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前哨戦 禁じ手

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「正面突破で俺を倒せる可能性があるのは、今のところ魔王だけだぞ。お前じゃ無理だ」


「うるさいっ!」


「話を聞けよ……」


 そもそも、俺の足下にはバンクが倒れているのに、何の躊躇もなく攻撃しすぎなのだ。


 俺はタイミングを見計らって、飛んでくる火の玉が消える寸前に、無属性の魔力を引っ込めて横に飛び退いた。


 標的を見失った火の玉は、倒れているバンクのすぐ近くに着弾する。


「――――っ!」


 ようやく、自分の攻撃がバンクに当たるかもしれないと気付いたフエーゴは、我に返って攻撃の手を止めた。


「そういうところだぞ。今のお前に足りていないのは」


「黙れっ!」


 横っ飛びから態勢を整えて、俺がフエーゴに突進すると、今度はよく狙いを定めた一撃が、一直線に飛んできた。


 俺はそれを――――無属性の魔力を使わずに、手で叩き消した。


 驚くようなことではない。魔力で魔法を無効化できることに気づくまでは、俺はこんなゴリ押しのパワープレイで、魔王軍の魔法に対処してきたのだ。


 高熱に焼かれて、掌がジクジクと痛みはじめる。これも懐かしい感覚だ。


「な!?」


「そんなに驚くことじゃない。俺は怪我の治りが早いから、こういう戦い方もできるんだ」


 そう言って、フエーゴに掌を開いて見せる。


 火傷を負ったはずの掌は――――ほんの数秒で完治していた。


「ほら。もう治った」


「……!」


「そして、今の俺はこんなこともできるぞ」


 言いながら、土の魔法を発動する。あまり戦闘で使う機会は無いが、覚醒した状態の俺は、土の魔法もある程度は使いこなせるのだ。ちなみに通常時でも、ライカが一撃で叩き潰せない程度には、泥団子を固くすることができるようになっている。


 見る見るうちに、フエーゴの背後と左右で、地面がせり上がって防壁を形成する。


 ただし、これはフエーゴを守るためのものではない。


「――――しまった!」


 逃げ道を塞がれたことにフエーゴが気づいた時には、もう手遅れだった。


 俺は再び無属性の魔力を展開してフエーゴの魔法を封じると、バンクにしたのと同じように顔面を鷲掴みにして――――後ろの土の防壁にぶち当てた。


 フエーゴの体は防壁を突き破って、後方の地面に転がる。


 見た目こそ派手だが、そこまでのダメージは無いだろう。俺の作り出した防壁は、バンクの作り出したものよりも強度で劣るし、何より地面ほど分厚くない。


 だが、このまま戦っても勝てないと思い知らせるには、十分だったはずだ。


 俺としては、これで終わりにするつもりだった。


 だが――――


「くそ! なぜだ! なぜ、勝てない!」


 フエーゴは現実を受け入れず、這いつくばったまま、悔しそうに地面を何度も殴り付けた。


「もう、退けよ。いったん仕切り直しでいいだろ」


「見逃すつもりか!? どこまで侮辱すれば気が済む!」


「悔しいと思うなら、もっと強くなって、また挑戦してこい」


「黙れ! ――――まだ、俺は負けていない!」


 そう言って、立ち上がったフエーゴの全身を、魔力が包み込んだ。


 また、何らかの魔法を使うつもりだろうか?


(正攻法じゃ無理だって……)


 覚醒した状態の俺は、四聖竜であるモースの全力の火の魔法さえ耐え凌いだのだ。実力的に何枚も落ちるフエーゴの魔法が、通用するとはとても思えない。


「……いかん」


「ん?」


 不意に足下から声が聞こえたので、目をやれば、意識を取り戻したらしいバンクが、顔面蒼白になってフエーゴを見ていた。


「やめろ……! その魔法を使っては駄目だ……!」


 掠れる声でバンクが叫んだ時、俺の目の前で、フエーゴの両腕が燃え上がった。

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