ほら、やっぱり終わっていた
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結論から言えば、俺の予想どおり、大聖堂の外に出た時点で既に勝敗は決していた。
上空では砦の竜が優雅に旋回し、地上ではゲンジロウ爺さんが翼を傷めた竜を前に威風堂々と立ちはだかっている。
戦闘が行われていないところを見ると、既に竜は敗北を認めたようだ。本当に一人で勝ってしまった。
「おお、覇王丸か。遅かったな」
俺が傍まで駆け付けると、ゲンジロウ爺さんはさして怒った様子もなく、既に竜との決着がついたことを報告した。
「ロザリア様は無事かの?」
「無事だ。内通者の魔人も捕まえた」
俺が、ブレーグの正体が魔人だったことを伝えると、ゲンジロウ爺さんは驚いたように目を見開いた。
「枢機卿が? ……そうか。おぬし、どうやって正体を見破った?」
「不意打ちで顔面に膝蹴りを食らわせた」
「……」
「顔に泥を塗って、土の魔法で変装していたんだけど……」
「いや、分かった。もういい」
みなまで言ってくれるなと、ゲンジロウ爺さんは俺の言葉を遮った。
「結果オーライだろ?」
「そういうことにしておこう。……おい。貴様らに指示を出した仮面の魔人は、ブレーグ枢機卿で間違いないのか?」
ゲンジロウ爺さんが一人で降伏させたという竜に問いかけると、竜は短く鳴いた。
「オレサマ、ナマエ、シラナイ。カメンノマジン、オンナ」
「「女ぁ?」」
俺とゲンジロウ爺さんは、二人同時に素っ頓狂な声を上げた。
「女って何だよ」
裸にして確かめたわけではないが、ブレーグは男だったはずだ。土の魔法では、顔を偽ることはできても、声を偽ることはできない。
「砦の獣人は、匂いや声じゃ性別は分からないって言っていたぞ」
「ユビ、ミル。オンナ、スグワカル」
「指……だと?」
俺は思わず自分の掌を見た。
(一理あるような気がする……)
個人差はあるだろうが、たしかに男と女の手は、見た目からして全然違うような気がする。
「ソウイウトコロ、ミナイ。ダカラ、オマエタチ、モテナイ」
「モテないのは関係ねーだろ!」
なぜ、こいつらは一言多いのだろうか。
まさか、人外にそんな駄目出しをされるとは、夢にも思わなかった。この上も無い屈辱だ。
「ふむ……。どういうことだ? 仮面の魔人は別人だということか?」
俺の隣では、ゲンジロウ爺さんが我関せずと考察をしている。
「あのな。関係ないふりをしているけど、お前たちって言われているんだからな? 爺さんもモテない男に含まれるんだぞ?」
「構わんよ。ワシ、妻帯者だもの」
「ぐぬ……」
男としての度量の大きさを見せつけられてしまったような気がする。
「おぬしだって、ライカ嬢ちゃんやヒナ嬢ちゃんにモテとるだろうに」
「ライカはともかく、ヒナはどうなんだ?」
十歳の女児を侍らせて「俺はモテる」と言えるのだろうか? 逆に惨めな気がする。
そんなことを考えていると、頭上を旋回する竜が催促するように鳴き声を上げたので、俺は大きく手を振った。
「ん?」
今、気が付いたが、竜の背中に誰かが乗っている。
俺が呆然と突っ立っていると、上空の竜は大きく軌道を変えて、地上に降り立った。
「覇王丸様!」
竜の背中に乗っていたヒナとライカが、滑り落ちるように地面に着地した。
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