表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
176/1634

砦に出発

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 翌日、いつもより早い朝食を食べた後、大聖堂の敷地の外、外堀に架かる唯一の橋の前に、砦攻めに参加するメンバーが集合した。


 アルバレンティア王国からは、俺、ゲンジロウ爺さん、ライカの三人。


 神聖教会からは、ヒナと、その親衛隊と化している衛兵が三十人ほど。


 獣人に占拠された砦から最も近い村には、更に五十人ほどの正規兵が駐留しているらしい。


 ちなみに、アルバレンティア王国の兵士は、ロザリアの警護が最優先であることと、ここが他国の領地であることを鑑みて、今回の作戦には不参加となっている。ゲンジロウ爺さんだけが例外だ。


「麓の村は、ここからそう遠くありません。馬車での移動なら昼前には着くでしょう。昨日のうちに使者を送っているので、到着次第、現地の部隊も覇王丸さんの指揮下に入ります」


 そう言うと、法王は至近距離でなければ分からないくらい僅かに頭を下げた。


 立場上、他人に対して頭を下げられないというのも難儀なことだ。


 続いて、隣に立つロザリアがにこやかに微笑みながら、見送りの言葉を口にする。


「覇王丸様、ゲンジロウ様、いってらっしゃい。皆さんのご武運をお祈りしていますね」


「おう」


「恐悦至極にございます」


 俺は適当に相づちを打ち、ゲンジロウ爺さんは格式張って一礼した。


 最後に、法王とロザリアの後方に控えていたブレーグが前に進み出て、俺に回復薬の入った箱を渡してきた。


「陣中見舞いか?」


「そうですね。まあ、そのようなところです」


 ブレーグは曖昧に頷くと、俺に向かって頭を下げた。


「昨日は大それたことを申してしまいました。深く謝罪いたします」


「そんなことは言っていないだろ。こんなの交換条件としては普通の要求だ」


「そう言っていただけると、ありがたい限りです。……砦とは言っておりますが、実際には櫓と柵を並べただけの野営地に近いものです。ただ、地形的に高所を取られますので、弓矢による攻撃にはお気を付けください」


「分かった」


 俺が頷くと、ブレーグは早くも親衛隊に囲まれているヒナをちらりと一瞥した。


「聖女様は勇者殿を随分と慕っているご様子。彼女も同じ勇者ではありますが、ご覧のとおりまだ幼い少女です。どうか、聖女様をお守りください」


「分かってるよ。仲間に危害を加えようとする奴は、誰であろうと容赦しない」


「……よろしくお願いいたします。勇者殿に御加護があらんことを」


 ブレーグは両手を組み、目を閉じて祈りを捧げた。


 獣人に襲われたショックで治癒魔法が使えなくなり、毎日、縋るような思いでこんなふうに祈りを捧げているのかと思うと、たしかに同情すべき点はあると思う。


 しかも、本人が獣人に対して「良くない感情」を抱いていると、きちんと自覚しているのが何とも悲しい話だ。


『まあ、根っこは善い人に見えますよね。ヒナちゃんのことも心配しているみたいだし』


(そうだな)


 逆にこれがすべて演技ならば、誰にも本性を見抜くことはできないだろう。


 そういう意味では、昨日、風呂でヒナが言っていたことの真偽が気になるところではあるが。


(こいつが嘘をついているかどうか、奇跡の力で調べられないのか?)


『無理ですよ。奇跡の力は覇王丸さんを対象にしたものしか使えないって、以前も同じことを言ったじゃないですか。そもそも、第三者を対象にできるのなら、覇王丸さんが魔法を覚えるまでもなく、僕が電撃で無双していますよ』


(それもそうか)


 山田がたまに使う電撃は、本来、守護対象を戒めるためのものらしく、殺傷能力はないが、しばらく身動きができなくなるという、非常に使い勝手の良いものだ。


 俺は今までに三回ほど、この電撃攻撃を食らっている。


(あれ? 電撃攻撃の仕返しって、したっけ?)


『したわ! かなり前にビンタを食らったわ!』


(そうか)


 殴った方は忘れても、殴られた方は覚えているものらしい。


 獣人に襲われて死にかけたブレーグが、その恐怖と恨みを清算できる日はくるのだろうか。


 そんなことを考えて、俺は少しだけ憂鬱な気持ちになった。

評価、ブックマーク、感想などをもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ