一対七の戦闘(前編)
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一直線に伸びた通路。
その両側にいくつもの扉が並んでいるが、神聖教会の要人が避難した部屋がどれなのかは、すぐに分かった。
(右奥の部屋か)
理由は一目瞭然。その扉の前に、田舎臭い農夫の格好をした集団が群がっていたからだ。
扉の前に三人。中間に二人。俺から近い位置に二人。全部で七人。
最も近くにいる二人は、俺の存在に気が付いたようだ。つい先程、仲間が向かったはずの大聖堂から現れた俺を見て、警戒感を露にして身構えた。
「何だ、貴様は!」
「何やってんだ! ここは危険だ! 早く避難しろ!」
「は?」
「でないと――――
俺は手に持ったメイスを無造作に振り上げた。
「俺に殺されるぞ」
ほんの一瞬。
俺が正しく状況を把握していないのではないかと疑ってしまった侵入者の一人は、ななめ下から振り上げられた鈍器の一撃により、下アゴを粉砕されて意識を失った。
「貴様、何者だ――――ひぐっ!?」
「名前なんかどうでもいいだろ」
近くにいたもう一人も前口上を最後まで言うことができず、股間を蹴り上げられてからの、メイスによる一撃で戦闘不能になった。
「あと五人」
近くにいた二人は不意打ちで倒すことができたが、さすがに同じ手は通用しないだろう。
(奥にいる三人が駆け付ける前に、手前の二人を倒しておきたいところだな……)
幸か不幸か、通路はかなり広い。武器を気兼ねなく振り回すことはできるが、裏を返せば、それだけ包囲されやすいということでもある。
さすがに一対五では、多勢に無勢で押し負けてしまうだろう。
俺が二人をあっという間に倒してしまったことで、侵入者の警戒度は一気に最大値まで跳ね上がったようだ。
中間位置にいた二人の侵入者は、俺が間合いを詰める前に行動を起こした。
「止まれ!」
「貴様、何者だ!」
一人が短剣を構えて前に飛び出し、もう一人は両手を前に差し出す。
次の瞬間、差し出された両手から炎の塊が飛び出した。
(魔法か!)
一瞬、大聖堂内の焦げ付いた匂いがフラッシュバックする。
同時に、怒りの感情も膨れ上がった。
「てめぇがやったのかっ!」
俺は飛来する炎の塊を避けようとも、防ごうともせず、ただ、炎の後ろから追撃を仕掛けようとしている侵入者を狙って、メイスを振り下ろした。
その結果――――まさか俺が炎を完全に無視するとは思っていなかった侵入者は急停止し、飛んでくる炎はメイスが直撃して飛散した。
「あぢ……熱っ!」
振り下ろした右腕が炎に焼かれて、ジクジクと膿むような痛みを訴えてくる。
だが、こんなものは火傷だ。回復薬で治すことができる。
俺は左腕を伸ばし、手が届く距離で立ち止まってしまった侵入者の首を鷲掴みにした。
そして、指に力を込め、そのまま宙吊りにする。
「くはっ……かっ!」
頸動脈を絞められた侵入者は目を白黒させ、ろくな抵抗もできずに気を失った。
動かなくなった侵入者の後頭部を石壁に叩きつけて、トドメを刺す。
「あと四人」
横を見ると、先程の魔法使いが二発目の魔法を繰り出そうとしていたので、俺は気絶した侵入者の体を盾にして、そのまま突進した。
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