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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
208/1651

これは悪女の素質がある

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「お前ら……。竜に乗ってきたのか?」


「はい! ヒナがお願いしました!」


 悪びれた様子もなく、ヒナが上機嫌で頷く。


「はい、じゃないだろ。おい、お前。なんで、二人を乗せてきたんだよ?」


「オマエ、ヒナ、イウコトキケ、イッタ」


 竜も竜で、まったく悪びれた様子が無い。


「それは、たしかに言ったけど。落ちたらどうするつもりだったんだよ」


「あの……覇王丸さん。それが、背中は殆ど無風だったんです」


 ライカが竜とヒナの擁護をするように、間に割って入った。


「無風? そんなことが可能なのか?」


「カノウ。ワタシ、カゼノマホウ、トクイ。オマエトハチガウ」


「だから、一言、多いんだよ」


 俺は仏頂面になって、ライカとヒナを睨み付けた。


「吹き飛ばされなくたって、滑り落ちることだってあるんだから、あんまり無茶なことはするんじゃない」


『無茶するなとか、どの口が言うんですか?』


(うるさい)


 自己責任で無茶をするなら話は別だが、ライカとヒナについてはそうではない。


 それぞれ、保護者であるボルゾイと法王から「よろしく頼む」と託されているのだから、俺には二人を説教する権利があり、義務があるのだ。


「言うことを聞けないなら、もう一緒に旅はできないからな」


 俺が二人にとっての死刑宣告を口にすると、二人の顔色が一気に青ざめた。


「は、覇王丸さん……。ごめ、ごめんなさい……。もう、無茶なことはしません!」


「覇王丸様! ヒナが悪い子でした! 許してください!」


 ライカは動揺を隠せずに、髪が地面に着くほど頭を下げ、ヒナは有無を言わさず強引に俺の脚にしがみ付いた。このへんは、性格の違いが出て面白い。


「竜さんが……! 竜さんが悪いんです!」


「エ?」


 突然、ヒナに責任を押し付けられた竜は、驚いたようにこちらを見た。


「獣人さんが危ないって言ったのに、竜さんが大丈夫だって言ったから……!」


「チガウ。ワタシ、ワルクナイ。ヒナ、ドウシテモノリタイ、イッタ」


「そういえば、背中に乗りたがっていたな」


「う……うわぁぁぁぁん! ごめんなさぁぁぁぃぃい!」


 追い詰められたヒナは、今度はガチ泣きしはじめた。


(強かなのか、素直なのか……)


『これは悪女の素質がありますねぇ』


 山田が何か怖いことを言っているが、聞こえないふりをする。


 取りあえず、この場を丸く収めるために、俺は二人の頭を撫でた。


「泣くほどのことじゃないだろ。反省してくれればいいんだ。要は、俺が心配だから危ないことをするのは止めてくれって話だから」


「はい。心配をかけてごめんなさい」


「覇王丸様! ごめんなさい! もう危ないことはしません!」


 ライカとヒナはもう一度、深々と頭を下げて、この件はこれで終わりになった。


「――――でも、覇王丸さんも、いつも危ないことをしていますよね?」


「うん?」


 と思ったら、ライカの反撃が始まった。


「もしかして、私は心配なんかしていないとでも思っているんですか?」


「いや、それは……」


 他の誰よりも無茶をしている自覚はあるので、返す言葉が無い。


 俺が言い淀んでいると、ライカはため息をついた。


「いえ、いいんです。覇王丸さんが無茶をするのは、皆のためなんだって、ちゃんと分かっていますから。……でも、できれば危ない目には遭ってほしくないです。もっと、自分の命を大事にしてください」


「……分かったよ。なるべく気を付ける」


 つい先程、ロザリアに言われたのと同じことを、ライカにも言われてしまった。


 二人から同じことを言われたのでは、もう頷くしかないだろう。


「なるほど。……覇王丸に言うことを聞かせるには、ライカ嬢ちゃんに頼めばよいのか」


「それはやめろ」


 物珍しそうな視線をこちらに向けながらとんでもないことを呟くゲンジロウ爺さんに、俺は釘を刺した。


 そんなことをされたら、ライカが裏で俺を操る影の番長になってしまう。


「この話はもう終わりだ。竜がいるせいで、他の連中が近寄ってこられない」


 見れば、俺たちをぐるりと取り囲むように、神聖教会の面々が遠巻きに並んでいる。


 その中には、法王とロザリアの姿もあった。


「ちゃんと説明しないとな。……ライカ、耳はそのままで平気か?」


 俺が頭上の獣耳を指さしながら尋ねると、ライカはすぐに頷いた。


「大丈夫です。……もう、自分の正体を偽るのは止めようと思うんです」


「そっか。……まあ、安心しろよ。何かあったら、俺がぶちキレる前に、ゲンジロウ爺さんが代理で暴れてくれるから」


「まあ……そうだの。おぬしに暴れさせると人死にが出るからの」


 ゲンジロウ爺さんが達観したように呟く。


「ヒナもぶちキレます!」


「こら。そういう言葉を使ってはいかん」


「ふふ……」


 ヒナを窘めるゲンジロウ爺さんを眺めながら、ライカは優しく微笑んだ。


「なんだか、楽しいですね?」


「そうか?」


「はい。なんだか家族みたいです」


「家族か。……そうだな」


 俺とライカとヒナが兄妹で、ゲンジロウ爺さんが祖父さん。


(ロザリアは……姉ちゃんか? ハウンドはペットの黒猫だな)


『酷い』


(まあ、魔王を倒したら、皆でそうやって暮らすのもいいかもな)


 俺は二匹の竜におとなしくしているように厳命すると、事の顛末を説明するため、法王とロザリアのもとに向かった。

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