかけている。人類側の連合から除外されたことで、彼の国の軍隊は、今や明確な不穏分子だ。交戦状態にある我が国は言うに及ばず、他の国も警戒を怠ることはできまい」
「面倒くさいな」
「こちらとしても、二正面作戦は避けたいというのが本音だ」
どうやら、オース海峡を攻略するためには、スエービルランス王国との停戦合意が、急務であるらしい。
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