急転直下
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翌朝、俺が目を覚ました時、家にはボルゾイもライカもいなかった。
寝過ごしたわけではない。そもそも、寝過ごしたのであれば、ライカが起こしてくれるはずだ。
(……誰もいないのか?)
なんだか、嫌な予感がする。
良くないことが起きていると、胸の奥で警鐘が鳴っている。
俺は急いで身支度を整えると、家の外に出た。
だが――――
いつものありふれた光景は、そこには存在しなかった。
非現実的な静寂と、圧倒的な違和感。
穏やかな朝の生活感をそのままに、集落からは、人の姿だけがなくなっていた。
「どうなってんだ?」
焦る気持ちを抑えつつ、集落の中に人影を探す。
そして、集落の出口まで歩いたところで、俺は金属同士が激しくぶつかりあう音を聞いた。
*
探していた人影は、集落から少し離れた場所にいた。
だが、様子がおかしい。
たくさんの見知った顔が、まったく見知らぬ集団と向かい合っている。
見当違いの方向から進んできた俺は、茂みの陰からそれを覗き見る形になった。
(ボルゾイ……ライカ……山賊のおっさんもいるな)
だが、先頭のボルゾイをはじめ、見知った顔は、一様に表情が険しい。
一方、対峙する集団は、全員が獣の血が濃い獣人だった。
(……もしかして、魔王軍か?)
『その可能性は、かなり高そうですね』
俺の予想に、山田も同調した。ちなみに、山田はさっき出勤してきたばかりだ。
『魔王軍に帰属する獣人は、獣の血が濃い者ばかりだと、ボルゾイさんが言っていましたし、恐らく、間違いないでしょう。それに、あそこを見てください』
山田が指示する場所に目をやると、そこにはハウンドの姿があった。
――――だが、立ち位置がおかしい。
(あいつ……。なんで、ボルゾイと向かい合って立ってるんだ?)
『彼が魔王軍を先導したから――――そう考えるのが自然でしょうね』
(は? なんのために?)
『裏切ったってことですよ』
山田の声が、淡々と事実を告げた。
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