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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
205/1646

殴って魔法を強制的に解除させる

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「お。いきなり大当たりだったみたいだな」


 俺は亀裂の生じたブレーグの顔に手を伸ばし、薄皮を剥ぐように欠片を強引にむしり取った。


 その下にあったものは、見慣れたブレーグの顔とはまったく異なる別人の顔と、頬に浮かび上がる紋様のような黒い痣。


「刺青みたいな痣は、たしか魔人の特徴だったよな?」


「は、はい……」


 呆けたような顔で頷く法王。


 俺はアホ兄弟に命じて、ブレーグの両手両足を拘束させた。


「あと、通路で倒れている連中の手足も一人残らず縛っておいてくれ」


「かしこまり!」


「さすが兄貴だ。人使いが荒いぜ!」


 居酒屋の店員みたいな返事をして、アホ兄弟がテキパキと動き回る。


 神聖教会に就職が決まり、ようやく社会人としての自覚が芽生えたのかもしれない。


 俺はブレーグの顔から剥ぎ取った欠片を、ロザリアや法王に見えるように握り潰した。


「顔に張り付いていたのは土だな。これを顔に塗って、土の魔法で整形していたんだろう」


 要するに、泥パックで特殊メイクを施して、ブレーグに成りすましていたというわけだ。


 そのように考えると、熱心に庭園の管理をしていたのは、なりすまし用の土を入手しやすくするためだったのかもしれないし、あるいは農夫の格好をして敷地内に潜り込んだ仲間に情報を伝達するためだったのかもしれない。


 獣人に対する差別を助長するような態度を取っていたのも、獣人が人類と敵対するように仕向けるためだったのかもしれないし、単純に土の匂いで正体がバレないように鼻の利く獣人を遠ざけるためだったのかもしれない。


 すべて推測であり、すべて状況証拠だ。


 言い逃れのできない決定的な証拠を白日の下にさらけ出すには、ぶん殴って魔法を強制的に解除する必要があった。


『間違ったらゴメンで枢機卿を殴れる人なんて、普通はいませんからね……』


(油断はしていただろうな)


 それに、自分はボロを出さないぞ、という自信もあったのだろう。


 なにせ、何年もの間、誰にも怪しまれることなく、顧問団の生き残りを演じていたのだから。


「そ、それでは、本物の枢機卿は……?」


 藁にもすがるような不安げな表情で、法王が俺に尋ねる。


「それは知らないけど。多分、顧問団が襲撃された時に、殺されちゃったんじゃないか?」


「そんな……」


 法王は全身の力が抜けた様子で、その場にへたり込んだ。


 数名の修道女が、慌てて法王に駆け寄って、その体を支える。


「なぜ……。ブレーグ枢機卿が魔人だと分かったのですか?」


「確証は無かった。だから、可能性がある奴を片っ端からぶん殴ることにしたんだ。枢機卿を最初に殴った理由は、こいつだけ治癒魔法を使えない原因がはっきりしていたから」


 そもそも、魔王軍が神聖教会を目の敵にしている理由は、治癒魔法の習得方法を、事実上、神聖教会が秘匿しているからだ。魔王軍は独自に回復薬を調達することもできなければ、治癒魔法の使い手を育成することもできない。


 つまり、治癒魔法を使えるかどうかは、魔王軍に帰属する内通者――――魔人であるかどうかを判別する有効な方法になり得るのだ。


 そんな状況下で、まるでそれを見越していたかのように、一人だけ「治癒魔法を使えなくても仕方がない」事情があるブレーグの存在は、俺には異質に思えた。


「理由はそれだけだな」


「それでは、もし、枢機卿が内通者ではなかったら、どうしたのですか?」


「そんなの簡単な話だよ」


 俺は室内を見回して、いつの間にか修道女たちの後方に移動し、俺から隠れるように集団で固まっている神聖教会の要人たちに目を付けた。


「そこのあんたたち。誰でもいいから、ちょっと見てほしいものがあるんだけど」


「絶対に嫌ですな!」


「私は治癒の奇跡が使えますので!」


 俺の予想を上回る拒否反応が返ってきた。


「内通者が一人とは限らないじゃん? ここは一つ、殴られて身の潔白を証明するのがいいと思うんだ」


「治癒の奇跡が使えるなら、魔人の可能性はないはずでは!?」


「こうしてはいられない! 早く負傷者のところに!」


 神聖教会の要人たちは押し合いへし合い、避難訓練の悪いお手本のように我先にと部屋から出て行った。


(余程、殴られるのが嫌なんだな)


『冗談ではなく、本当に殴られるって分かっていますからね。そりゃ逃げますよ』


(まあいいや。多分、内通者は一人だろうし)


 それに、殴られたくないという動機はともかくとして、普段は偉そうにしている組織の重鎮が身を粉にして救助活動に当たれば、それを見た衛兵たちの士気も上がることだろう。

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