いざサルーキの執務室へ
目標の10万文字をクリアしたので、一安心。
きりのよいところまでは毎日少しずつでも投稿します。
「なんだ。まだ独房に入れていなかったのか」
戻ってきた獣人の兵士は、俺を見るなり呆れたように呟いた。
「だが、ちょうど良かった。サルーキ様がお呼びだ。至急――――
そこまで言いかけて、ようやく、俺たちの隣に立っている元市長の存在に気づいたらしい。
「おいっ! なぜ、そいつが外に出ているんだ。牢番はどうした!」
「ああ、こいつか? 独房で何やら怪しいことをしていたもんだから、今、室内を調べているところだよ」
「何だと?」
しれっと嘘をついたハウンドの言葉に、兵士は双眸を険しくつり上げる。
そのまま乱暴な足取りで歩み寄り、
「おいっ! 独房の扉が壊れて――――むぐっ!」
詰問口調で振り返った鼻先に、ハウンドの右ストレートが直撃。
「いきなり何を――――うぐっ!」
前屈みになった後頭部に、振り下ろした俺の肘が炸裂。
「うぅ……あいたっ!」
蹲ったその脇腹に、元市長の蹴りがパシッと命中した。なぜ、参戦したのか。
後は牢番の時と同じように、一切の抵抗を許さず、殴る蹴るの袋叩きコースだ。
「こいつ、サルーキが呼んでるって言っていたよな?」
「ああ。呼ばれているんだから、コソコソと移動する必要は無くなったわけだ」
失神した兵士を武装解除して独房に放り込んだ後、ハウンドは拘束用の紐を半分に切って、俺と元市長の二人を縛られているように偽装した。
「二人とも縛られていれば、なんとか誤魔化せるだろ。面倒くせぇから、もうこれでいこう」
「でも、半分に切ったせいで、お前が掴むところが無いぞ」
「どうせ場所が分からないから、これでいいんだよ。俺はお前らを見張るふりをして後ろから付いていく。あんたは先頭を歩いて、サルーキのいる場所まで案内してくれ」
「分かった」
ハウンドの指示に、元市長が神妙に頷く。
「覇王丸は真ん中だ。一応、俺の視界を遮らないように、少し横にずれて歩いてくれ」
「了解」
続いて、俺も頷く。
「後は勢いで乗り切るぞ」
「さすが。息をするように嘘をつける男は違うな」
「うるせぇっ! さっさと行くぞ!」
俺はわりと本気で褒めたのだが、ハウンドは馬鹿にされたと感じたらしい。
結構な強さで尻を蹴っ飛ばされた。
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