竜の顎
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俺がフィオレと再会した時の経緯を説明すると、一応、全員が納得したような反応を返してくれた。
ただ、それは単に事情を把握したというだけで、やはり「魔人が仲間になる」という部分については、猜疑心を抱いているようだ。
「その女が、内通者として貴様に取り入ろうとしている可能性は無いのか?」
「無いと思う」
取りあえず、誰もが真っ先に考えるだろう疑惑をストレートにぶつけてきたリカルドに、俺もまたストレートな感想を口にした。
「再会したこと自体、本当に偶然だったからな。前々からそんなことを準備万端に考えていたとは思えないし、咄嗟に思い付いたとしても、独断で行動はしないだろ」
「毎度毎度、その場の思い付きで行動している貴様が言うな」
「……」
たった一言で、一刀両断にされてしまった。
「でも、咄嗟に思い付いた嘘にしては、内容が突拍子もなさすぎるだろ」
「それは……。まあ、たしかに、そうだな」
なにしろ、自分の兄が何者かに体を乗っ取られたという話だ。
普通に考えれば、信じるよりも先に、相手の正気を疑ってしまう。
だからこそ――――なのだ。
騙すつもりなら、誰にも信じてもらえないような嘘を、わざわざ吐くとは思えない。
「しかし……。実際に、そのようなことは可能なのか? 相手の体を乗っ取るなどと……」
「分からない。ただ、そう考えると辻褄が合うってだけの話だ」
「――――勇者の中に悪行を重ねている者がいることは、確かですな」
ゲンジロウ爺さんがフォローするように、俺とリカルドの会話に割って入ってきた。
「残念なことではありますが、勇者だからといって必ずしも善人であるとは限らぬのです」
「それは知っている」
「……」
知っているのは構わないが、真っ直ぐに俺の方を見ながら、頷かないでほしい。
無礼千万な話だ。
「いつかお前が王様になったら、俺が反乱を起こしてやるからな」
「それはやめろ」
本気で洒落にならない、と。
リカルドが苦々しい顔をしながら俺を睨み付けたところで、
「仮面の魔人の件については、覇王丸に任せればよい」
それまで静観していた国王が、脱線しかけた話の流れを強引に元に戻した。
「仮面の魔人の真意がどこにあろうと、ここで話を聞いただけの我々に適切な判断かできるとは思えん。ならば、覇王丸の判断に任せるべきだ」
「俺としては、ありがたいけど。それでいいのか?」
「お前の根拠の無い直感については、余はそれなりに信頼している。それとも、何かある度に船に乗ってオット大陸まで戻って来るか? 相談なら、いつでも乗ってやろう」
「結局は、そこなんだよな」
片道十日もかからなければ、フィオレを連れて王城に出向いても構わないのだ。
直接、フィオレと会って話をすれば、国王やリカルドも俺と同じような印象を抱くだろう。少なくとも、胡散臭さは感じないはずだ。
「もっと短期間で二つの大陸を行き来できればいいんだけど」
「そうだな……。ならば、その解決方法は一つしかないだろう」
「何か良い方法があるのか?」
「竜の顎を剣で貫けばよいのだ。――――口で言うほど、簡単な話ではないがな」
国王はまるで話の終着点が最初から見えていたかのように、そのように結論づけた。
俺は、国王の「竜の顎を剣で貫く」という表現が比喩であることに気づかず、きちんとした説明を受けるまで、獣王の剣で顎を串刺しにされたナルヒェンの姿を想像していた。
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