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前哨戦 敵からのご指名

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「そもそも、オット大陸をもぬけの殻にはできないから、人類国家がトレンタ大陸に派兵する軍隊の規模は、全軍じゃないんだ。ほんの一部……ってことはないだろうけど、せいぜい半分くらいだと思う」


 一方、敗北すれば国を滅ぼされるかもしれない魔王軍は、当然、総動員で立ち向かってくるだろう。


 要するに、戦場に投入される兵士の数でも、人類軍は絶対に勝てないのである。


「しかも、征龍候を騙すために、トレンタ大陸への派兵をつい先日まで止めていたからな。多分、こっちの戦力が揃っていないことも、見透かされていると思う」


「魔臣宰相にか」


 たしかに、ありそうな話だ、と。


 サルーキは納得した様子で頷いた。


「ちっ……。それならそれで、真っ先にこの国に攻めてこなくてもよいものを……」


「仕方ないだろ。陸路で魔王領からオース海峡に攻め込むには、獣人国の北側から攻めるのが一番近いんだから」


 それは、裏を返せば、人類軍が陸路で魔王領に攻め込む場合も、獣人国を経由して北上するのが最短ルートということになる。


 要するに、獣人国の北側の国境付近は、両軍にとって、攻撃と防御の要となる場所なのだ。そこを押さえた方が、今後の戦闘の主導権を握ることになる。


「もしかしたら、人類軍がモタついているうちに、一足先に獣人国を弱らせるつもりなのかもしれないぞ」


「だとしたら、舐められたものだ。我々に駐屯部隊を蹴散らされ、オース海峡の沿岸部の支配権を失ったことを、忘れてしまったらしい」


 サルーキは口元に獰猛な笑みを浮かべて笑った後、


「――――それはそれとして。先日、陛下が直々に足を運び、国交を結んできた幾つかの人類国家は、ベスティアに援軍を寄こしてくれるのだろうな?」


 恐ろしいほどの切り替えの早さで、人類国家に援軍の要請をしてきた。


「何だよ。てっきり、自分たちだけで返り討ちにしてやる……とか、言いそうな口ぶりだったのに」


「昔の俺ならともかく、今はそんな血気盛んなことを言う年齢でも、立場でもない」


 それでどうなのだ? と。


 サルーキが改めて尋ねてきたので、俺は素直に頷いた。


「その予定だよ。まだ、戦力が揃っていないから大軍は無理だけど。できる範囲で人類軍として援軍を送ることになる。今頃、こっちの責任者が大慌てで部隊の編成をしているはずだ」


「時間は掛かりそうなのか?」


「それなりに掛かると思うけど、まあ、心配すんなよ。それまでの穴埋めとして、俺がやって来たんだからさ」


 そう言って、俺は隣に立つフィオレを一瞥した。


 前線の野営地に移動するのに、ワタシとオレサマでは悪目立ちしてしまうため、フィオレに頼んで、飛翔魔法でこっそり移動してきたのだ。


「それに、なんだか面倒なことになっているみたいだったからな。――――俺、魔王軍から名指しで指名されているんだろ?」


「そうだ」


 現在、国境を挟んで獣人国の部隊と対峙している魔王軍は、どういうわけか、人間の勇者である俺を出せと、何度も要求しているらしい。


 我々は連絡係ではない、迷惑な話だ、と。


 サルーキは腕組みをして、不服そうに答えた。

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