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休暇の終わり イケメンのヤバい奴

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

 第一軍港から船に乗り、再びトレンタ大陸に渡った俺たちは、活動拠点にしている港町で、ファシルたちとも合流した。これで、勇者ご一行が再集結したことになる。


 最終決戦前に休暇を挟んだことで、皆、リフレッシュできたようだ。故郷に帰って、大切な人たちと会うことで、戦う意義のようなものを再確認したのだろうか。観光旅行をしただけのマキちゃんとベルレノも、平和の大切さを実感して、やる気を出しているように見える。


「皆、有意義な時間を過ごせたみたいだな」


 合流後に改めて開いたミーティングで、俺が仲間に向かって声を掛けると、


「はい! 鉱人の里に帰り、皆にマルマルの成長を報告して参りました!」


 ファシルが息子のマルマルを両手で掲げながら、大声を張り上げた。当のマルマルは死んだ魚のような目をしながら、ファシルの腕の中で憮然としている。相変わらず、父親のことが大嫌いなようだ。


「じゃあ、息子のためにも、魔王を倒して、戦争を終わらせないとな」


「はい! 必ずやこの手で、魔人どもを皆殺しにしてみせます!」


「言い方」


 少しは自重しろ、と。


 俺が注意する前に、ファシルは妻のユミルさんに腕を掴まれて、後ろに引っ張られた。


「ユミルさん、大変だとは思うけど、旦那の手綱はしっかり握っていてもらわないと」


「はい。申し訳ありません」


「そうしないと、こいつ、戦争が終わった後で裁判に掛けられて、処刑される可能性があるからな」


「はは! ご冗談を!」


 ファシルは笑い飛ばしたが、俺とユミルさんを含めて、仲間は誰も笑っていなかった。少し前までは「残念なイケ面」だった仲間のファシルに対する認識が、最近では「イケ面のヤバい奴」に変わっているような気がする。


「一人、勘違いしている奴がいるから断っておくけど、別に魔人を皆殺しにしなくても戦争は終わるから、その認識だけは間違えるなよ」


「分かっておるわ」


 こいつと一緒にするなと言わんばかりに、ゲンジロウ爺さんが返答した。


 戦争反対を大義名分に掲げる独立派の反乱が、大きな混乱を引き起こしたことからも分かるように、魔王軍の内部でも厭戦的な雰囲気というか空気感のようなものは、もう隠しきれなくなっているはずだ。勝っているならともかく、劣勢に立たされてまで、戦争を続けたい者などいるはずがない。


 だから、魔王との決着さえ付ければ、魔臣宰相が終戦に向けて動き出すはずだ。それまで、魔王軍は徹底抗戦の構えを見せるだろうが、自分たちの生存圏を守るための戦いなのだから、むしろ当然だろう。


 この百年で人類軍が奪われたものはあまりにも大きいが、だからといって、敵からすべてを奪い返すようなことをしてはならない。火種が燻ぶることになろうと、程々の条件で折り合いを付ける必要があるのだ。

(まあ、そのへんのことは、政治家のお偉いさんたちがすればいいとして)


 俺たちがすべきことは、燻ぶる火種が完全に鎮火するまで、注意しながら見守ることだ。


 争いを起こすのは簡単だが、終わらせるのは難しい。


 そして、平和を維持することは、その何倍も難しいのだ。


「他に、報告がある奴はいるか? 休暇中に何か問題が起きたとか……起こしたとか」


「なんで、私を見ながら言うの?」


 居並ぶ仲間を見渡すことなく、マキちゃんをじっと見つめながら問い掛けた俺に、本人から抗議の声が上がった。


「ベルちゃんや、ヒナちゃんだって、一緒に行動していたんだよ?」


「ベルレノが問題を起こすわけないじゃん」


 それに、滞在場所が大聖堂なら、聖女であるヒナは何をしても問題にならない。神聖教会の重鎮である爺さんたちが、ヒナがどんな暴挙に及ぼうと、揉み消してしまうからだ。


「だから、消去法で問題を起こすのは一人しかいないんだ」


「私だって起こさないよ! そうだよね!?」


 そう言って、マキちゃんはヒナに同意を求めたが……。


「……」


 ヒナは無言で俺の近くに歩み寄ると、推理を披露する名探偵のようにマキちゃんを指さし、告発した。

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