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魔王軍の砦跡地 気晴らし

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「娯楽ってわけじゃねーけど。楽しいことが無いから、皆、暗い雰囲気になっちゃうと思うんだよな。これで、少しは気分が上向きになってくれるといいけど」


「何でもいいけど、あまり大勢を集めるなよ? 治癒魔法を使いすぎれば、ライカだって疲れるんだからな」


「百も承知だよ。……というか、魔人にそれを言うか?」


 どうやら、ジェニオは「釈迦に説法」と言いたいようだ。


「そんなことより、結果的に人払いができたから、もし、親父に知られたくないことがあったら、今なら聞いてやれるぞ」


「別に無いけど」


「何かあるだろ」


 遠慮するなよ、と。


 ジェニオは、機密情報を聞き出そうとしてくるが、あいにくと本当に秘密の作戦は無い。


 魔臣宰相に、奇襲は通用しないと思っているからだ。それくらい、俺は魔臣宰相の洞察力や統率力を高く評価している。


「こっちが秘密にするようなことは、全部、お見通しだと思うんだよな。だから、魔王軍との最終決戦は、正攻法というか、最善手の打ち合いになると思う」


「……へー。お前、そこまで親父のことを評価してるのか」


「お前の親父のことはな」


 唯一、魔臣宰相に弱点があるとすれば、それは魔王の命令に逆らえないことだ。


 魔臣宰相が、魔王に対しても我を通すことのできる性格だったら、魔王軍と人類軍の戦争はもっと長丁場になっていただろう。具体的に言えば、魔王軍は竜の巣への無理な侵攻を思い止まり、その結果、竜の巣が窮地に陥ることも、竜の巣と俺たちが良好な関係を築くこともなく、獣人国でさえ、いまだに魔王軍との同盟関係を維持していたかもしれない。


 もし、そうなっていたら、仮に俺がいずれかのタイミングで覚醒の扉を開くことに成功していたとしても、ここまで形勢を引っ繰り返すことはできなかったはずだ。


「だから、こっちの作戦は、全部、筒抜けでもいいんだよ。筒抜けだという前提で、こっちも動くだけだから」


「言ってくれるじゃん。それで、勝てるのか?」


「勝ち筋はある」


 すべての作戦が筒抜けで、悉く対策を打たれたとしても、暗闇の中、魔王の喉元まで届く、一筋の光を作り出すことは可能だ。


「……それは?」


「それはだな――――」


 俺は勿体つけて言葉を溜めると、固唾を飲んでこちらを見つめているライカとジェニオに、正解を告げた。


「ずばり奇襲だ」


「だーかーら! それが通用しないって話を! 今、お前がしたんだろ!」


 ふざけるな、いい加減にしろ、と。


 ジェニオの絶叫が木霊して、周囲の注目を集めてしまったが、魔臣宰相の子飼いの兵士たちは、俺たちが秘密の作戦会議ではなく、いつものようにくだらない理由で喧嘩をしているだけだと判断したらしく、特に怪しまれることはなかった。日頃の不真面目な言動が功を奏した、レアなパターンだと言える。


 その後は、ライカに無償で治癒魔法を掛けてもらえる臨時の診察会が開催されて、大盛況のうちに幕を閉じた。ジェニオが良くないと言っていた重苦しい雰囲気が、これをきっかけに、ほんの少しでも改善されてくれればよいのだが……まあ、これについては、じっくりと時間を掛けて取り組んでいくしかないだろう。


 翌日、ジェニオに後のことを任せて、活動拠点の港町に帰還した俺たちは、


「覇王丸、帰ったか。――――早速で悪いが、動きがあったようだぞ」


 ゲンジロウ爺さんから、無慈悲な報告を受け取ることになった。


 どうやら、魔臣宰相が最終決戦の前哨戦として、早くも「最善手」を打ってきたようだ。

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