真犯人
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明後日です。
人類軍の活動拠点に戻った俺は、獣人国への援軍の派兵など、諸々の伝達事項を告げた後、マルマルとコンタクトを取った。
深夜に話し掛けてくるようにと、それとなく伝えるつもりだったのだが――――
「……!」(懸命に手を伸ばす)
ファシルに抱っこされたマルマルが、しきりに何かを訴えてきたので、俺は子守りを買って出るふりをして、ひと気の無い場所にマルマルを連れていった。
「ふぃー……。助かったぜ」
二人きりになった途端、マルマルは俺の腕に肩肘をついて、チッと舌打ちをする。
(相変わらず、違和感が凄いな)
ニコニコしていれば、俺でさえ可愛いと思ってしまうような外見の赤ちゃんが、ヤサグレたおっさんのように振る舞っている姿を見ると、脳が混乱してしまう。
「あの野郎……。四六時中、俺に付きまといやがって……。ストーカーかよ」
「父親だぞ」
相変わらず、母親のことが好きすぎて、父親のファシルのことを嫌っているようだ。
「あいつさえいなくなれば、ユミルさんは俺のものなのに……」
「たしかに、お前が独占できるけどさ。……お前、息子だからな?」
いい加減、赤ちゃんが父親から母親を寝取るという、人間の業をあれもこれもと詰め込んだ欲張りセットのような性癖は、どうにかならないのだろうか?
「それよりも、お前、今、俺と喋っても平気なのか?」
「何か内緒の話があるんだろ? 今、ちょうど担当がいないから大丈夫だ。なんか、世界管理機構の取り調べを受けている」
「は?」
マルマルの発言に、思わず目を丸くしてしまう。
「お前のところも?」
「ってことは、お前のところも呼び出されたのか?」
「俺のところは、逮捕された」
「はぁ?」
今度は、マルマルが俺の言葉に目を丸くする。
このままでは話が先に進まないので、俺はリリエルから聞いた話を、包み隠さずマルマルに教えることにした。
「え……マジで? その程度のことで反逆罪になるのか?」
「俺も大げさだとは思うけど、犯罪かどうかで考えれば、間違いなく犯罪だからなあ。余程、外部に流出したらマズい機密文書だったんじゃないか?」
「えぇ……? だからって、反逆罪……? 極端すぎるだろ」
マルマルは困惑した様子で考え込むと、神妙な顔をして俺を見た。どうでもいいが、外見が赤ちゃんというだけで、何をしても可愛いのは、マジでズルいと思う。
「これって、もしかして……責任の一端は俺にもあるのでは?」
「責任の一端があるのは、むしろ俺だな。お前は責任の大元で、しかも、真犯人だぞ」
「やめてくれよ……。俺、嫌だぞ。反逆罪なんて」
急にそわそわしはじめたマルマルの肩を、俺は諭すようにぽんぽんと叩いた。
「とにかく、死刑になりたくなかったら、対策を考えてくれよ。俺も担当がいないままだと、不便なことが多いんだ」
「いや……。もう、お前の担当が真犯人ってことにしないか? お前、担当のこと、嫌ってただろ?」
「無能は無能なりに、存在意義があるんだよ。……それに、担当の妹と約束したからさ。見捨てるわけにはいかないんだ」
「妹? 担当の家族とも交流があるのか?」
深く関わり過ぎなんじゃないか? と。
マルマルは怪訝そうな顔をしつつ、山田の妹のリリエルについての情報を聞き出そうとする。
「金髪で? 碧眼で? 年齢は、お前の嫁の聖女様くらい……?」
「そうだな」
「幼女じゃねーか!」
間髪入れずに、罵倒された。
「お前、巨乳好きなふりをして、実はロリコンだろ!? 許さねーぞ! 異端者め!」
「お前にだけは言われたくねーよ」
唯一無二の特殊性癖を持つ変態(赤ちゃん)が、何をブチ切れているのだろうか?
「いいから、協力しろよ。さもなくば、最終手段を使うぞ」
「最終手段……?」
何だよそれは、と。
ヒートアップしていたマルマルは、警戒感を露にして、急にトーンダウンする。
「簡単な話だよ。お前の担当の仕事部屋にある自作のPCを調べろと、タレコミをする」
「やめろぉぉぉ!」
マルマルは顔面蒼白になって、絶叫した。
「お前、それ、本当に最終手段じゃねーか! 血も涙も無いのか!?」
「そんなことを言われても……。お前、ガチの真犯人だし」
誰か一人が責任を取るのであれば、冤罪の山田ではなく、マルマルだろう。
「分かった! お前の担当の件も含めて、俺が全力で調べるから! 早まった行動だけは止めてくれ!」
「自分のことになると必死だな」
「当たり前やろがい!」
マルマルは苛立たしそうに顔をしかめて、舌打ちをした。相変わらず、言動はクズなのに、見た目だけは可愛い。
「仕方ない。これも、虎穴に入らずんば虎児を得ず……ってやつだな」
「そうだな」
どちらかと言えば、毒を食らわば皿までだと思うが、俺はあえて黙っておいた。
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