表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
209/1653

一件落着

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

長かった第二章ももうすぐ終わりです。

 ライカの獣耳を近くで見た時の、神聖教会の面々の反応は、やはり「動揺」だった。


「こいつは俺の従者じゃなくて仲間なんだ。正体を隠していたことについては謝るけど、別に問題ないだろう? 公式見解はもう訂正するわけだから」


 周囲から視線の集中砲火を浴びているライカの緊張をほぐすため、俺はその頭をぽんぽんと撫でた。


「まあ、返答しだいでは、俺たち全員と、後ろの竜が敵に回ることになるわけだが」


「覇王丸さん、そういう言い方は駄目です」


「恫喝はやめんか」


 すぐさま、ライカとゲンジロウ爺さんから教育的指導を受けた。


 だが、穏便に話を進めようとする二人の努力は、


「甘いですね! ヒナたちと戦って、勝てると思っているんですか!?」


 この場で一番の裏切り者が、昨日までお世話になっていた人達に啖呵を切ったことで水泡に帰した。


 法王は大きくため息をつくと、静かに俺を睨みつけた。怖い。


「覇王丸さん、ヒナに悪影響を与えるような言動は慎んでくださいね」


「はい」


 これはもう全面的に俺が悪いので、謝罪せざるを得ない。


「ライカさん……だったかしら?」


「は、はい!」


「貴方が素性を隠していたにことについて、どうこう言うつもりはありません。そうせざるを得ない状況を作り出したのは、私たちですから。貴方には怖い思いをさせてしまいましたね」


「いえ、そんな……」


 ライカはすっかり恐縮した様子で、ぶんぶんと首を横に振る。


 それを見て、法王は寂しそうに微笑んだ。


「これからは、もう、そんなことが起こらないようにしたいものです。……いえ。私たちが、そうなるように変えていかなければいけないのですね」


 何かを決意するように呟くと、法王はこの場にいる修道女や衛兵たちに、一連の襲撃事件の全容を打ち明けた。


 所々で俺も補足説明を加えつつ、枢機卿であるブレーグの正体が魔人であったことも、その手引きによって今回の襲撃が引き起こされたことも、すべてを詳らかにした。


 真実を知らされた者のショックは大きく、修道女の中には座り込んで泣き出してしまう者もいた。


 それほど、ブレーグに成りすましていた魔人の演技力が完璧だったということだ。


「顔はともかく、声で気づかなかったのか?」


「今にして思えば……という話なのですが、枢機卿は帰国してからしばらくの間、ショックで言葉を口にできない状態が続いたのです」


「徹底しているな」


 恐ろしいほどの念の入れようだ。


 たしかにそこまですれば、久しぶりに発した声が聞き慣れないものだったとしても、周囲はかすれ声くらいにしか思わないだろう。


 少なくとも、いきなり偽者ではないかと疑う者はいないはずだ。


「ともかく、これで顧問団を襲った魔王軍が獣人だったという証言も、信憑性がなくなったと言えるでしょう。故に、その事件を根拠とする公式見解も見直さなくてはなりません。何もかもが魔王軍の思いどおりにはならないと、私たちの言葉を広く知らしめる必要があります」


 法王の言葉に、多くの者が頷いた。


 砦の竜は、魔人の目的を「神聖教会を破壊する」ことだと言っていたが、どうやら、それは失敗に終わったようだ。被害は大きくても、神聖教会はまだ負けていない。


「――――これでよろしいですか? 公式見解は修正した後、大陸中の教会に通達いたします。形式的な手続きのため、数日のお時間をいただきますが」


「それで構わない。俺もまだやり残したことがあるから、もうしばらくはここに滞在する」


 取りあえずは、麓の村や砦で待機している連中が不安がっているだろうから、急いで戻って事の顛末を知らせなくてはいけない。


 竜の背中に乗って行けばあっという間なのだが、全財産を積んだ荷馬車を放置するわけにはいかないので、ハックとヤマダに乗って帰る必要がある。


(大森林に来るかどうか、獣人から返事も聞かないといけないのか……。やることが多いな。今日はもう風呂に入って休みたい)


『いいじゃないですか。ラスボスを不意打ちの膝蹴りで倒したんですから。普通は、あそこでもう一戦ですよ』


(……それもそうだな)


 竜とはまさかの和平交渉が成立するし、大がかりな襲撃だったわりには、ザコ戦くらいしかまともな戦闘をしていない。


「よし、もう一頑張りするか。日が暮れるまでに、できることはやっておこう」


 俺が声を掛けると、ライカやゲンジロウ爺さん、ヒナだけではなく、なぜか法王や衛兵たちまで返事をした。


 そして、その日は本当に日が暮れるまで、全員が休む暇なく奔走した。

評価、ブックマーク、感想などをもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ