無事を確認する
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
隔日で更新できるように頑張ります。
扉の前に立ち、軽く押してみる。
侵入者の攻撃で扉は既にボロボロになっていたが、内側に家具でバリケードが作られているらしく、押してもビクともしなかった。
「おーい。中に誰かいるかー?」
仕方がないので、室内に向かって大声で呼びかける。
ややあって、聞き覚えのある声が返ってきた。
「この扉は俺たちが死守する! 絶対にだ!」
「兄貴の声に似ているような気がするが、俺たちは騙されないぞ! 立ち去れ!」
どう考えても、アホ兄弟の声だった。
「少数の護衛って、こいつらかよ……」
俺は深々とため息をついて、頭を抱えた。
いない方がマシとは言わないが、よりにもよって……という表現は使わざるを得ない。
ロザリアはもう少し、人を見る目、男を見る目を養うべきだろう。
「おーい。俺だー! お前ら、ここを開けろー!」
「誰がその手に乗るものか! 俺たちを甘く見るな!」
「お前が兄貴だという証拠を見せろ!」
「面倒くさいな……」
状況を考えれば用心深いのは良いことだが、今は時間が惜しい。
「お前が兄貴だというのなら、俺たちの名前を答えてみろ!」
「答えられるものならな!」
「アホネンとアホカスだろ」
俺があっさり答えると、扉の向こうでアホ兄弟は沈黙した。
「ま、まさか本物の兄貴なのか?」
「待て。一問で結論を出すのは早計だ。問題は全部で三十問ある」
「つきあってられるか!」
俺は乱暴に扉を蹴り付けた。
「お前ら、マジでぶっ飛ばすぞ! 痛い目に遭いたくなかったら、さっさとここを開けろ!」
「ひぃ!? この傍若無人さは……!」
「兄貴だ! 間違いない!」
極めて失礼な発言の後、室内でドタバタと物を移動させる音がして、やがて扉が開いた。
扉の向こうには、驚いたような顔で立ち尽くすアホ兄弟の姿。
「あ、兄貴ぃぃぃぃぃ!」
「お、俺たち、頑張りましたぁぁぁぁぁぁ!」
「うるさい」
涙を流しながら抱きついてくるアホ兄弟の二人を、俺は冷静に前蹴りとうっちゃりで迎撃した。
「酷いぜ!」
「でも、それでこそ兄貴だ!」
訳の分からない理由で俺を再評価するアホ兄弟を放置して、俺は部屋の中に足を踏み入れる。
そこには、神聖教会の重鎮たちと、多くの修道女、そして法王とロザリアの姿があった。
「ロザリア、無事か?」
「は、はい。覇王丸様、その怪我は……?」
ロザリアは俺がやって来たことよりも、まず俺の怪我に目が行ったようだ。小走りで俺に歩み寄ると、心配そうに尋ねてきた。
「通路にいた連中と戦った時の傷だな」
「戦ったのですか? 複数の敵がいたはずですが」
「倒した。あの程度の連中、楽勝だったぞ」
乱戦でなければ、多分、楽勝だったはずだ。
『乱戦だったので、満身創痍ですけどね』
山田が横から茶々を入れてくるが、まあ、実際にそんな感じだ。
炎の魔法を受けた両手は赤く爛れ、掌、首筋、肩口は短剣でざっくりと斬られている。
「あ、あの!」
その時、遠巻きに見ていた修道女の中から、数名がこちらに駆け寄ってきた。
「わ、私、治癒の奇跡を使えます!」
「私もです! 治療をさせてください!」
「それは助かる」
勿論、俺に断る理由はなかった。
評価、ブックマーク、感想などをもらえると嬉しいです。




