王女奪還作戦 終
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
「覇王丸さん、お疲れさまでした」
「ヒナは最初からこうなると信じていました!」
「ああ。二人とも、出迎えありがとうな」
そう言って、俺がしゃがみ込んで「さあこい」と言わんばかりに両腕を広げると、二人とも特に躊躇する様子もなく、俺に抱きついてきた。
ヒナはともかく、ライカはひと目を気にして恥ずかしがると思っていたが、今回は妙に素直だ。
「覇王丸さん……。今回も怪我をしたんですか?」
服に付いた血の染みを見て、ライカが心配そうに尋ねてくる。
「まあ、たった二人で殴り込んだからな。多少の怪我は仕方がないよ。――――でも、二人が持たせてくれた回復薬のおかげで、今回はかなり安全だったぞ」
実際には、俺は回復薬を飲まなかったのだが、二人を安心させるために嘘を吐いた。
元々、俺は怪我の治りが早い方なのだが、獣王と戦ったあたりから、その傾向が更に顕著になっている。首にナイフを突き立てられた時の傷も、腕に刺さった矢を引き抜いた時の傷も、数時間が経過した今では、微かに傷跡が見える程度にまで回復している。
これが覚醒の扉を開いた状態になると、怪我をした次の瞬間には既に完治しているという、反則としか言いようのないパワーアップをしてしまうのだから、俺を化け物呼ばわりする敵の気持ちも分かろうというものだ。
「余った回復薬は、全部、向こうに置いてきちゃったけど問題なかったか?」
「問題ありません。回復薬なら、いくらでも作れますから。私と……あ、いえ。ヒナちゃんが頑張ってくれると思います」
「お任せください! ヒナがたくさん作ります!」
うっかり口を滑らせてしまったライカの失言に気づいた様子もなく、ヒナは頼りにされたと勘違いをして、元気一杯に快諾した。
(どうしたものかな……)
ライカが治癒魔法を習得したことは、今はまだ俺とライカ、二人だけの秘密にしているが、いずれは仲間にも打ち明けなければいけない問題だ。
できれば、魔法に詳しい専門家にも相談したいところではある。
(専門家といったらジョアンか……。もしくは、ロザリアに口利きしてもらって、神聖教会の法王に相談するのもありか?)
一度、ヒナの里帰りを兼ねて、神聖教会の聖地キドゥーシュプカを再び訪れるのもよいかもしれない。
俺があれこれ思案を巡らせていると、ライカが何かに気が付いたように顔を上げた。
「あの、覇王丸さん」
「何だ?」
「今、気づいたんですけど、ハウンドとゲンジロウお爺さんはどうしたんですか?」
「ああ。そのことか」
俺は遠い目をして空を見上げた。
「あの二人は……帰ってこないんだ」
「え? ど、どういうことですか?」
「最後の言葉は、たしか「心配無用だ。ワシを誰だと思っておる」と「さっさと王都へ行きやがれ」だったかな」
「あ、あの、覇王丸さん……。失礼ですけど、勝ったんですよね?」
逃げてきたわけじゃありませんよね、と。
不安そうな眼差しで尋ねてくるライカに、俺は「当然だろ」と返答して、南部侯爵の屋敷で起きたことを簡単に説明した。
「どうして、そういう紛らわしい言い方をするんですか!」
そして、怒られてしまった。
アルバレンティア王国の未来を左右する運命の一日は、こうして幕を降ろした。
評価、ブックマーク、感想などをもらえると嬉しいです。




