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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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反省会

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 迎賓館に戻った後、俺は応接室に関係者を集めて結果報告をした。


 関係者といっても、迎賓館で寝起きしているいつものメンバーにアホ兄弟を加えただけだが。


「――――というわけで、明日にでも砦を占拠した獣人を追い払いに行くことになった」


「さっすが兄貴だ!」


「ああ! 獣人を守るために獣人を追い払うとか、訳が分かんねぇ!」 


 アホのアホ兄弟が、話を半分も理解していない様子で、とにかく俺を褒めちぎった。


 一方、ライカは困惑した表情を浮かべている。


「なんだか、かなり危ない綱渡りをしたように感じるんですけど……」


「まったくだの」


「本当に」


 ライカの感想に、ゲンジロウ爺さんとロザリアが即座に同意した。


「いきなり台本に無いことを言い出すから、肝を冷やしました」


「一歩間違えれば、怒って席を立つ者がいてもおかしくなかったぞ」


「すべて計算ずくだ。神聖教会の連中は、俺の掌の上で転がされていたに過ぎない」


「……まあ、舌先では転がされていたようだが」


 ゲンジロウ爺さんは、殆ど何も発言しなかったくせに心底疲れたという素振りで、ソファにどっかり腰かけた。


「そういえば、陛下に拝謁した時もそうだったの。なんというか、おぬしは勝負どころの駆け引きが巧い。ヒナ嬢ちゃんのことで、まさかこっちが有利になるとは思わんかった」


「それは私も思いました」


「昨日、法王様に言っておいたんだ。ヒナのことは俺から切り出すって」


 ヒナはトランプで言うところのジョーカーなので、神聖教会側の手札にするのはあまりにもリスクが高かった。最強のカードは、同時にババ抜きのババでもあるのだ。


 相手からババを渡されるのと、相手に最強のカードを突き付けるのでは、後者の方が良いに決まっている。


「話を切り出す順番とタイミングで、ある程度は話の流れを誘導できるってことだ」


「ふむ。ワシは弁が立たぬから、正直、羨ましくもあるの」


「貴族向きの才能ですよ、それ」


 思わぬところで、ゲンジロウ爺さんとロザリアから褒められてしまった。


「それで、公式見解を訂正してもらう代わりに、獣人に占拠された砦を奪い返しに行くことになったと……そういうことですか?」


「まあ、そういうことだ。ロザリアは留守番だけど、ヒナは一緒に来ることになった」


「ヒナちゃんも?」


 ライカは意外そうに聞き返した。自分よりも年下の女の子が同行を許されるとは思っていなかったのだろう。


「一応、ヒナも勇者だからな。危ないことをさせるつもりはないけど、だからといって、毎回留守番をさせるわけにもいかないし。まあ、後ろで見ている分には平気だろ」


 それに、神聖教会の兵士も親衛隊よろしく帯同することになったので、ヒナの警護に関しては万全すぎるほどの態勢が整っていると言える。


「あの……私は?」


「ライカは、悪いけど一緒に来てもらおうと思ってる」


「え? あ、はい! 分かりました!」


 留守番を言い渡されると思っていたのか、ライカは一瞬だけ驚いた後、すぐにやる気に満ちた表情で頷いた。


「今回は相手が獣人だからさ。オターネストに潜入した時もそうだったけど、獣人って同族がいると警戒度が下がるんだよ。もし、話が通じそうな相手だった場合、ライカがいた方が有利になるかもしれない」


「しかし、それではライカ嬢ちゃんの正体を神聖教会側に知られることにならんか?」


 ゲンジロウ爺さんが横から口を挟んできた。


「その時はその時だろ。もし、神聖教会側が何か言ってきたとしても、ライカには指一本触れさせない。俺が守ってやるから、ライカは安心していいぞ」


「は、はい。分かりました」


 ライカは若干赤面しながら、コクコクと何度も頷いた。


 それを見て、ロザリアが羨ましそうにため息をつく。


「はあ。ライカちゃんはいいですねぇ。私も男の人に「俺が守る」とか言われてみたいです」


「貴族の男どもから、その手のセリフは散々言われているだろ」


「残念ながら、腕一本で守ると言われたことはないですね」


 ロザリアが苦笑いを浮かべながらそんなことを口にすると、アホ兄弟がロザリアの前に跪いた。


「王女殿下、護衛ならば俺たちにお任せください!」


「俺たちか腕一本……いや、四倍の腕四本でお守りいたします!」


「何だよ。お前ら、明日は一緒に来ないのか?」


 俺が尋ねると、


「採用面接があるので遠慮します!」


「命あっての物種ですから!」


 と、清々しいまでの恩知らずぶりを発揮して、アホ兄弟は同行を固辞した。


(そういえば、昨日の食事会の時、就職の口利きをお願いしたんだったな……)


 しかも、今回はロザリアだけではなく、同席していた法王まで口を利いてくれている。


 これはもはや履歴書に採用の判子が押された状態で面接に臨むようなものだ。


「仕方ない。お前ら、口利きの恩返しだと思って、ロザリアの警護はちゃんとやれよ」


「勿論です!」


「もう、頻繁に休みたいなんて言いません!」


「よし。じゃあ、さっさと迎賓館の警備に戻れ」


 同行しないのであれば、アホ兄弟がこの場にいる必要はない。


 文句を言うアホ兄弟を無慈悲に追い払うと、それと入れ替わるようなタイミングで、ヒナが大荷物を抱えて迎賓館にやってきた。

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