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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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とりあえず自己紹介をする

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「今から簡単に自己紹介と、砦を取り返す作戦の説明をしようと思う」


 一歩、前に出て、立ち並ぶ駐留部隊の兵士たちを見渡す。


 表情だけでは分かるのは、あからさまに睨んでいる者くらいだが、そうでない者の中にも、俺に対して懐疑的な思いを抱いている者はいるだろう。


 だが、それで構わない。


 法王の命令だから、あるいは勇者だからと、俺のことを無条件で信じるような連中は、逆に信用できない。


 それは、公式見解だからと、それだけの理由で獣人を敵視する行為と同じだからだ。


 俺はちゃんと考えた上で、獣人にも信用できる者がいると判断してほしかった。


「俺の名前は、覇王丸だ。俺と、そこにいるゲンジロウ爺さんと、お前らが聖女と呼んでいるヒナは、魔王を倒すためにこの世界に召喚された勇者だ」


『覇王丸さんは召喚されていませんけどね』


(お前が言うな)


 なぜ、思い出したくもない黒歴史を、赤裸々に打ち明ける必要があるのか。端折れる部分は適当に誤魔化してしまえばよいのだ。


「俺が召喚されたのは、アルバレンティア王国の西にある大森林だった。右も左も分からない状態だったけど、幸運にも森の中で暮らしている獣人に助けてもらって、それからしばらくは獣人の集落に滞在していた。だから、俺は獣人に対して殆ど悪い感情を持っていない」


 俺の言葉に、露骨に顔をしかめる者が現れた。


「だけど、勘違いをするなよ? 俺は無条件に獣人の味方をしているわけじゃない。獣人だろうと、人間だろうと、善い奴は善いし、悪い奴は悪いというのが俺の考えだ。その証拠に、俺は魔王軍に占領された港湾都市に潜入して、獣人の指揮官を倒している。それが嘘じゃないことは、その時に助けた貴族が証言してくれるし、王様も認めてくれた。だから、今の俺は王国が公認する勇者で、神聖教会の来賓で、お前らにとっては臨時の上官なわけだ」


『結構な圧力をかけますね』


(念のためだ)


 ライカの身の安全を考えれば、これでもやり過ぎではない。


 俺たちに手を出せば家族全員の首が飛ぶくらいの圧力をかけた方がいい。


「大森林の獣人は、魔王軍にしつこく勧誘されていたけど、それを拒んでいた。恐らく、魔王軍は戦略として、この大陸にいる獣人を仲間に引き入れるつもりなんだと思う。そうする方が、大軍を船で運んで来るより効率が良いからな」


 そして、獣人には、魔王軍の誘いに乗り、人類と敵対しても不思議ではないだけの歴史的な背景がある。


「すべての獣人が、魔王軍の誘いに乗るとは思えない。でも、一部の獣人が魔王軍に付くだけでも、戦局は大きく動くはずだ。実際に獣人と戦ったお前らなら、分かるだろう?」


「砦の獣人が魔王軍に与したと言うのですか?」


「いや、そうじゃなくて。本気になった獣人とは、戦いたくないだろって話だよ」


 驚いたような顔で口を挟んできたリッタに、俺は首を振って答えた。


 もっとも、未確認ながら魔人の目撃情報もあるので、絶対に違うとは言い切れない。


 ただ、神聖教会に所属する兵士を殺さなかったり、武装解除して解放したりしている点を考えても、砦の獣人が魔王軍に与したとは考えにくいし、交渉の余地は残されているはずだ。


「俺は、この大陸にいる獣人が追い詰められて、魔王軍の口車に乗ってしまうのを防ぎたい。そのためには、神聖協会に公式見解を撤回してもらう必要があるんだ」


 最終的な目的は、この大陸における獣人の名誉の回復と、市民権の獲得だ。


 市民権については大森林を独立した領地にして、そこの領民になることで目途がついたが、名誉の回復については神聖教会との折衝が必須であり、最初、それは無理筋な要求だと思われたが、神聖教会側の虎の子であるヒナがこちら側に付いたことで、風向きが変わった。


「そのことで、昨日、教会の偉い人たちと協議をした。その結果、この砦の問題を解決することと引き換えに、公式見解を一部修正してくれるという約束を取り付けた」


 数名の兵士(多分、強硬派)の表情が、また一段と険しくなった。


「お前ら、神聖教会の信徒なんだろ? 今、俺を睨みつけている奴らは、特に気を付けろよ。公式見解が変わった後は、認識を改める必要があるからな」


『煽る必要あります?』


(睨まれるの、ムカつくんだよ)


 今、俺を睨んでいるのは、神聖教会の公式見解を盾にしている連中だ。


 その程度の取るに足らない小物に楯突かれるのが、俺は我慢ならない。

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