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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
195/1634

仮面の魔人

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「カメン、ツケタ、マジン」


「仮面の魔人だそうです」


 ヒナが竜の言葉を翻訳すると、獣人たちは絶句した。


 当然だろう。仮面を付けた魔人が竜に命令できる立場だったということは、獣人の集落が竜に襲われたことも、単なる偶然では片付けられなくなってくるからだ。


「仮面の魔人……だと? ……どういうことだ?」


 動揺を悟られまいとしたのか、オルツが顔を手で隠したまま、わなわなと身震いをした。


「その魔人と、我々に砦を襲うように誘導した仮面の人物は同一人物なのか?」


「シラナイ。デモ、メイレイ、サレタ。マジン、マチガイナイ」


 竜は人間の言葉を理解できるので、オルツの質問に直接回答する。勿論、竜の言葉をオルツが理解するには、ヒナの通訳が必要になるが。


「ジュウオウ、メイレイシタ。ヒガシノサンミャク、イケ。マジンノメイレイ、キケ」


 竜に、守秘義務や義理立ての意識を期待する方がおかしいのかもしれないが、それにしても驚くほどポロポロと機密事項が飛び出してくる。


「獣王って、獣人の王様の獣王か?」


「ソウ。ワタシ、ジュウオウ、マケタ。ワタシ、ツヨイモノ、メイレイ、シタガウ」


 どうやら、目の前の竜は獣王に敗北したことで、魔王軍に服従を誓ったらしい。


 すべてではないだろうが、竜の中にはそういう習性を持つ個体がいるようだ。


「服従を誓ったのに、秘密をペラペラと話してもいいのか?」


「ハナスナ、イワレテイナイ」


「そりゃそうだろうよ」


 そもそも、仮面の魔人は竜に一方的に命令するだけで、竜が話せることも、こんなにも口の軽い奴だということも、知らなかったはずだ。翻訳の奇跡の力により、竜を経由して情報が筒抜けになるとは夢にも思っていないだろう。


「それじゃあ、お前、降伏したんだから、これからは俺と爺さんの言うことに従えよ」


「シタガウ。ゴハン、クレルナラ、シタガウ」


「現金だな」


 当然のごとく見返りを要求された。


 だが、飯の世話をするだけで竜を従えることができるのなら、飯代を差し引いてもお釣りがくるというものだ。


「裏切ったりしないだろうな?」


「リュウオウサマ、オコッタラ、ワタシ、ウラギル。オコラレナケレバ、ウラギラナイ」


「お前には重要な情報は教えられないな」


 本当に、次から次へと聞き捨てならない情報が飛び出してくる。


 そして、馬鹿正直に裏切るとか言わないでほしい。


「竜王って、お前たちの王様か?」


「ソウ。リュウオウサマ、イチバンツヨイ。マオウヨリ、ツヨイ」


「ドヤ顔するな」


 竜の表情など分からないが、鼻息が急に荒くなったので、多分、ドヤ顔をしているのだろう。


「竜王のことは、とりあえず、横に置いておくとして……。結局のところ、仮面の魔人は何が目的だったんだ?」


 竜に獣人の集落を襲わせて、今度は獣人に砦を襲わせて――――獣人と神聖教会の対立を煽るにしても、随分と回りくどいことをしているような気がする。


「シンセイキョウカイ、ハカイスル、イッテタ」


「神聖教会を壊すと言っています」


「なんだと!?」


 俺とゲンジロウ爺さんが驚いて顔を見合わせている間に、ヒナの通訳を聞いた強硬派の男が、憤慨して声を荒げた。相変わらず、怒りの沸点が低い奴だ。


「どういうことだ! 説明しろ!」


「シンセイキョウカイ、イマ、ケイビガテウス。ダカラ、ハカイスル、イッテタ」


「――――おい、ちょっと待て」


 その時、ゲンジロウ爺さんが強めの口調で、会話に割って入った。


「なぜ、大聖堂の警備が手薄だと知っている?」


「ん? ああ、そうか」


 言われてみれば、そのとおりだ。


 今日、俺たちがここに来ることが決まったのは、昨日の会談の中でのこと。


 そして、ヒナの護衛が三十人ほど同行しているため、その分、大聖堂の警備は少しだけ手薄になっている。


 だが、そのことを知っているのは、昨日の会談に参加したメンバーだけのはずだ。


「つまり、神聖教会の中に魔人が紛れ込んでいるってことか?」


「分からん。魔人ではなく単なる内通者かもしれん。いや、それよりも――――」


 ゲンジロウ爺さんは険しい顔をして、竜を睨み付けた。


「おい。まさかとは思うが……もう一匹の竜はどこに行った?」


「あ!」


 俺も、最悪の可能性に気が付いた。


 ゲンジロウ爺さんの口調は、半ば確信していることを、あえて確かめているようだ。


 そして、竜の返答は――――


「シンセイキョウカイ、ハカイスル。ワタシタチ、フタテ、ワカレタ」


 予想したとおり、最悪なものだった。

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