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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
199/1634

キドゥーシュプカ防衛戦 その三

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 多くの非戦闘員の避難場所となっているはずの大聖堂に、人影は無かった。


 厳密には、立っている人影は一つも無かった。


 足を踏み入れた瞬間に、焦げ付くような異臭が鼻にまとわりつく。


 床には、重なり合うようにして倒れている修道女や、血を流して動けなくなっている兵士の姿があった。あちこちから呻き声が聞こえてくる。


 正に阿鼻叫喚だが、声が聞こえるということは、まだ多くの生存者がいるということだ。


 俺は部屋の隅に、恐怖のあまり膝を抱えて震えている衛兵を見つけて、歩み寄った。


「おい、何があった!?」


「わ、分からない……。庭園に竜が現れて、大混乱になって、皆をここに避難させていたら、突然、炎が燃え上がって……。人が……たくさん焼けて……」


「炎? それは魔法か?」


「分からない……」


「お前、どこか怪我をしているのか?」


 俺の質問に、衛兵はぶんぶんと首を左右に振る。


「なら、しっかりしろ!」


 俺は衛兵の胸倉を掴んで、強引に立ち上がらせた。


「な、何を……!」


「ここにはまだ、生きている奴がいるだろ! 座り込んでいる暇があったら、回復薬を持ってくるなり、治癒魔法を使える奴を探すなり、できることがあるだろうが!」


「っ!」


 衛兵は呆然としていたが、すぐにその瞳に意思が宿りはじめた。


「分かったら、一人でも多くの人を助けろ!」


「は、はい!」


 俺に喝を入れられて、衛兵が一度は打ちのめされた勇気を奮い立たせた時――――


 大聖堂の奥から、何者かが現れた。


     *


 大聖堂の奥から現れた人影は二つ。いずれも農夫の格好をしている。


 立ち上がった衛兵が「ひっ」と声を上げるのと同時に、俺は振りかぶったメイスを槍投げの要領で投擲していた。


「ぐぁっ!」


 竜の皮膚をも引き裂いた一撃が、農夫の一人の頭に直撃する。


「何だ!?」


 もう一人の農夫が驚いて声を上げた時には、俺はもう走り出していた。


「貴様、何者――――


「死ね!」


 敵に口上など述べさせない。


 とっさに防御態勢を取った農夫のガードの上から、ラリアット気味の打撃をぶちかます。


 その場に薙ぎ倒されて背中と後頭部を打ちつけた農夫は、苦痛に声を上げる……間もなく、頭をサッカーボールのように蹴られて意識を失った。


『ただのパンチやキックが必殺技の威力なのは、ズルいですよね。……この人たちが敵か味方か、確かめなくてよかったんですか?』


(味方ってつまり、ボランティアの手伝いだろ? そんな連中が勝手に大聖堂の奥に行くわけがないし、仮に行ったとしても、わざわざ危険な場所に戻ってくるはずがない)


 故に戻ってきた二人組は、農夫の格好をした侵入者だ。


「首が変な方向に曲がったな。ははっ」


『そこで笑うと、サイコパスだと思われますよ』


 山田が自制を促してくるが、抑えられそうにない。


 怒りやら、焦りやら、様々な感情が渦巻いて、俺は奇妙な興奮状態に陥っていた。


 多分、アドレナリンが出まくっているのではないだろうか。


 俺は床に転がったメイスを拾い上げると、衛兵を振り返った。


「こいつらは敵だから、生きていたら拘束しといてくれ」


「は、はい! 畏まりました!」


「じゃあ、俺は侵入者をぶちのめしてくるから、また後でな」


「ご、ご武運を!」


 敬礼する衛兵に軽く手を振って、俺は大聖堂の奥の通路に踏み込んだ。

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