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飛び降りて逃げるのは無理そう

きりのよいところまで毎日投稿頑張ります。

今回も少なめですみません。

もう少しで第一章のボス戦です。

 果たして、ハウンドの作戦はうまくいった。


 警備中の兵士たちは元市長の姿を見るや何事かと目を丸くしたが、両手を縛られているのに加えて、ハウンドが最後尾で見張っていることに気が付くと、深くは追求してこなかった。


素通りさせてくれる兵士もいたくらいだ。


「実は、オターネストの都市構造について説明するため、何度か執務室に呼び出されたことがあるんだ。私から市民の一部解放を直訴したこともある」


 見張りのいない場所で、元市長が小声で教えてくれた。


 一方、俺は途中ですれ違った兵士の数と配置を、頭に叩き込んでいた。


 やはり、魔王軍は人員の多くを東部戦線に送り出しているらしく、人手が足りていない印象だ。


俺たちにとっては敵陣の本丸であるこの建物も、魔王軍にとっては最も安全な場所に分類されるのだろう。


せいぜい、階段や通路の曲がり角に見張りが立っている程度――――有り体に言えば、警備は手薄だった。


 もっとも、人口密度が低いというだけで、オターネスト全体で見れば都市の防衛戦に必要な数百ないし千人規模の兵力は残っているはずだが。


(でもまあ、これくらい警備が薄ければ強行突破もできそうだな)


 そんなことを考えながら、階段を上って最上階に移動する。


外から見た時は石造りの建物に見えたが、実際は木造との組み合わせらしく、天井には木の梁が通されている。階段も木製だ。


『総石造りなんて、小さい建物でなければ無理ですよ。この建物でそれをやったら、二階より上が崩落します』


(それなら、全部木造で作ればいいのにな?)


『要塞としての役割もあると考えた場合、木造では耐久力が低すぎます。火にも弱いですし。石造りと木造のハイブリッドは合理的だと思いますよ』


(ふーん)


 俺は窓から見える街並みに目をやった。


大通りに面した建物は石造りのものが多いが、ちらほらと木造建築も見受けられる。


逆に裏通りや街外れの方は、木造建築の方が多いようだ。


「ここは三階……四階か? 結構、高いな」


「一応、庁舎なので、一般的な建物よりも天井が高い造りになっているんだ。その分、実際の階数よりも高く感じるのだろう」


 元市長の言うとおり、俺たちが歩いている通路の天井は高く、俺が手を伸ばしてもまったく届かないほどだ。


おかげで開放感はあるが、その分、眼下の地面は遠い。


「いざとなったら、窓から飛び降りて逃げるのもありかなと思っていたんだけど……。これは無理そうだな」


「骨折で済めばマシな方じゃないか?」


 下手すりゃ死ぬぞ、と。


 ハウンドも窓の外を一瞥して、首を横に振った。

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