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前哨戦 小手調べ

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 最初に動いたのは、フエーゴだった。


 ボ、ボ、ボ、と。


 まるで人魂のように、複数の火の玉がフエーゴの周囲に出現する。


「――――私はどうするの?」


 後ろにいるフィオレから、加勢の是非を問われたので、


「付かず離れず、見守るみたいな感じでよろしく」


 基本的に手出しはせず、後方から睨みだけを利かせてほしい。でも、魔王軍の兵士が無粋な横槍を入れてきた場合には、遠慮なく介入してほしい――――という意味を込めて返答すると、


「了解」


 実にシンプルな言葉が返ってきた。


 本当に分かっているのか、正しく伝わっているのか……などという疑問は抱かない。


 フィオレとは、もう長い付き合いだ。俺の言いたいことを(多分)正確に汲み取ってくれているだろう。


 俺は、頼れる仲間がいることに安堵しながら、無属性の魔力を触手のように伸ばして、火の玉の一つを包み込み、かき消した。


 フエーゴは驚いた様子で、残りの火の玉を一斉に飛ばしてくるが、すべてが無属性の魔力の壁に触れた途端、水面に吸い込まれる石のように消失した。


 やはり、火の魔法は、俺の防御方法と相性が良さそうだ。何も無いところに炎だけを出現させているため、魔法を無効化した途端に、炎は消滅してしまう。


「ぐっ!」


 かと思いきや、ほぼ同じタイミングでバンクが飛ばしてきた土の砲弾が、それなりの速度を維持して、俺の体に命中した。火や風の魔法とは異なり、土や水の魔法は、魔法を無効化した後も油断はできない。このように推進力を失った水や土の塊が、物理法則に従って、惰性で飛んでくるからだ。


「おのれっ!」


 次にフエーゴは、火炎放射器のように帯状の炎を飛ばしてきたが、これも無属性の魔力に阻まれて、俺を燃やすことはできなかった。


 だが、再び弾丸と化した土の塊が、立て続けに飛んできた。一つ一つの威力は大したことはないが、ちょうど、フエーゴの出す炎が煙幕の役割を果たしているため、どのタイミングで土の塊が飛んでくるのか、まったく分からない。


「くそっ、鬱陶しいなっ」


 俺は、連続で小さなダメージを与えてくる攻撃に辟易して、無属性の魔力を身に纏ったまま強引に前進した。


 すると、ある時を境に、視界を遮っていた炎の煙幕が消滅した。フエーゴが攻撃を優先して後退しなかったため、無属性の魔力の内側に入ってしまい、魔法を使えなくなったようだ。


「な!? どういうことだ!?」


「距離を取れ! 並の魔法使いでは、その魔力の中で魔法は使えん!」


 いち早く後方に飛び退いたバンクが、実戦経験が浅いと思われるフエーゴに、的確な助言を飛ばす。


 フエーゴは素直にアドバイスを受け入れて、俺との間合いを広げようとしたが、


「遅いぞ」


 俺はそのまま突進して、フエーゴの腕を掴んだ――――と思いきや、


「!?」


 不意に、踏み込んだ足が地面に深く潜り込み、俺はバランスを崩してしまった。


 見れば、バンクが両手を地面に付いて、遠隔で土の魔法を使用している。俺の魔力は地面を通り抜けることができないため、地中からの攻撃は無効化できないのだ。


 その隙に、フエーゴは安全圏まで逃れてしまった。

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