作戦会議(前編)
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「――――というわけで、こいつが俺たちを裏切ることは絶対に無い。比喩でも何でもなく、命が懸かっているからな」
俺がざっくりと経緯を説明すると、なぜか全員がドン引きしていた。
『これが普通の反応ですよね』
(納得いかねぇ)
どうせ、ハウンドがどんなに「もう裏切らない」と言ったところで、その言葉を疑問視する自称慎重派が出てくるに決まっているのだ。
だから、俺は先手を打っただけなのに。
『自称慎重派が出てきてから、毒キノコを食べさせればよかったんじゃないですか?』
(そんなことをすれば、今度は自称人権派が出てくるに決まってるだろ)
今、一番避けたいのは、集落の中で意見が割れてしまうことだ。
三日以内という明確なタイムリミットが存在する以上、議論の停滞はそれだけで致命傷になりかねない。
「裏切り者に汚名返上の機会を与えているんだから、これは温情のある措置だろ。それに、一番危険なのは、こいつと一緒に敵陣に乗り込む俺なんだから、これくらいの保険はかけさせろ」
「お、おう……。それはまあ……たしかに、そうだな」
おっさんが気圧されながらも頷いたことで、他の住人たちもそれに同調した。
「そんなことより、二人で乗り込むっていうのは本気なのか?」
「本気だ。正攻法じゃ、どうやっても勝ち目は無い」
俺たちは、総合的な戦力では、数でも質でも魔王軍に劣っている。
ここにいる全員で殴り込んだとしても、返り討ちに遭って全滅するだけだろう。
一方で、魔王軍はライカを人質に取ったことで、勝利を確信しているはずだ。
後は三日後の戦後処理を残すのみ。
俺たちが逆に攻め込んでくるとは、夢にも思っていないだろう。
つまり、俺たちにとって「敵の油断」は、唯一無二の付け込む隙なのだ。
この優位だけは、手放すわけにはいかない。
「そこで、こいつの出番ってわけだ」
俺は、憮然とした表情で突っ立っているハウンドの肩に手を乗せた。
「魔王軍に寝返ったこいつだけは、敵地に堂々と戻ることができる。俺は捕まったふりをして一緒に潜り込むつもりだ」
「待てよ。俺は人間の首を持ってこいと言われたんだぜ? 生きたまま連れて帰ったら、その場で二人とも処刑されちまうんじゃねーか?」
「そこは俺に考えがある」
ハウンドの疑問を受けて、俺は作戦の内容を説明した。
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