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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
193/1635

翻訳の奇跡

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「イタイ……ヤメテ……!」


 一瞬、自分の耳を疑ってしまった。


 そんな言葉が、俺の耳に飛び込んできたのだ。


 俺は思わず攻撃の手を止めて、キョロキョロと周囲を見渡す。


 前方に目をやると、ゲンジロウ爺さんも驚愕に目を見開いて立ち尽くしていた。


「ヤメテ……モウヤメテ……」


 また、聞こえた。


 どう考えても、竜が喋っているように思える。


「爺さん! 聞こえたか?」


「聞こえた」


 ゲンジロウ爺さんはいまだに狐につままれたような顔をしている。


「お前たちも聞こえたか?」


 ゲンジロウ爺さんの背後にいるオルツにも同じ質問をすると、オルツは顔をしかめた。


「何のことだ? それよりも、なぜ、攻撃をしない?」


「聞こえていないのか?」


 どうやら、先程の声が聞こえたのは、俺とゲンジロウ爺さんだけらしい。


「おい、さっきの声はお前が喋ったのか?」


 俺が竜の背中をぺちぺちと叩きながら尋ねると、竜は小さく鳴いた。


「ワタシ……ハナシタ。コウゲキ、ヤメテ……モウ、コウフクスル」


(間違いない)


 やはり、竜が人間の言葉を話しているようだ。


 ――――いや、そうじゃない。


 人間の言葉を話しているのなら、獣人たちにも声が聞こえているはずだ。


「おい、どういうことだ? 本当に聞こえていないのか?」


 俺は竜の体から飛び降りて、オルツに歩み寄った。


「竜が話していただろう?」


「話して? 私にはただ鳴いているようにしか聞こえないが」


 どうやら、獣人たちには竜が鳴いているように聞こえて、俺とゲンジロウ爺さんには竜が話しているように聞こえるらしい。


『……もしかすると、奇跡の力かもしれません』


 山田が、そんなことを呟いた。


『今、覇王丸さんは、この世界の言葉を話しているわけじゃありません。翻訳の奇跡の力で、日本語と同じようにこの世界の言葉を理解できているだけなんです』


(そう言えばそうだったな)


 たしかに、この世界に転移した直後は、山賊のおっさんの話している言葉がまったく理解できなかった。その後、すぐに翻訳の奇跡を使ったため、今の今まで忘れていた。


『つまり、竜に人間の言葉を理解するだけの知能があって、人間の言葉を話せないだけの理由で意思疎通ができないのであれば、それは翻訳の奇跡でカバーできてしまうんです』


(それはつまり……翻訳の奇跡の力なんじゃないか?)


『だから、そう言ってるでしょ!』


(やっぱりそうか。そうじゃないかと思っていたんだ)


 俺は山田の手柄を横取りして、ゲンジロウ爺さんに竜と会話ができる謎の種明かしをした。


 ついでに、獣人にも理解できるかどうか別として、ざっくりと同じ説明をする。


「ふむ。なるほど、翻訳の奇跡か。言われてみれば、たしかに使っていたの」


「ゆ、勇者というのは、そんなことまでできてしまうのか?」


 ゲンジロウ爺さんは納得して頷き、オルツは戸惑いながらも「勇者は竜と話せる」という結論の部分だけは理解してくれた。


「それで、竜はもう攻撃しないと言っているのだろうか?」


「降伏するって言っているな。そうだろ?」


 俺が尋ねると、竜は小さく鳴いた。


「ワタシ、コウフクシタ。モウ、コウゲキシナイ」


「攻撃しないってさ」


 日本語しか話せない俺が、竜の言葉を翻訳して伝えると、獣人たちは狐に化かされたような顔をしながらも、身の安全が保障されたことで、安心してその場に座り込んだ。

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