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前哨戦 逆上

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「もう一つ行くぞ!」


 俺は短く助走して勢いを付けると、今度は再びバンクに狙いを定めて「手に握り締めた物」を渾身の力で投げ付けた。


 息をつく間も与えない、連続攻撃。


 だが、集中力を研ぎ澄ませていたバンクは即座に対応して、目の前にある穴のあいた防壁を瞬時に修復した――――のだが。


「ぐぅっ!?」


 次の瞬間、俺の渾身の投石を完璧に防ぎ切るはずの防壁には、あっけなく風穴が開き、貫通したメイスが、バンクの腹に深々とめり込んでいた。刃物ではないので刺さってはいないが、鈍器が高速で腹にめり込む衝撃は筆舌に尽くしがたいものだろう。


 二度あることは三度ある……の諺ではないが、先の二回の投石は、バンクに「次も石を投げてくる」と思わせるための布石であり、罠だったのだ。当たり前だが、石を防げる程度の防壁では、それよりも遥かに重いメイスを防ぐことはできない。


「さすがに、自分の武器を投げてくるとは思わなかったか?」


 てっきり、この情報も魔王軍には漏洩していると思っていたのだが――――万策尽きた際の奥の手だと思われていたのだろうか?


 戦闘において、自分の武器を手放すという行為は、致命的な攻撃力の低下につながるので、普通、自発的にそんなことはしない。戦闘が始まったばかりの序盤なら、尚更だ。


「でも、俺は投げるから気を付けろよ」


 バンクが腹を押さえて蹲っている間に、至近距離まで接近した俺は、土の魔法を使って目の前の防壁を破壊した。


 どさどさと崩落する防壁の向こう側に、呆然とするバンクの姿が現れる。


「そんなに意外そうな顔をするなよ。別にいいだろ。俺が土の魔法を使っても」


 心外だぞ、と。


 不平を口にしながら、俺は更に接近して――――バンクの顔面を鷲掴みにした。


 無属性の魔力が、無慈悲にバンクの全身を包み込み、魔法を封じる。


「じゃあな。あんたのこと、俺はそんなに嫌いじゃないよ」


 最後にそう告げると、俺はバンクの頭を掴んだまま思い切り地面に叩き付けた。魔法を使えない状態のバンクに、衝撃を緩和する術は無かった。


     *


 俺の渾身の投石を防ぎ切った土の防壁は、アーチ状に緩やかな弧を描いており、フエーゴの身を守ると同時に、視界も遮っていたようだ。


「貴様ぁっ! よくも!」


 防壁から顔を覗かせたフエーゴは、俺の足下に倒れているバンクを見て、逆上した。


「多分、死んでないぞ。すぐに……」


「黙れぇっ!」


 撤退して治療することを勧めようとした俺の言葉を遮って、フエーゴは手当たり次第に火の魔法を連射してきた。


 数えきれないほどの火の玉がフエーゴの周囲に出現し、俺に襲い掛かってくる。


(凄い数だな……)


 思わず、感心してしまう。


 手数の多さだけなら、多分、フィオレと互角か、それ以上ではないだろうか? やはり、赤髪侯の後を継ぐだけあって、フエーゴの魔法使いとしての実力はかなりのものだ。


 だが、それだけだ。バンクのように知恵を働かせて、的確に弱点を衝くような戦いをしない限り、魔法使いの天敵である俺に勝つことはできない。


 フエーゴの放った魔法は、すべて俺の無属性の魔力に吸い込まれて消失した。

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