気分転換に散歩に出る
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
隔日で更新できるように頑張ります。
夕方、日が暮れる頃、俺とライカは迎賓館を出て、庭園に向かうことにした。
その目的は、今日も今日とて泥だんごに怨念を込める作業――――魔法の訓練をするためだ。
本来なら、ライカが外出する場合は神聖教会側の衛兵が監視役として同行することになるのだが、今回は俺のお供ということで特別に免除してもらった。意外に融通はきくようだ。
ライカの場合は室内でも魔法の訓練をできるし、先程、大きな失態をやらかしているので、反省の意味も込めて留守番をさせてもよかったのだが……。
(気分転換は必要だからな)
『この人、女児には甘いんだよなあ』
(誤解を招く言い方はやめろ)
ライカは未成年だが女児と呼ぶほど小さくないし、そもそも、俺はリリエルにも年齢に合わせた懲罰を与えている。
俺は女児に甘いのではなく、山田にだけ厳しいのだ。
「兄貴!」
「お話があります!」
外に出ると、神妙な顔をしたアホ兄弟が近づいてきた。
「お前らか。どうした?」
「お暇をいただこうかと」
「俺たち……神聖教会で働こうと思うんです」
何か思うところがあったのだろうか。
こんなにも就職への意欲に燃えているアホ兄弟を見るのは初めてのことだ。
「そうか。達者でな」
「待って! そんなあっさり!」
「形だけでも遺留してください!」
俺がさっさと話を終わらせて立ち去ろうとすると、アホ兄弟は二人がかりで足に縋りついてきた。
「何だよ……。面倒くさいな」
「そこをなんとか!」
「お願いしまっす!」
「……お前らがいなくなると困るなー。考え直してくれないかなー」
俺が尻を掻きながら棒読みで慰留すると、アホ兄弟は悔しそうな表情を浮かべて、首を横に振った。
「すみません。もう決めたことなんです!」
「俺たちの決意は……変わりませんっ!」
「そうか。じゃあな」
「待って!」
「先方に口添えをしてください!」
俺が今度こそ会話を終わらせて立ち去ろうとすると、アホ兄弟はまたもや二人がかりで腰にしがみ付いてきた。
「口添えって何だよ! 自分の力で就職しろよ!」
「俺たちが自力で就職できるはずないでしょうが!」
「俺たち、学歴も職歴も無いんですよ!」
「お前ら……!」
出会った当初、剣聖の部隊に入ると息巻いていた時の自信はどこに消えてしまったのだろうか。
というか、そこまで自分を客観視できているなら、なぜ、今まで就職しなかったのか。
結局、アホ兄弟は地面を引きずられても放れなかったため、俺は面倒臭くなってロザリアに口利きしてもらうことを約束した。
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