牢番を撃退する
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「さて。それじゃあ、そいつを独房に入れるとするか」
牢番が俺たちに背を向けて、地下通路を進んでいく。
サルーキの執務室は同じ建物内にあるらしいので、兵士がすぐに戻ってくる可能性もある。
ハウンドが「やるか?」と目線で合図を送ってきたが、俺は首を横に振った。
(動くのはライカの姿を確認してからだ)
それを察したのかどうなのか。ハウンドは納得したように頷くと、前を歩く牢番に話しかけた。
「そういえば、さっき、此処には誰もいないって言っていたよな? 誰もいないのに、なんで牢番なんかやっているんだ?」
「殆ど誰もいないと言ったんだ。誰が無人の牢屋の番などするものか」
牢番は立ち止まると、すぐ横の独房を指差した。
「とはいえ、今、此処にいるのは一人だけだ」
覗いてみろと(ハウンドが)言われたので、俺はハウンドを押しのけて格子状になっている監視用の小窓を覗き込んだ。
そこには――――
薄汚れた服を着て、
焦燥した表情を浮かべて、
粗末なベッドに腰掛ける――――中年の男がいた。
「知らねぇおっさんじゃねぇか!」
「なんだ、貴様!? 誰が勝手な行動を……あ」
怒鳴った直後、牢番の表情が強張った。どうやら、俺にちょっかいを出してはいけないと、兵士から言い含められていたことを思い出したらしい。
俺がハウンドに目線で合図を送るのと、牢番が助けを請うようにハウンドを振り返るのは、ほぼ同時だった。
「おい。あんた、何とか――――ぐむっ!
ハウンドの右ストレートが、牢番の顔面に直撃。
「な、何を――――ひぐっ!
鼻先を抑えて前屈みになった牢番の後頭部に、俺の振り下ろした肘が炸裂。
「うぅ……ぐふっげふっ」
その場に蹲った牢番を、俺とハウンドは失神するまで蹴り続けた。
『うわぁ……』
山田もドン引きするほどの壮絶なリンチだが、すぐに復活されても困るので、死なない程度に痛めつけるのは重要なことだ。まあ、敵だから死んでも構わないのだが。
「さてと。こいつ、どうする?」
「適当な独房にぶち込んでおく」
「了解。一応、手足は縛っておいた方がいいな。ついでに猿ぐつわもしておくか」
言うが早いか、ハウンドは予備の紐を取り出し、てきぱきと牢番を拘束しはじめる。
本当に手際の良い奴だ。
「しかし、どうするよ? てっきり、ここにライカがいると思ったんだが」
「そうだな。――――他にも牢屋はあるかな?」
「でかい町だから、探せばあるだろうけど……。でも、牢屋に入れるなら此処だろ。わざわざ遠い場所に監禁する理由がねぇよ」
「それもそうか。……こいつ、気絶させないで尋問すればよかったな」
今更ながら、俺が暴力をふるうべきではなかった(拷問すべきだった)と後悔していると、不意に横から声を掛けられた。
「君たちは何者だ?」
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