降伏勧告
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「それって、勝負はついたけど、戦争は終わっていないってことか?」
「そういうことになる」
俺が口を挟むと、ウォートランド侯爵は困ったような表情で頷いた。
「そもそも、今回はスエービルランス王国から正式な宣戦布告が無かった。反乱の声明の中に隣国の協力を得るとあるので、それが宣戦布告の代わりだと言えなくもないが……」
ウォートランド侯爵の説明に、重鎮と思われる貴族の中から「卑怯だ」「許せない」などと、口々に非難の声が上がる。
「こっちから降伏勧告するか、攻め込んでやったらどうだ?」
「降伏勧告をする方向で動いている。だが、逆侵攻までは考えていない」
俺の提案に対して、今度は国王が口を開いた。
「我が軍がスエービルランス王国軍を圧倒し、国境線の向こうに押し返すことができたのは、敵が補給の無い不利な条件で戦っていたからだ。自国領内に戻ってしまえば、これまでと同じようにはいかぬ」
「こっちの被害も大きくなるってことか」
「そもそも、今は人類が一丸となって魔王軍と相対さなければならない時だ。逆侵攻は、周辺諸国からの信用を失う愚行でしかない」
要するに、アルバレンティア王国としては、あくまで「必要な範囲でやり返しただけ」という被害者の立場を維持するつもりらしい。
他国から友軍を派兵してもらうためには、その方が何かと都合が良いのだろう。
「じゃあ、スエービルランス王国の方は、他の国から総スカンになりそうだな?」
「既にそのような評価を下されている。今後、彼の国が人類側の連合に名を連ねることはないだろう。信用を失うというのは、そういうことだ」
同情の余地は無い、と。
国王は冷めた表情で言い切った。
「捕虜になった兵士の間でも、此度の侵攻には懐疑的な見方をしている者が多いようです。部隊を率いていた将校からは、彼の国の王は乱心している……という証言を得ました」
「乱心か……」
話を引き継いだウォートランド侯爵の報告に、国王は思案顔になって沈黙した。
あながちあり得ない話ではないとでも、考えているのだろうか。
それくらい、今回の反乱に便乗したスエービルランス王国の侵攻は、人類側の結束にヒビを入れ、魔王軍に付け入る隙を与えてしまう行動だったようだ。
「まあ、よいだろう。噂の真偽も含めて、引き続き情報収集に努めるように」
「御意に」
国王の指示にウォートランド侯爵が頷いて、ひとまずその話は終わった。
その後も、幾つかの懸案事項が話し合われ、多くのことが決定した。
それらをまとめると、次のようになる。
*
『スエービルランス王国について』
・降伏勧告をする。賠償は求めるが、停戦を最優先とするため、譲歩してもよい。
・停戦の合意の際、神聖教会に仲裁を依頼する。
・ピスキスに神聖教会の使者が滞在しているため、彼らが帰国する際に親書を渡す。
*
『国内の事後処理について』
・シャードを反乱の首謀者として、国内に手配書を出す。発見者には褒賞金を支払い、逃走を手助けした者は厳罰に処す。ただし、側近と共に、既にスエービルランス王国に亡命している可能性が高い。
・アヴィド侯爵については、侯爵位と領地を剥奪する。ただし、子息に跡目を譲った場合は、その子息に伯爵位を与え、都市伯としてノトスヴァイナの統治を任せる。
・当面の間、南部地域の統括は皇太子のリカルドが代行する。その補佐官として、ピスキスの執政官であるリゼットを任命する。
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『ロザリアの処遇について』
・廃嫡とし、王位継承権をはじめとする王族としての権利の大半を喪失させる。
・ただし、大森林の勇者の婚約者として、今後も王城への出入りは自由とする。また、王城に滞在している間は客人としての待遇を保証する。監視兼世話役としてジョアンを付ける。
・当面は謹慎期間とし、外部の人間との接見を禁じる。
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