いろいろと詳しい話を聞く
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まず、気になったのは、砦を奪われた時の状況についてだ。
これは、オターネストが魔王軍に制圧された時と同様、夜間に奇襲を受けて、一気に砦の内部に攻め込まれたらしい。
迎撃に当たった兵士の証言をまとめると、
「暗闇からいきなり矢が飛んできた」
「物音はしなかったのに、気が付いたら至近距離まで接近されていた」
「乗り越えられない高さの柵を、難なく乗り越えられてしまった」
という具合に、戦果は散々だったようだ。
獣人は、普通の人間には何も見えない暗闇でも、見通すことができる。
普通の人間には聞き取れないような音で、走ることができる。
駐留部隊が砦を奪われた一番の原因は、獣人の身体能力や感覚器官を自分たちと同程度であると想定していたことかもしれない。
不幸中の幸いは、獣人が砦の占拠を優先したため、いたずらに駐留部隊の命を奪うような凶行に走らなかったことだろう。
駐留部隊の多くは、負傷しながらも逃げ延びることに成功し、安否不明となっていた残りの兵士も、砦の内部で人質にされているらしい。
襲撃の翌日、武装解除された状態で解放された一人の兵士の証言から、その事実が判明したようだ。
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次に、山岳地帯で生活する獣人との関係が悪化するに至ったきっかけについて尋ねたところ、やはり神聖教会の公式見解が発端になっているようだ。
トレンタ大陸に渡った顧問団が魔王軍の襲撃を受けて壊滅したという凶報は、生存者であるブレーグの帰還と同時に自治領内でもあっという間に広まり、その怒りの矛先は当然のように自治領内の獣人に向けられた。
麓の村では、公式見解の公布後、獣人との間で細々と行なわれていた物々交換などの取引を一方的に打ち切ったため、それが原因で軍が出動するほどの諍いに発展したらしい。
その後は、麓に降りる唯一の道に砦を作った神聖教会と、そこを通ろうとする獣人との間で小競り合いが続き、先日、とうとう砦を奪われる非常事態に陥ってしまったというわけだ。
この場所が大聖堂からそう遠くない距離にあることも、神聖教会側が過剰に警戒した要因の一つなのかもしれない。
*
最後に、竜と魔人の目撃情報についてだが、これはどちらも未確認情報だった。
竜については、砦を奪われる数日前に、獣人から「竜が出たので対処してほしい」という要請があっただけで、駐留部隊の兵士や麓の村の住人の中には目撃者がおらず、信憑性がかなり低い。
魔人については、獣人の中に仮面を付けて顔を隠している者がいたと、砦の奪還作戦に加わった兵士の一人が証言しているだけで、仮面を付けていた人物が魔人だという確証も、絶対に見間違えではないという保証も無いらしい。
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