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わりと衝撃の事実

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 サルーキの説明によると、獣人国では、百獣は単なる悪の化身――――魔王のような存在ではなく、自分たちのルーツとして、建国神話の中に組み込まれているらしい。


「俺たちの国では、百獣は悪なる神として伝わっている。百の獣の親――――その名の通り、あらゆる動物の始祖となった存在であり、百獣はすべての動物との間に、子を儲けることができたようだ。その百の獣の中には、当然、人類も含まれている」


「……ん? それって」


「そうだ。真偽は定かではないが、俺たちの国では、百獣と人間の間に生まれた子が、獣人の始祖であり、初代獣王であったと考えられている」


 サルーキはしれっと衝撃の事実をカミングアウトした。


「百獣は、初代獣王を使役して人類を滅亡させるつもりだったが、初代獣王は人類に与して、百獣と戦う道を選んだ。その過程で獣王の子――――つまり、俺たちのような獣人が増えていき、百獣がいなくなった後、初代獣王はこの地にベスティアを建国したのだ」


 それが、獣人国に伝わる建国神話らしい。


「お前らって、百獣の末裔でもあったのか」


「真偽は分からんがな。だが、化け物の血を引いていると、他の人間から不気味がられたことも、初代獣王がベスティアを建国した理由の一つになったようだ」


「ふーん」


 どうやら、初代獣王が獣人国を興した理由の中には、同胞たちを保護する目的もあったようだ。オット大陸に竜や獣人の数が少ないのは、竜の巣や獣人国というそれぞれの受け皿となるコミュニティが、トレンタ大陸に存在していたからなのだろう。


 そして、オット大陸で獣人が「魔獣と同じ」だと差別されていたことも、まったく根拠の無い話ではなくなってしまった。獣人国では百獣が「悪なる神」とされているのも、自分たちは化け物の血ではなく、神の血を引いているということにしたかったからではないだろうか?


 そのように考えると、獣人が「自分が獣人であること」に誇りを持っているのもよく分かる気がする。


(いずれにしても、ライカやハウンドに聞かせてよい話なのか、ちょっと迷うな)


 迷ったところで、いずれは知ってしまうだろうけれど。


 どうしたものか――――


 そんなことを考えていると、だんだん意識が遠くなってきた。


「まあ、俺が知っている百獣の話は、これですべてだ。もっと詳しく知りたければ、王城の書庫に古い文献が……って。――――眠っているのか?」


 人に質問をしておきながら、と。


 サルーキの呆れたような声が聞こえてくる。


 どうやら、フィオレに肩を貸してもらって、楽な体勢になったことで、うっかり覚醒状態を解除してしまったらしい。


「少しだけ、話が難しすぎたようね」


 俺が半目になってうとうとしているのを確認したフィオレが、あまりにも人のことを馬鹿にした言い訳を口にする。


(難しい話を聞くと寝るって……俺は子供かよ)


 むにゃむにゃと口を動かすが、上手く言葉にならない。


「言うほど、難しい話ではなかったと思うのだが……」


 サルーキは釈然としない様子で首を傾げていたが、最終的に「存外、馬鹿なのだな」という結論に達して、納得したようだ。


(お前ら、覚えてろよ……)


 後でセクハラや腹パンを実行し、きっちり報復することを心に決めて、俺の意識はまどろみの中に溶けていった。

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